52-全力疾走の力を見せてやる-
扉の置くには当然の如く、階段があった。
階段を上がる。
階段は先ほどとは違って急ではなかった。少しずつ眼前に光が見えてくる。
「ラスボスに関してだが・・・・・・」
東先輩が言う。
「相手はわかっています」
隼人は端的に答える。
「そうか。奴の能力に関しても粗方予想がついているのだろう?」
「・・・・・・東先輩は戦えるんですか?」
「舐めんな。俺の拳でぶっ潰す」
「そうか。まあ、東先輩なら何とかできるだろうね」
「おい・・・・・・。敬語使うか使わないかドッチかにしろ」
「東先輩、頼りにしてるよ」
「使わねーのかよ!使え、こら!!」
ふざけながらも階段を昇っていく。
平和だ。続くはずの無い平和だ。
階段を昇りきる。
そこは広いホールになっていた。
「・・・・・・また形状変えたのか」
外から見たら、こんなに大きくなかったから。
「・・・・・・外にも野次馬が沢山現れ始めた。久留巳が居なくなったのは痛い結果を生んだな」
ホールの中心で、場にそぐわないビーチベッドに横になったまま、アイツが言った。
「ココにお前らがいるということは更級が負けたという事か。あいつの力は不定だから利用は出来なかったが、奴の知識には舌を巻くこともあったのだが・・・・・・まあ、これも天命だということにしておこうか」
男はそう言ってビーチベッドから降りて立ち上がった。同時にビーチベッドは存在を消す。
あれもアイツが作った物体か・・・・・・。
「お前ら全員で戦うんだな?」
「一対一の方がいいってのか?」
東先輩はそう言って相手を見る。
「いやいや、何人で掛かって来ようと俺には勝てないけど。ま、改めて確認さ。それにしても」
と、アイツは外を見る。
「メディアも居るね。丁度いい、ここで君達を倒して宣言しよう。今日元 始の世界征服を」
「世界征服・・・・・・それが、アンタの望みかよ」
「そりゃあ、俺は姉のようにはならないからな。誰かのために頑張るんじゃない。自分のために尽力する。『我田引水でも勝ちは勝ち』。これが今日元の基本思想だ。そして、俺は創るのさ。自分の思った世界を」
今日元はそう言って銃を出した。
「最低だな」
俺は言って拳を構える。
「・・・・・・じゃあ、一気に攻めるぜ」
隼人が言った。
「開始だ。俺が負けたらお前らは世界を救えるぜ」
今日元は笑った。
「キングダム」
拳を突き出す隼人。
キングダムの力が発動して、世界が一瞬で暗転する。
「もう面倒な事は避けるよ。一気に決めよう」
隼人はそう言って、走りこんだ。
「・・・・・・能力の干渉を拒絶する・・・・・・そんな力が俺に聞くと思ってんのか?」
今日元は銃を見せる。
「この世界では武器の類にほとんど意味は無い。意味はダメージの蓄積のみだ」
「他にもあるぜ?大いにある」
そう言って今日元は引き金を引いた。
銃声が響いた。
・・・・・・響いた?
そして銃弾は、隼人の肩を貫いた。
「な・・・・・・!?」
隼人は小さく声を漏らし、驚く。
すると、黒い世界はいつものように瞬間的に戻らず、少しずつ崩れ、元の世界を見せ始める。
「な・・・・・・何なんだ!?」
「簡単さ。この銃だ」
今日元は笑う。
「俺が考えたのさ。『キングダムの世界に干渉できる銃』というのをな」
「・・・・・・くっそ!」
俺は床に左手を当てて、武器を作ろうとする。
・・・・・・!?
武器が作れない。床が変化しない。
「ああ。これは『リメンバー・リメインの行動を無視する床』だ」
そう言った今日元はいつの間にか俺の前に立っていた。
「あ・・・・・・」
「残念だったな。お前らに打つ手は無いぜ?少なくとも手からタイヤを出す程度の力じゃ俺には勝てない――」
そう言って東先輩を余裕の表情で見る今日元。
「右翼」
そう言ったのは東先輩だった。
気付くと、東先輩の右腕から飛行機の羽が生えていた。
「・・・・・・は?」
「食らえ」
東先輩はその腕で、今日元の頭部を殴った。
今日元は吹き飛び、壁にぶつかる。
「・・・・・・なんだよ・・・・・・その力」
「姉のように真面目に勉強しておくべきだったな・・・・・・。代わりにお前に教えてやるよ。俺の力・・・・・・」
そう言って東先輩が左手から出したのは。
「・・・・・・は・・・・・・?」
「全力疾走の力を見せてやる」
東先輩は2階においてきたはずのバイクを手から出していた。