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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第零章 紡がれゆくあの過去
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50-つまるところ-

「隼人!!」

 俺は隼人を呼ぶ。

「どうかしたのか、ソウメイく――」

「更級はこの部屋に居る!消えてるんだ!」

「消えてる!?何言って――」

 隼人の動きが止まる。

「お前・・・・・・何時からそこに居た!」

「隼人・・・・・・?」

 まさか――。

「おお。良かったな。2人とも俺の存在が見えるぞ」

 更級が現れた。

「どうなってるんだ、ソウメイ君!」

「コイツの力だ!アンノウン・スポットだって言ってた!」

 その瞬間、また更級が消えた。

「・・・・・・そういうことかよ!僕の一番苦手な相手だ!」

 そう言って隼人は身構える。

 そうか。

 隼人は基本的に不思議がらない。この能力だって知っているから。

「くッ・・・・・・見えなくなった!」

 隼人はそう言って、周りを見渡す。


「心配するな」

 更級はまた現れる。

「お前らが俺達の姿を知りたいと思えば俺は現れ、見た瞬間に消える」

 そう言って更級はさらに消える。

「どうする、隼人」

 俺は隼人と背中合わせになる。

「相手が1人だけど、まるで囲まれたかのスタイルだね」

 隼人が言うと、更級が現れた。

「おいおい、しっかりしてくれよ、会話だってしにくいじゃな――」

 更級は会話の途中で消える。

「マジでどうすんだ!これ!」

「どうにもならない。だから」

 更級が現れた。

 同時に隼人はそっちに飛んだ。

「一気に勝負を決める!」

 言ったが早いか、拳を固めて、更級に向かって振るった。

「残念」

 更級は言って、隼人の拳を受け止める。

「運動神経だってバカにはならないぜ?」

 言った瞬間消えた。

「うぉっと・・・・・・」

 隼人はバランスを崩す。

 言っていた。

 触れられない。しかし


 衝撃は受ける。


「がッ・・・・・・!」

 隼人が何らかの攻撃を受けて、こちらに吹っ飛ぶ。

「おい、これって・・・・・・」

「攻撃を避ける事は出来ない。しかも相手と触れると触れた感覚はないのにダメージだけ食らう」

 隼人はそう言って、苦笑した。

「どうすればいいんだ・・・・・・」

「諦めろ」

 更級は言った。

「俺達に協力しろ。今ならいつでも迎え入れてやる」

 現れては消える。

「・・・・・・そんなことするぐらいなら死んだほうがマシだ・・・・・・!!」

「じゃあ死ね」

 更級は俺達の後ろに現れた。

 目の前には拳。


 間に合わない。


「!?」

 が、更級の体は吹っ飛んだ。

「おいおい・・・・・・俺を放って何してんだ?」

 そこには男が1人居た。


 リーゼントで、白い長ランの後ろには『暮射』と二文字。

 そして男はバイクにまたがって部屋の中にいた。

 もう心当たりは1人しかいない。


「・・・・・・東先輩・・・・・・!」

「ピンチっぽいな・・・・・・けど」

 東先輩は笑った。

 そしてバイクから降りて、俺たちと更級の間に立った。

「後は任せろ」

 そう言って両手を広げた。


 その背中はとても大きかった。

「東先輩!ソイツは――」

「言うな!ソウメイ君!」

 隼人はそう言って邪魔をする。

「知らないほうが今は勝てる!」

「・・・・・・そうか」

「はぁ?お前ら何言ってんだ?」

 東先輩はそう言って、首だけこちらに向けて怪訝そうな顔をする。

「気にすんな、東先輩は自分でやってくれ」

「お前タメか。殺すぞ、後で」

 東先輩は言いつつ正面を向いた。

「お前、俺の後輩達に何やってんだ」

「・・・・・・お前は東諒だな・・・・・・。ブラックリストが・・・・・・」

「ぶっ潰すぞ」

 東先輩は一歩ずつ歩いていく。俺達から見れば更級は現れたり消えたり忙しい。


「俺の能力を教えてやる」

 更級は咄嗟に言った。

「え、マジで?教えてくれるのか?」

「ダメだ!」

 隼人が言う。

「何だよ、どういうことだ?」

「いいから、気にしないでくれ!」

 隼人がそう言って焦りを見せる。



 その様子を見て、東先輩は言った。

「・・・・・・分かった」



 ・・・・・・あれ。

 待てよ。これ・・・・・・。





「分かっちゃったのか?」


 更級は笑った。


「何だ!?」

 東先輩が言った。


 やっぱりだ・・・・・・!

 『分かった』・・・・・・『知った』から、消えた!

 恐らく東先輩にはもうすでに更級の姿が見えてない!!

 

 東先輩の体がこちらに吹っ飛ぶ。

「が・・・・・・!?」

 宙を舞う。

「くっそ!」

 東先輩は空中で身を翻し、着地する。

「どうなってる!?どこ行きやがった!?」

 東先輩はそう言って周りを見渡す。


「教えてやろうか?」

 目の前に更級が現れた。

「俺の能力を・・・・・・」

「え、マジで!?教えてくれるのか!?」

 まずい。

 知ってしまえば、東先輩も俺達と同じになる。

 ――が。

 今ここで止めてそれを『分かって』しまえば、東先輩は更級の姿を見失う。

 それにもしも、止めたとしても更級が一方的に説明してしまえば、東先輩は聞いてしまう。

 結果、俺達は固まる。

 

「俺の能力は、自分が知らないことと出会ったときに俺と出会うことが出来る」

「・・・・・・」

「そして、何かを『知った』という感覚を得たら、俺の姿を見えなくなる。以上だ」

 そして俺の視線から更級は消えた。


「東先輩。何とかできるのか!」

「・・・・・・分からん」

「そんな・・・・・・」

 その瞬間、更級が現れて拳を固めていて、拳は既に東先輩の前に有った。


「東先輩!!」


 拳は。

 拳は空を切った。

「・・・・・・分からん」

 東先輩はもう一度そう言って顔面を掴んだ。


「え・・・・・・」

「何だ!?」

 俺と隼人は焦る――いや、1番焦っているのは更級だが。


「反応できた・・・・・・のか?」

「分からんな」

 東先輩は何度も言う。

「・・・・・・だが、俺は消える!」

 言った瞬間に俺と隼人の視界から更級は消えた。

 が。


 確かに東先輩は何も無い空間を掴んでいた。


「一発でいくぞ」

 東先輩は言って、拳を固めた。

「何故だ!」

 更級は姿を現す。

 恐らくもう消えない。



 俺達にも何がおきているのか分からないから。



「何故お前には俺が見えている!?」

「さっきから言ってるだろ?」

 そう言って東先輩は顔をしかめた。



「お前が何を言っているのか、お前らが何を理解しているのか・・・・・・俺には分からないんだ」

 つまるところ。


 バカだから。


 東先輩の拳はしっかりと更級の顔面を思い切り潰した。




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