38-そこまでだ-
200話到達。
ああ。何て長き小説。
次の日。
昨日の内にほとんど殺人現場を全て回り終えたので、今回の事件の犯人が捕まったらしい場所に行った。
路地裏のようで、3階建てくらいの建物が数多く立ち並んでいる。
「ここで最後の死体が見つかったらしい」
「つまり、最後の人間を殺した直後に警察に捕まったわけだ」
「正確には『そう思われてしまった』んだけど」
そう言って隼人は、現場へと少しずつ歩を進ませる。
「そこまでだ」
後ろから、何者かがそう言って俺達2人の頭部に『何か』を突きつけた。
「まだ関わろうとするのか」
声は言うほど渋くない。恐らくまだ高校生程度の年齢だろう。
つまり、あの謎の少年の関係者という事になる・・・・・・。
「貴様らが関わるのは自由だ・・・・・・と、言いたいところだが、そうもいかない」
「・・・・・・」
「俺達の計画は、犯罪者を根絶やしにすることだ。その邪魔をする輩は、何者であれ容赦はしない・・・・・・が」
男はそう言って言葉を止める。
「その齢なら恐らく、中学3年生といったところだろう。卒業に意味がある年齢だ」
どういう意味だ・・・・・・?
「命は助けてやる。事情を話せ。今、この状態で」
「貴方が何者か分からない以上、話すわけにはいきません」
「話さなければ、答えは一緒だ」
「なら話しても一緒ですよね?」
「余計な事で俺の気を紛らわせ、隙を狙おうという手段なら防いでいる。今、この路地裏を挟んでいる建物の上には、世にも珍しい忍者とその『眼』が居る」
忍者・・・・・・そして、眼・・・・・・?
アクターなのか・・・・・・?いや、そんなことを考えている場合ではない。
どうするんだ・・・・・・隼人・・・・・・。
「・・・・・・僕と同じくらいの頭脳の持ち主のようで」
「貴様の頭がどの程度か分からんが、こういう修羅場は卒業式で経験しているのでな」
男はそう言って笑った。
「僕らは、あなた方が庇おうとしている人間の所為で代わりに捕まってしまった人を助けるために調査しています。ですから、あなた方が庇おうとしている人が、さっさと自首していただければ、とても助かるんですよ」
「なるほど。事情は理解した。ならば、事件が終わっていないことをしっかりと伝え、その濡れ衣を着せせられた奴にある程度の自由をやろう。俺は警察関係者にも顔が利くのでな」
そう言って、男は
「しかし、解放はしない」
と続けた。
「俺達も、相手が解放されないほうが行動しやすいのは当然だ。社会は犯人が捕まったと油断して、無秩序に戻るはずだからな」
「・・・・・・じゃあ、あなた方を全員捕まえるしかないですね」
「それは一生無理だ。諦めろ」
そう言って、男は銃で俺達の後頭部を殴り、倒れた体を更に腕で押さえつけた。
意識は朦朧としている。隼人にいたっては気絶しているようだ。
「俺達は、絶対に捕まらない」
それだけ言って、男は身を翻して去っていった。
それから俺の意識もフェードアウトした。
「どうなってるんだ・・・・・・?」
「コレは、やはり1度あの人のところへ行ってみるしかないね」
「あの人?」
俺は聞き返した。
「決まってるだろ?龍兵衛さんだよ」
「ああ・・・・・・。なるほどね」
「行こう。この事件・・・・・・何かおかしい」
そう言って隼人は立ち上がり路地裏から出て行く。俺もその背中を追って、路地裏から出た。
「・・・・・・」
警察署に入った瞬間、少し空気がおかしいのが分かった。俺にしか感じられない感覚だろう。
「何かあったのか?」
俺は軽く隼人に聞いてみる。隼人も直感的に異常を感じたようだ。
「・・・・・・まさか、本当に警察に手を回したのか・・・・・・?」
隼人は独り言のようにそう言って、ロビーの方に駆け出した。俺もその隼人を追っていく。
「すみません、各務原龍兵衛さんをお呼びいただけないでしょうか?」
「龍兵衛さんは、今、ちょっと立て込んでおりまして・・・・・・」
「何とかなりませんか?」
「申し訳ございません、今は――」
「探偵!」
ロビーの女性の声を遮った主は、話の中心である龍兵衛さんだった。
「丁度良かった。こっちに来い」
龍兵衛さんはそう言って、俺と隼人を手招きした。
俺達は龍兵衛さんの元へと向かう。
「何かあったんですか?ロビーの人でさえ、貴方が立て込んでいるのを知っていたようですが・・・・・・」
「お前ら、あの殺人鬼の事件かぎまわってるんだろ?」
突然龍兵衛さんはそう言って、こちらを見る。
「ええ、まぁ・・・・・・」
「突然、今捕まっている奴が犯人じゃないと、警視総監が言ってきやがった」
「警視総監・・・・・・!?」
それって・・・・・・!
じゃあ、あの男は・・・・・・!?
「そして、その証明として新たにもう1つ事件が起きた」
「新たな事件というのは・・・・・・?」
「人が1人殺されたよ。例によって例の如く、犯罪者だ」
お前らもそのくらいは調べてんだろ?
と、龍兵衛さんはこちらを見下ろす。
「・・・・・・」
「でだ。お前らが居るって事は、よ」
龍権兵衛さんは少し身をかがめた。
「そういうことなのか?」
「・・・・・・少なくとも、多少以上の関わりはあるでしょう」
「・・・・・・そうかよ」
はぁ・・・・・・。と、龍兵衛さんは溜め息をついた。
「まぁいい。それより、お前ら俺に用があるんだろ?」
「ええ、今、大体済みましたけど、1つお願いがあるんです」
「何だ?」
「その容疑者さんに会わせてください」
「・・・・・・いいだろう。面会ってことだな?」
ついて来い。と龍兵衛さんは言って、廊下を進む。
隼人は少し神妙な顔をして歩き始める。僕もそれを追いかけた。