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密かに見ていたら溺愛されてました  作者: 漆原 凜


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見守り

「あ、急がないと。遅れちゃう。皆様お先失礼します。」

「ミシェルもう帰るの?」

「はい!お疲れ様です!」


お疲れ様ーと声をかけられながら職場である事務室から小走りで玄関へと向かう。間に合うかな?あ、居たと思いながらそっと柱の陰に隠れる。


「本当素敵…今日はまっすぐお家に帰るのかな?」


塔の玄関に立ち団員達と談笑しているのを見つめる。細身ながら程良く鍛えた身体にサラッとした銀髪に整ったお顔が格好良すぎる。彼はセドリック·アルシェ様で伯爵家の嫡男ながら、この魔術師団の第1師団長をしている社交界でも人気の高い方だ。紫色の瞳を微笑ませながら周りに挨拶をし歩き出した彼のあとをついて私も歩き出す。


私は日々セドリック様の帰宅を見守っている。2ヶ月前に帰るとき廊下でしゃがみ込む人を見つけ医務室へと運んだ。過労だったらしく助かったありがとうって弱々しく疲れ困った様な笑顔に心を射抜かれてしまった。それから毎日倒れていないか?疲れてないか?と日々確認作業を密かにしている。彼は第1師団長だから忙しく居ない日もあって、毎日は見守れないのが悔しいくらい。


「あ、明日は出張だ。帰るのは明後日かー。」


ふいに聞こえるセドリック様の声に、明日出張なんだなって思う。じゃ明日は帰り居ないのか…寂しいな。


「よし!帰ろう!」


お家まで無事見届けた私は我が家に向かって歩き出す。今日も無事帰宅を見届ける事が出来て大満足である。


「ミシェル様今日もストーカーをしてきたのですか?」

「ストーカーって!違うわよ。私はセドリック様をただ見守っているのよ。」

「はぁ…それをストーカーって言うのですよ。理解出来ません。セドリック様の婚約者に名乗り出たらいかがですか?」

「それはダメよ。私は見届けているだけで婚約者になりたい訳では無いもの。」

「全く意味が分からないです。」

「どうしてわからないのかしら?あ、明日は出張だから居ないのですって。だから早く帰ってくるわね。」

「いつも思うのですが、予定をどうやって入手しているのですか?」

「え?セドリック様がおっしゃってるから知っているのよ。お出かけの時はお家着く頃に確認してるのかしらね。」

「…ミシェル様それって尾行バレてませんか?予定を教えてくれているのでは?」

「やだー。バレてるはずないじゃない。教えてくれるメリットもセドリック様には無いわ。」

「そうですよね…バレてるなら通報されてもおかしく無いですからね。」


失礼しちゃう。私は純粋に彼を遠くから見守っているだけなのに。


「話かけたりしないのですか?」

「そんな事をしたら彼の邪魔になるじゃない。それにあの綺麗な顔を間近で見たら鼻血が出てしまうわ。」

「婚約者にもなりたくない、話かけるのもしない。何したいのですか?」

「見守りたいだけよ。お疲れだった顔も素敵だったけど、明るく微笑む姿も素敵なの。遠くから見れるだけで幸せだわ。」


呆れた目で見られるが全く気にしない。セドリック様の幸せを見届けるのが私の幸せだもの。


「ミシェル今いいか?」


お父様が部屋の扉をノックし入ってくる。招き入れソファーに座り話を聞く事にする。わざわざ部屋に来るなど珍しい。


「どうされました?」

「お見合いを…」

「嫌です。私はまだ結婚しません。」

「たがミシェルももう22才だよ?婚約者をそろそろ見つけないと。」

「私はまだ彼を見守りたいのです。」

「はぁ…誰を見守っているのか知らないが、見合いだけでもして欲しい。今回断れないのだよ。」

「…」

「頼むから。今回が終わればしばらくは言わないよ。」

「…わかりました。今回だけですよ。」


返事して来る!とお父様が大喜びで部屋を出て行った。そんな断れない相手なのだろうか?誰かくらい聞けば良かった…どうせ断るのに相手の方に悪いな。


「お見合い3日後の朝になったから!用意しておくように。わざわざ来てくれるそうで忙しい方なのに申し訳無いな。」


お父様に朝会った時に嬉しそうに言われる。わかりましたと了承し仕事に向かうが、今日セドリック様居ないんだった。気分が上がらない。3日後か…お見合い嫌だな。


「ミシェル今日帰りご飯行かない?」

「いいよ。久しぶりだね。」

「え?いいの?今日も断られるかと思ってた。」

「今日予定ないし、気分最悪だから行く。」

「了解!じゃまた帰りにね。」


同期のレイチェルと約束をして職場へと向かうと、皆がざわついている。


「どうしたのですか?」

「セドリック様がついに結婚するらしいの。アルシェ伯爵様がご機嫌でパーティの時に話をしていたらしくて話が一気に広まったみたいよ。」

「…え?」

「ミシェルも狙ってた?令嬢達が皆落ち込んでいるみたいよ。セドリック様凄く人気あるからねー。」

「あぁそうなんですか…私は狙ってないです。あんな高嶺の花狙った所で無理ですよ。相手はどなたなのですか?」

「それはまだわからないみたい。皆探してるみたいよ。」


そうなんだ…狙っていたわけでは無いけどショックだな。もう見守りは辞めないとダメか。


「ミシェル落ち込んでるね。朝そこまでじゃなかったよね?」

「まぁ色々あって…疲れたな。癒しが欲しい。」


レイチェルとご飯を食べに来て心配される。1日嫌な気分だったな。セドリック様が幸せならいいと思っていたのに。


「何か最近毎日楽しそうだったのにどうしたのよ?癒やされるーって言ってたじゃない。」

「…もう無くなる予定。お見合いにもしないとダメだし最悪過ぎる。あ、もういいのか。結婚しようかな…。」

「どうしたのよー?ミシェルも結婚しちゃうの?あ、そういえばセドリック様結婚するみたいね。最近毎日楽しそうだと思ってたら相手が居たなんてねー。結婚とか興味無さそうだったのに意外だわ。」

「そうなんだ。癒してくれる人が居たのかな。レイチェルは結婚しないの?」

「私はまだいいかなー。我が家は放任主義だしね。」


羨ましいな。私もまだ結婚する気なんて無かったのに。最近健康そうだったのはそんな相手が居たからなのか。いつも見てたけど気づかなかった…帰ってから会っていたのかな。


「どんな人と結婚するんだろうな。」

「ミシェル様どうしました?今日は早く帰ってくるって言ってたのに遅かったですね?」

「うん。レイチェルとご飯行ってた。セドリック様結婚するんだって…もう見守れない。」

「え?そうなんですか?寂しさから本気のストーカーにならないでくださいね?犯罪はダメですからね。」

「ならないから!」


本当私を何だと思っているのか。でも今後職場で見たりしたらツライかもしれない。見るだけ幸せだったはずなのに。


「ミシェル様泣かないでください…」

「え…あ、私泣いてる。セドリック様のこと好きだったのかな?」

「好きじゃないと毎日毎日見守ったりしませんよ。」

「もっと早く気付けば良かったな。気付いた時には失恋してた何て笑えない。」


温かいお茶を淹れてくれ静かに背中を撫でてくれる。失恋するまで気づかないとは自分の鈍感さにイヤになるな。


「ミシェル嬢今日はよろしくね。」

「え?何故セドリック様が我が家に?」


お見合い相手を出迎えた私は、相手を見て呆気に取られてしまう。お見合い相手として現れたのはセドリック様だった。何故?




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