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転生したら本能寺で織田信忠だった・・・・あれ、詰んでない?  作者: ハルラララ


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④織田勝長という男Ⅱ

「次は殿部隊の話でしょうが、殿ではなく籠城部隊の方がいいでしょう」


「ーーーー私を、中将様の影武者としてこの妙覚寺に置いてくださりませ」


勝長の思わぬ申し出に、周囲のざわめきが再度広がる。

それまで一切発言していなかった勝長から、思いもよらぬ発言があったからだ。


「殿と言えども、あちらは戦の準備を整えた兵、こちらは武具も十二分な用意はできませぬ」

「それならば、まだしも遮蔽物のある場所に籠って防戦した方が時間も稼げましょう」


勝長は理路整然と、状況を皆に話始める。

いや、そんな事はある意味この周囲の人間は全員わかってる。


「そなたーー死ぬ気か?」

そんな分かり切った事を、聞いてしまう。


恐らく、本能寺での戦いが終結したのち、その軍勢はそのままこちらに向かうだろう。

援軍の来る当てが皆無の籠城戦。

数時間の時間を稼ぐ代わりに、全滅するのが確実の絶望的な戦場だ。


殿は死傷率が高いが、死ぬと決まったわけではない。

この籠城戦は、死ぬと決まった戦いだ。


誰もが分かっていて、誰もが言い出せなかった事をすらすら言う勝長に、今全員が注目していた。


「生まれた時から、死んだようなものでしたから」

そう言って、簡略に自分の半生を語り始める。


思えば生まれてから最後までほぼ人質だけで暮らした人生だった。

自分が誰で、何の為に生きていたのか分からなくなった事もあるという。


「中将様、いえ兄上。貴方だけなのです。私を身内と呼んでくれたのは」


誰もが、自分を役割で見てきていた。お飾りの当主、人質、武田で育った子。

どこにいっても、自分には役割が与えられていた。人を顧みられた事などない。


ーーーだから、あの思い出は特別だった。


『おお、そなたが御坊丸か!よお帰ってきた!よお帰ってきたな!弟よ!!』

そう言って、笑いながら肩を叩いてくれた事を忘れない。

あの、苦労をかけた弟をいたわる優しい笑顔を忘れない。


ーー初めて、自分の事を役割ではなく、人(弟)として扱ってくれた。

あの時から、初めて自分は人だと思えた。


「この命、使いどころがあるとすれば、今貴方の為に使いたい」


「兄上ーーー私に、弟として。兄の為に、役目を与えてくださりませ」


シン、とした空気が週に巡る。

もう、自分に選べる選択肢なんてない。


「織田源三郎勝長!そなたに、京防衛の大将を任じる!…その将器、存分に魅せるがよい」

そう言って、手元にあった自分の軍配を渡す。


勝長はその軍配をうやうやしく受け取ると、


「ご下命、確かに。十全に勤めを果たしまする」


そう言って、にっこりとこちらに笑いかける。


「「「御供仕る!」」」「「「それがしも!!」」」「「「御供!!!」」


感動に包まれる周囲、籠城戦に参加希望の人で溢れかえる。

皆の見る目が変わっていた。涙を流している人さえいた。

この時代の人間の特徴なのだろう。情に燃えて、情に散る。

今、この周囲は勝長の元に一丸となっていた。



ーーーごめん、ごめん、ごめん。

なんでここに信忠がいないんだ。なんで中身が自分なんだ。

正しいかどうかは分からない。

けれど史実の信忠は最期まで皆と闘い、そして散った。

その忠義を向けられるのは、俺じゃない。


ーーー俺は純粋に、戦うのが、死ぬのが怖い。

こんな俺で、ゴメンなさい……


その後、二条城に移り籠城の準備を果たした勝長軍は10倍以上の明智軍を相手に

8時間粘った後、玉砕した。

享年、17歳。

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