⑨織田信孝、織田政権当主に当確でございます!!!
ーーー織田信孝、織田政権の当主及び美濃の国拝領。
ーーー織田信忠、織田家当主のまま尾張領主に国替え。
この会議の結果はすぐさま織田領内に広がり、当然の事として大きな波紋を生むことになる。
「ーーーいったいこれはどういう事じゃ!」
そう言って、会議の結果の書状を畳に投げ捨てたのは織田三介信雄。
信忠のすぐ下の弟であり、信孝の兄に当たる人物である。
現在は北伊勢の国主として、居城にて会議の結果を待っていたのだが、
「三七めが父上の後を継ぎ、兄上が尾張に転封じゃと……一体、なにが起こっているのじゃ!!」
予想もしなかった結果に、怒り心頭であった。
ちなみにこの信雄と信孝、非常に仲が悪い事で有名である。
「修理や筑前、五郎左がおりながらこの顛末……あやつらは一体、なにをしておったのじゃ!」
「……恐れながら、彼ら重臣の協議の結果、この仕置きとなったと思われますが」
「だとしたら、あ奴ら全員気でも狂っていたとしか思えぬ!!」
なぜなら、と
「兄上がもし再起が難しかったとしよう、ならばその際、織田家を率いるのはわしである!!」
(((いや、それはないでしょう)))
家臣一同、皆同じ内心を持つも、言えばどうなるか分かったものではないので
皆神妙に押し黙っている。
やる気のある無能こそが最も害悪である。
その言葉をもしこの場にいるものが知っていたのなら、恐らくすぐさま思い浮かんだであろう。
「兄者、思わぬ結果になりましたな」
会議の帰り道、秀長と秀吉は馬上で話合いを行っていた。
「領土の事は考えておったがのー、流石にあの方向は考慮の外じゃった」
「兄者の中では、中将様がそのまま引き継ぎするお考えでありましたからな」
その中での後見人争いはあるかもといった考慮はあったものの、
信忠を政権から除外する考えは秀吉の考慮の外であった。
彼の中で織田信長が決めた事は絶対であり、そこから外れる考えは、今までなかったのである。
(なんでもありでええんじゃったら、それはそれでやりようがあるんじゃがな)
どちらかと言えば、むしろ
……ああ、それやっていいんじゃなと、
秀吉の中で一つ枷が外れた感覚であった。
「兄者、今後我らはどうするので」
「……帰りに、中将様に拝謁する。それをもって、考える」
秀吉の内心は、さらさらあの会議に従う気はなかった。
(信長様……貴方様はとても恐ろしゅう殿様でございましたが、
とてもお仕えしがいのある殿様でございましたなぁ)
今秀吉にとって、織田家への印象は敬うべき存在であっても仕えるべき存在ではなかった。
あの信孝に従って進むよりも、自分が舵をとった方が、信長の意思を引き継げる、
自分にはその確信があった。
(そろそろ……わしの人生を考える時期なのかのぉ…)
信忠に会った上で、織田家に仕えるべき価値がないと判断した時、自分はどうするのだろう。
自分でも、自分の考えが分からない羽柴秀吉であった。




