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転生したら本能寺で織田信忠だった・・・・あれ、詰んでない?  作者: ハルラララ


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②逃げるんだよぉぉぉお!………これ、どう言えば許されますか?

気がつけばいつのまにか、寺の周囲にはずらっと信忠の家臣団が並んでいた。

皆、血走った目で、今か今かと俺の指示を待っている。


……え、どーすんのこれ。

ちなみに目の前では複数の

「お前たち、少しは落ち着かんかっ!!」

と皆を収めようとどなっているのは村井貞勝。さっき俺を蹴っ飛ばしたおっさんだ。

信長の最初期からの古参であり、今は信忠の内政の筆頭家老的な位置にいる。

「はよう、はようっ!御屋形様を、なんとかお救いにっ!」

と言っているのは福富秀勝。赤母衣に選ばれた、信長最古参の家臣の一人。

「我々の手勢ではただの犬死です。そんな時間があれば、籠城の準備を行うべき」

冷静に次の行動を考えているのは斎藤利治。

あの有名な斎藤道三の息子である。

「………」

織田勝長は何も言わず、黙然と周囲の意見を聞いている。

彼は信忠の弟で、名を織田勝長と言う。昨年までずっと武田家の人質となっており、

現在は信忠付で一緒の寺に泊まっていた。


他にも周囲では人を呼び寄せたり甲冑の準備をしたり喧噪としてとんでもない状況になっているが、

現状俺の周囲にいる人間はこの4人だ。

とりあえず、この4人が今ここの方針を決める重臣扱いであるらしい。


………いや、ほんと無理なんですけど。

戦国で何十年も生き延びてきた人達の顔も声も怖いのなんの。

今逃げ出さずにここで座っているだけでほめてほしい。


「御屋形を助けずして、なにが家臣かっ!」

「ですから、策なくしてあの日向殿に向かうなど愚の骨頂だと申しているのです!」

「ええいっ、わし等が言っても埒が明かぬわ!」


「「「中将様、如何に!?」」」


そこで俺にふるんですか?

なんで俺に……ああそうですね、織田家当主でしたね一番偉い人は誰ですかはい私です。


……いやまあ、最初っからすべき道なんて一つしかない事はわかってる。

そもそも決定的に俺と4人の違いが一つある。過去の知識のアドバンテージ。


『この本能寺の変で織田信忠は逃げきれる可能性がある』

後世の歴史家からは、そのように分析されている。


現状の周囲の認識としては。

「すでに京都は、明智光秀によって完全包囲されている」


いわゆるバイアスって奴だ。

『明智光秀に完全に不意を突かれた』

『明智光秀はとても慎重で細かく、準備をしっかり行う奴だ』


『だからこの謀反も、完璧に準備されたものであるに違いない』


なんの準備もない穴だらけの謀反なんですよね、これ。


逆に言えば、だからこそ成功したとも言える。

なんの準備もなく、なんの予兆もなかったからこそあの織田信長が当日まで欠片も気づかず、

あんなにあっさりと殺されてしまったと言えるであろう。

「中将が別心か? (信忠が俺を殺しにきたのか?)」

って信長が言ってたって話もあったくらいですし……なんで信忠が信長殺すねん。

まあ信長の頭にそれだけ京都にいる戦力が想像つかなかったって証拠なのだろうけど。


『『『『京都は完全に包囲されているだろう』』』』

(今の包囲は完全にスカスカなんだよね)

時間が経てばわからんけど。今ならなんとかなる可能性はある。

ただ、


「(これ、どういえばいいんだ?)」

普段の信忠がどんな人間でどんな発言をしてたかなんて全然知らん。

ただでさえ転生直後にこんなデッドエンドまっしぐらの無理ゲーに置かれて、

しかも史実にもあまり資料がない信忠だ。

……いやほんと、なんで信長の嫡男なのにこんなに資料少ないんでしょうね、彼。


まぁ、やるしかないか。

いやほんと、意味不明にここにいて直ぐに死にたくないんです(泣)


「はっきり言おう。父上は死ぬ。この前提なくば話が進まぬ」

……村井さん、福富さん、そんな鬼のような形相でこちらを睨まんといてください。

その顔でこちらも死にそうなんですが。

「……根拠は?」

村井が震える声でこちらに聞いてくる

「あの日向が攻めているのだ。事前に気づけたならまだしも、奇襲が成功した以上万が一もない。

日向の器量を疑う気はない」

その断定した言葉に周囲は押し黙る。

織田家に京都以降に家臣になってわずか10年ほどで重臣になった明智光秀の実力を

疑う人物はここにはいないだろう


「それで、次に我らはいかがします?」

次に斎藤がこちらに問いかける


…一度呼吸を整える。ここからだ。


「逃げる。とりあえず安土。最悪岐阜にだ」


周囲の喧騒が一気に広がる。

戸惑う声、動揺する声、怒りの声。

普通なら明智軍とどう戦するかを考える場であるはずだからな。そらそうよ。

しかも自分信忠に付属されているのは信長が選りすぐった家臣達=信長の目にかけた直臣である。

下手すれば忠誠度合いは信忠<信長の可能性すらある。

少なくとも、「従え」で従う人達は極小であろう。


「……わけを、お聞かせ願えるか」

福富さんが、もう破裂寸前の声でこちらに質問する。

多分織田家の御曹司でなかったらすでに殴られてるんだろうな…


「解せんのは、ここに日向の兵が来てない事だ」

「…確かに、こちらは現状放置されていますな」

軍勢の桁が文字通り違うので救援に行けていないが、恐らく万はいるであろう明智軍は、

今文字通り本能寺を囲んで信長の首を取ろうとしている。


「ここまで完璧に奇襲した軍が無駄に兵を一か所に集めておる。この寺にこれだけの家臣が集まるのを

放置しておる。道理に合わぬ。同時奇襲していれば。すでにこの首は離れているであろうよ」


この発言に周囲の動揺が変わった。

皆も思う所があったのだろう。


「儂が思うに、日向の兵も騙されてここまで来ておる。大半の兵は謀反を知らせずに動いている。

皆がここに来る際に戦が起きておらぬのは、末端の兵は仲間と思っている可能性すらある」


「だが本能寺が落とされればそれで終いだ。父上を討ったとなれば、もう日向の兵も

後戻りできなくなる。謀反が成功するか、死ぬかとなればもう今のようにはならぬ。一刻を争う」


「違っていたら?」

「中将信忠は命惜しさに親を見捨てて逃げ去り、それも果たせず死んだ臆病者の愚か者と

言われるだけよ」


「それにな、父上ならそんな事は気にすまい」

「死んだ後の事など知らぬ。死ねば消えてなくなるのみ。判断を間違えた事は口惜しいと思うだけよ」



そう、信長が情報を聞いて即逃亡を図り、結果大成功だった戦がある。

信長と戦場を馳せた武将たちなら忘れようにも忘れられないあの戦。


「これが儂の金ヶ崎だ!!!」




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