ACT.65 不利な敵地(Ⅰ)
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「あーもう、バスタブまで壊されてるとか嫌がらせ徹底してるなぁ!!」
バスルームの様子を見に行ったレオーネが半泣きになってリビングに戻ってくる。
一方、部屋をカタチになるくらいにまで片付けを進めていたライは無事な家具類を寄せ集めて取り敢えずくつろげるだけのスペースを確保していた。
「それは、確実に嫌がらせですね」
「だよね、だよね!」
怒り心頭といった感じでどかっと床に腰を下ろすレオーネ。
彼女に続いてライもすぐそばに座る。
意外と近くに座らされたレオーネは気まずそうに彼に声をかける。
「──臭くない?」
「なれました」
それはそれで複雑、といった感じの表情を作るレオーネだが口に出すとそれはそれで野暮かもしれないとムッとして績ぐ。
そんな代わりにライが溜息と共にこう話し出した。
「この嫌がらせの犯人、どっちだと思います?」
コレをやったのは、我々と現在敵対している例の転生者かそれとも──。
「もう一択しかないじゃない」
「ですよね」
具体的な名前を出すまでも無く、ふたりの意見は一致する。
部屋中に変な塗料を撒いたのは痕跡を消す為だと思われるが、それをしなきゃならないのはそれなりにバレると困る立場の人間、または組織だからだ。
絶対に事件とは関係なさそうで必要なさそうなバスルームまで壊したのは、臭いを気にしていたレオーネへの嫌がらせ以外の理由は見当たらない。
つまり、犯人は。
「憲兵団、もといジャクソン・ベイリー」
それしかなかった。
レオーネが臭いを気にしていた云々を知るのは、そもそも憲兵団側しかいなかったというのもある。
「いくら聖教会側と仲が悪くたってここまですることなくない!?」
憤慨するレオーネと対照的に、ライは口元に手を当てて以前の出来事を思い出していた。
「以前王都で任務があって、その時憲兵団と協力したんですけど」
思い返していたのは、王都で怪盗と称して連続窃盗事件を起こしていた三人の転生者の相手をした任務。
当時、彼女たちに手を焼いていた憲兵団と協力体制を敷き追い詰めたのだが──。
「その時は憲兵の方々とちゃんと連携とれました。嫌がらせなんてなかったですし」
「まぁ、その辺はお国柄というか王都の団の空気の問題というか。団長が違えば、同じ組織でも感じは違うからね」
レオーネはそう言いながら、はたと何かに気がつく。
「いや、でも流石にここまでするのは」
腕を組んで右手を顎に当てて考え込むレオーネ。
単に悪感情のみでここまでのことをするのは流石におかしいと感じた彼女に、ライは更なる彼女を指摘する。
「もしかして、転生者を庇っている?」




