ACT.64 転生者のサガ(Ⅱ)
異能。
転生者が用いる、超常的な異界の法。
使用者ごとに多種多様で強力無比なその力が転生者を転生者たらしめる。
だが、その力には──強すぎる力には幾つかの代償が存在する。
そのひとつが、禁断症状。
転生者は一度異能を使用すると、歯止めが効かなくなる。
何故なら彼らにとって、異能の行使は快楽だからだ。
更に使えば使うほど、異能を使わないことに強い息苦しさを感じる。
そしてやがて、些細な事に理由をつけて異能を行使するようになる。
──手段の為に、目的を選ばなくなるのだ。
「転生者が異能を使うのに、理由は要らないですよ」
ライは天を仰ぎて、そう呟く。
昨日スラムで人が襲われて、割と大きな規模の火災があって、今日もどこかで誰かが犠牲になる。
それなのに今日の空は清々しいほどの晴天で。
ライは何故か少しの虚しさを感じた。
「ま、それはそれとして!」
レオーネはそんなライの空気を変えようと、努めて明るい声をかける。
「取り敢えず、私が身体洗ったらまた昨日の現場行っていい?」
「良いですけど、僕は一時別行動でも大丈夫ですか?」
「何かした?」
「いえ、ちょっと調べたいことが」
転生者が再び現れるとしたら恐らくは夜。
ジャクソン・ベイリー団長について、この日中にできる範囲で調べておきたいとライは考えていた。
あくまで根拠のない直感であったが、彼には何かあるとライは感じていたからだ。
しかし、確証があるわけじゃない。
だからこそ、裏付けが取れるまでは味方であろうと無闇に話さない方が良いと考え、ライは調べる内容をはぐらかす。
根拠のないことを話して、それが却って不都合な結末を呼び込まないとは限らないのだ。
「ま、ライ君が真面目なことは知ってるし、全然いいけどさ。まずは一旦落ち着いてお話しよ」
そう話していると、今回のこの街での拠点に到着する。
そこは教会などではない、ごく普通の一軒家であった。
プロキシマには聖教会の施設があまり無い為、今回は一軒家を教会名義で借り上げて拠点に当てていた。
わざわざ一軒家を借り上げるのには幾つか理由があるのだが、そのうちのひとつが──。
「うわぁ」
──外敵に襲われた時に周囲になるべく被害を出さないように、である。
鍵を開けて家の中に入ると、家具や調度品は軒並み叩き割られ、更に何かの塗料を壁や床にぶち撒けられていた。
「──お、おのれぇ!!」
自身の拠点、安らぎの休憩所の惨々たる有様を目にしたレオーネは思わず恨み節を漏らした。




