ACT.63 転生者のサガ(Ⅰ)
「うーん! 娑婆の空気は美味いぜよー!」
ようやくの釈放後、丸一日ぶりに屯所の外へと出られたレオーネは両手を大きく上に上げ、気持ちよさそうに伸びをする。
反面、如何にもお気楽そうな彼女の様子に、ライは少しゲンナリとする。
「まったく、嫌味言われまくった僕の気も知らないで」
「いやいや、助かったよありがとー!! 愛してるぅ!!」
「うわぁ!?」
レオーネはそう言いながら無駄に"最速"の二つ名に違わない速度で距離を詰め、ライを拘束してその顔に頬擦りを始める。
粛清騎士8名の中でも上位に位置するレオーネの身体能力的に、ライには回避も振り解くのも難しい。
更に言うと初めて会った粛清騎士の試験の日からずっとそうだが、レオーネはライに対して非常に距離が近い。
ライ自身も普段はそう感じさせる一面を見せないが、実際は17歳。
思春期真っ只中の少年である。
美人でスタイルの良いお姉さんからの過度なスキンシップというのは──ちょっと不味い。
「ちょ、はな、離れて!」
「やーだー、照れてる可愛いー!」
「そ、それもそうだけど臭いって!」
言われた瞬間、レオーネはパッと彼を話す。
いきなり拘束を解かれてよろめくライを尻目に、少し気恥ずかしそうなレオーネ。
なんだかんだで臭いと言われるのは堪えるらしい、乙女的に。
「じゃ、先にちょっと身を清めよっか」
そう言って歩き出すレオーネの後ろをライは追いかける。
周囲に気を配りながら並んであるく二人。
話は早速、今回の任務について。
「会敵した転生者について、情報を教えて下さい」
「異能に関してはまだ"これだ"と断言できる材料が少なすぎるから、あくまで私が見た部分のみを端的に、ね」
こうしてレオーネが語った転生者の情報は、「猿人じみた人間離れした体型の巨体」「再生能力」「人を襲う」の三つだった。
「最初は転生者本人じゃなくて、異能で作られた眷属か何かかと思ったけど話出来たし多分違うよねって。無駄吠えもしなかったから、見た目の割にかなり理性的かも?」
「理性的、といいつつも人を襲ってたんですね」
ライは問いかけながら思わず鋭い、厳しい瞳になる。
レオーネは彼のその視線を大して気にするでもなく話を続ける。
「けど、何で?──って面があるんだよね」
あの時転生者が襲ってたのは、小汚い浮浪者。
彼を襲う事に、なんのメリットがあるのか?
「いや、それこそ遊び以外に理由はないんじゃないですか?」
そこに何か理由があると考えるレオーネに対して、ライはもっと単純な理由を提示する。
「だって、転生者は異能を使わずにはいられない生き物ですから」
その台詞に、一瞬レオーネの表情が曇った所をライは見逃した。




