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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
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リリンの魂

 私達の前に現れたのは私と靖子さんが描いたメモリーブラッドの主人公のメグ。


「何だ貴様は?」


 ミカエルが不気味な声でメグに言いかける。


「僕は創造主の本から現れた、雅人さんと靖子さんが描いたメモリーブラッドのメグ。

 悪いけれども君達のしている事は僕も解せない。

 だからそっちがその気ならこっちもやる気だよ」


「面白い、ならば受けて立とう」


 そこで私が「メグ無茶をしないで」


 するとメグは私にウインクをしてきた。


 そしてミカエルとメグは対峙する。


 メグが源となっているのは明るい魂で聖なる力ではない。

 ミカエルの正義は聖なる力によって生み出される。


 ミカエルが翼をはためかせ、空を飛び槍を構える。


 メグは目を閉じて瞑想をしている。

 これは私が描いたメグの敵のことを知る仕草であり、メモリーブラッドでは第三巻のラスボスに使ったと私は描いたメグの必殺技の一つだ。


「余裕だなメグとやら、今後に及んで私との勝負を放棄するつもりか?」


 メグの瞑想も見破れないミカエルは大した奴じゃないかもしれない。

 でも私達にはかなわぬ相手であった。


「メグ、私達も参戦するよ」


「私は一対一で勝負がしたい。手出しは無用よ」


 するとミカエルは聖なる光臨を放ちながら、メグに回転しながら、槍で猪突猛進に迫りくる。


 メグはその目を開き、片手で回転してくる槍を払った。


 そこで靖子さんが「私達には手も足も出なかったあのミカエルの必殺技を一撃で払ってしまうなんて」


 振り払われたミカエルは地面に体を伏した。


「何だ小奴のパワーは?」


 狼狽えるミカエル。


「聖なる者が私達に嘘はつけない、ここで往生するのか?それとも私達に付きまといながら、この世を滅ぼすことをやめるか?」


 そうだ。聖なる力に嘘は御法度、もし嘘をついたら、聖なる力をミカエルは失うであろう。


「舐めるなああああああああ」


 とミカエルは立ち上がり、翼をはためかせて、炎をはいてきた。


 もろにメグに食らったがメグはこれしきの事でやられたりはしない。


 次にミカエルは氷の吹雪を放ち、最後に雷をメグに放った。


 さすがのメグもこれを食らったらまずいんじゃないかと思ったが、メグはかすり傷ひとつも食らっていなかった。


「もうおしまい?」


 メグは余裕なのか不敵な顔をしてミカエルの狼狽える姿を見ていた。


「ならば、これはどうだ?」


 するとメグは、「みんな私の後ろに隠れて」


 私達はメグに言われた通り、メグの背後に回った。


 口から光を放ち、いったい何をするのだろうと見てみると、キーレンド山の麓の木が石に変わっていく。


「すべて石に変わってしまえ」


 だがそれはメグには通用しない。


 すると靖子さんが身を乗り出して、コンパクトの鏡を持ち出して、口から放つ石に変える光を反射させ、ミカエルは石と化してしまった。

 口を開けたままミカエルは石と化している。


「悪い子さんにはお仕置きが必要のようね」


 メグは石となったミカエルを粉々にしようとしたところ、私が「もう良いんじゃない?このままで」とミカエルに私は情けをかけた。


「本当にこのままで良いの?」


「ああ、これならミカエルも何も出来はしない」


「本当に私を描いた作者だけあって優しいね」


「私は優しくなんかないよ。ただこうして立っているミカエルが不憫でさ」


 そこでメグが「本誌でもそうだった。メモリーブラッドの主人公である私を本気で怒らせてしまうところを、相手を攻めずに相手をフォローする立場になって考えていたわ」


 そこで靖子さんが「そうね。私には許せないところをそれでも相手の非を攻めずに相手の立場になって考えて、行くところが魅力的だったわ」


「私は優しく何てないよ。この世のすべてが救われる事がないように私はせめてメグと出会った人たちだけでも助けて上げたいと思っただけだよ」


 そこでリリンが「それが優しさなのじゃ。雅人は今までつらい目に遭ってきた、憂いと書いて人で優しいのじゃ」


 そこで靖子さんが石像と化したミカエルを「それよりこいつどうするの?また目覚めて私達に襲いかかって来るかもしれないよ」


 そこで凜とミレイが、「こんな奴こうするべきだよ」「そうだそうだ」と言ってミカエルの石像を倒してミカエルは粉々に砕けてしまった。


「何て事をするんだ二人とも」


「だってこいつのおかげで僕達は」「危うく死んでしまうところだったんだよ」


「だからって」


 するとミカエルの粉々になった石像から、ドスグロいオーラがにじみ出て来た。


「良くやってくれたな、凜にミレイ」


 どこからか不気味な声が聞こえる。


「凜、ミレイ、我らを裏切ったのか?」


「いいや、裏切ってないよ」「僕達はミカエルに復讐したいだけだった」


 二人の言っていることは本当のようだ。


「この不気味なオーラと声はサタン」


「そうじゃ我こそがサタンだ。正義はいずれ悪に染まる。そしてお主等がミカエルの石像を壊さなければ我は蘇ったりはしなかったものによ」


 不気味にほくそ笑みながら、ミカエルの粉々になった石像からドスグロいオーラが満ちている。


 メグが「みんな下がって」


 言われたとおり私達は下がった。


 まさかミカエルがサタンだったなんて。


「お前がミカエルを操っていたのか?」


「違うな、この愚かな大天使は我を飲み、邪悪な力を聖なる力へと変貌させるために我を飲み込んだのだ。その結果がこれだ」


 どんどんドス黒いオーラが粉々になったミカエルから吹き出してきて、それが実体化した。


 その荘厳な恐ろしさの表情をしているサタンだ。


「聖なる力も邪悪な力もあわせ持つ私にかなうかな?」


 メグは瞑想する。


 そしてその目を開き、「いったん退却しよう。奴には物理的攻撃は利かない。それに奴は物理的攻撃は出来なくても、何をしてくるのかわからない。それに何かよりしろに人の人体を乗っ取られる危険性もある。それに奴はそのまま放置して入ればなくなって消える」


「私がいったん退却だ」


 と叫びみんなに告げる。


 するとサタンは「逃がさぬ」


 キーレンド山の麓から出ればこちらの物だが、そんなとき靖子さんが転んでしまった。


「靖子さん」


 するとサタンは靖子さんをよりしろにしようとしているのか?靖子さんに乗り移ろうとしていたところ、リリンが靖子さんを助けるように盾となって両手を広げて身代わりになった。


「リリン!」


 ドスグロいオーラがリリンを包み込む。


 そして私達は元の場所である、船の上であるところに移動した。


「リリン!リリン!」


 辺りを見渡したがリリンの姿がなかった。


「靖子さん、リリンは?」


「ごめんなさい。私がドジをふんで転んでしまって」


 靖子さんを責めたい気持ちもあるがそんな事をしたってリリンは帰ってこない。


 すると本からリリンが飛び出してきて、安堵の吐息を漏らして「無事だったのかリリン」

 リリンに飛びつこうとしたところ、ミレイが「その人はもうリリンお姉ちゃんじゃない」と言われて止められた。


「そんなの関係ないよ。リリンはリリンだよ」


 ミレイに止められたにも関わらず私はリリンの元へとかけだしていく。


「リリン!」


 リリンに近づくと、リリンは手から波動を放ち、私は吹っ飛ばされてしまった。


「フッフッフッ、この体は良い」


「もしかしてサタンが乗り移ったのか?」


「いかにも」


 私は創造主のペンと本を取りだして、リリンを助けようとしたところ、メグが、「ダメよ。創造主のペンと本でリリンは助けられないわ」


「じゃあどうすれば」


「フッフッフッ、貴様等はこの者に愛着を持っているそうだな」


「貴様、今すぐにリリンから離れろ」


「何を言っているのだ愚か者め、そんな事私がするとでも思っていたのか?」


 すさまじい波動を放つリリンに乗り移ったサタン。

 私達は吹き飛ばされて、壁にぶつけられた。


「力が、力が、漲ってくるぞ。これが貴様等の明るい魂か?これを邪悪な力に・・・」


 サタンは私達が生み出してきた明るい魂を邪悪な力に変貌させようとしている。


「なぜだ、この明るい魂は邪悪な力にならない」


 そんな時にリリンの声が心の中に木霊した。


『雅人よ、我の事はもう良い、お主の手で我と共にサタンを闇に葬ってくれぬか?』


「そんな事出来ないよ。リリンがいなくちゃ小説も絵も描けなくなるよ」


『お主らしい答えだな、だがもうこれ以上はそうするしかない』


 ならば創造主のペンと本でリリンを助ける。


 そこでメグが「そんな事をしたら私達は自滅してしまうわ」


「そんな事を言っている場合じゃない。リリンを助けるんだ」


「もうリリンは存在その物が消されているのよ」


「そんなの関係ない」


 私がリリンを創造主のペンと本で助けようとしたところ、鈍器のような物で殴られて私は・・・。





 ******   ******





「ハッ」と気がつくと、そこは海岸だった。


 何かとてつもなく心配な事を頭から出そうな気がして、私は気がついた「リリンは?」


『ここじゃ』


 光の玉からリリンの声が聞こえた。


 そこで靖子さんが「これはメグさんによるとリリンちゃんの魂みたいだよ」


「リリンの魂?」


『そうじゃ靖子の言うとおり我はよりしろを無くして魂になった』


「じゃあ、リリンは死んじゃったの?」


『あのよりしろはサタンに奪われてしまったが、魂までもが奴に乗っ取られる事はない。そこで提案じゃ。雅人よ空を見上げて見ろ』


 リリンに言われたとおり、空を見上げると、サタンが放出しているのか不気味な紫色に変化している。


「何だこれは?」


『サタンが我々人類を滅亡させようとしている。そこでその創造主のペンと本で奴の野望を砕くのじゃ』


「そんな事をしたらリリンはどうなるの?」


『我のよりしろは無くなるが、我の魂を雅人と靖子で子供を産んで我を生まれ変わらせるのじゃ』


「リリンは死神じゃなくなるの?それでもう会えないの?」


『話を聞いていなかったのか?以前言ったであろう我々はソウルメイトだって』


「靖子さんはどう思うの?」


「私は雅人さんの子供を産みたいと思っている。しかもその子供はリリンちゃんなんでしょ。是非産みたいわ」


『靖子もそう思っておるぞ』


「凜とミレイとわらしは?」


「僕たちはリリンお姉ちゃんにまた、人間として生きていてほしい」「僕も」


「あたしもリリンお姉ちゃんを人間にしたい」


 分かった。もう何も言うまい。


 私は創造主のペンと本を手に取り、書いた。


『サタンとラファエルの野望をくい止めてくれ』


 と。


 すると創造主の本とペンが輝きだして、その光は天井の光となり、世界を覆っていたドスグロい雲が割れて本来ある青い空へと変わっていった。


「ぐわああああああああああああああああああああ」


 とサタンの断末魔が私達の元へと響いた。


 そこでリリンの魂は「これですべてが終わった。雅人よ良くやった」


「世界は救えたものの、リリンを助ける事は出来なかった」


 私は情けなくも涙を大量に流してしまった。


「雅人よ、我はここにおるぞ。我はいったん天に帰る、雅人と靖子の子供として生まれ変わるのじゃ。これほど嬉しいことはない」


 とリリンの魂は消えていった。


 世界は救われた。


 



 ******   ******





 五年後、あれから私達は子供を作り、リリンそっくりの四歳の子供となった。

 子供の名前はリリン。


 私達は凜とミレイとわらしも一緒に暮らしている。


 私達の印税で子供達を養うのは容易ではなかったが、毎日幸せな日々を過ごしている。


 私と靖子さんでメモリーブラッドは十巻まで発売されるようになり、売れ行きはそれはもうすごかった。


 リリンが靖子さんのお腹にいた頃から、毎日リリンの魂向上の為に、創作活動で子供たちを養っていた。


 メモリーブラッドはみんなで作った物語だ。

 決して私一人では書ける代物ではなかった。


 私達は今東京の下町に印税で大きな家と土地を買って暮らしている。


 朝は寝ぼすけの私は四歳になったリリンに起こされて「パパ朝だよ」と起こされる。

 

 長く繊細な白い毛と目が赤いのはリリンが死神ではなく人間そのものである。


 そして朝食には靖子さんに任せて、私はリリンを託児所に送り凜とミレイとわらしには学校に行かせている。


 そんな輝かしい毎日を送って、私達は幸せに過ごしている。


 もうリリンが死神として生きていくことは無いようにしている。


 私と靖子さんから生まれたリリンは本当に幸せそうに生きている。


 私達はもう悲しい目に遭わなくて済むのだ。


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