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死神様  作者: 柴田盟
第2章南へ。
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アケミの呪い

 リリンは言った僕に使命があると。


 何の試練だか知らないが、リリンは言った。


 この困難の中を打破する事が僕にとっての魂の向上だと。


 それにはリリンの力が必要だと言っている。


 世界の悪者を敵に回してしまい、それに靖子さんを助けなければならない。


 もはや靖子さんを探すにはもう新幹線やタクシーなど公共の物は使えなくなった。


 私はリリンと共に素行の悪い兄ちゃんに降ろされた場所である仙台で、ここから車も使わずに歩いて靖子さんを探すことになった。


 仙台を抜けてリリンと共に人気のない所を歩いている。


「はあ、はあ、」と呼吸が荒くなり、東北の方でも夏は厳しい「リリン、こっちで合っているのか?」


 あまり下手に騒ぎだすとアケミが放った裏の連中に気づかれてお陀仏となってしまう。


「そうじゃ、靖子は南に行ると示している」


 今車の走らない国道を歩いている。

 靖子さんの荷物を持って、今日はどれぐらい歩いたのだろう?


 もう空は茜色に染まり、幾千星が輝いている。


 国道をそれた道に森が合った。


「今日はここでテントを張って休むことにしよう」


 リリンが言う。


 靖子さんがしまったリュックの中にいくつか食料が入っていた。


「リリン、インスタントのラーメンならあるけれど、それで良いかな」


「我は何でも良いぞ」


 でもここには水道もない。


 だがどこか等か水のせせらぎが聞こえてきた。


 水のせせらぎの方へ行くと、綺麗で透明な水が流れていた。


 この水がラーメンに使えないか確かめて飲んでみると以外とおいしかった。


 この水使える。


 鍋ごとすくって水を取り出してガスコンロに火をかけて沸騰するのを待っていた。


 すぐに沸騰してインスタントのラーメンを二つ入れ湯がいて完成。


「リリン。食事が出来たよ」


 リリンを呼んだが返事がない。心配になり、辺りを見渡すとリリンは川のせせらぎを見るのに夢中になっていた。


「リリン」


 もう一度大きな声で言うとリリンは「はっ」と気がついて「どうした」


「料理が出来たよ」


「そうか。朝から何も食べていないからな」


「そういえば、靖子さんの事が心配でご飯どころじゃなかったっけ」


「では、いただくとしよう」


 ラーメンをお皿に盛りつけてリリンの分と私の分を分けた。


「「いただきます」」


 ラーメンを食べるとこれまたおいしい。

 ただのインスタントラーメンなのにおいしい。

 綺麗な水で作ったラーメンは最高だった。


 ラーメンも食べ終えて、水のせせらぎでお椀や鍋を洗った。


「雅人、ラーメンおいしかったぞ」


「うん」


「それじゃあ、雅人早速創作活動をしてくれぬか?」


 今日は疲れているがリリンの力になる事は靖子さんを探すことでもある。

 だから多少無理が合っても創作活動を続けなければいけない。


 今日の創作活動も順調にいき、リリンのパワーにもなってくれそうだ。


 私が創作を書き続けているリリンの姿は、それはもう気持ちよさそうに眠っている。


 私にはリリンが必要だ。リリンがいなければ小説を書くことはおろか、さらわれた靖子さんを探すことが出来ない。


 待っていてね。靖子さん。君は私の妻であり、小説を完成させるパートナーでもあるんだ。

 それだけじゃない。

 その他にも言葉では言い表せない絆がある。


「ハッ」


 と気がつくと、いつの間に眠ってしまったのか?夜は明け、朝になっていた。


 リリンは僕の小説を書く魂を感じながらいつの間にか眠ってしまったようだ。


 朝ご飯はフランスパンをスライスしてガスコンロで少しあぶり焦がしたものだ。


「リリン。朝ご飯が出来たよ」


「おおう、そうか朝ご飯が出来上がったか」


「今はこんな粗末な物しか食べさせる事が出来なくてごめんね」


「我は死神じゃ、食べられる物なら毒でも食べても大丈夫じゃ」


 その言葉初めて聞いた。


「本当に毒でも食べられるの?」


「当たり前じゃ、我は死の神であり神様と崇められる者じゃ」


 それは恐れ入った、でも神様でもこんな幼い神様なのだ。私がついていないと心配だ。


 森の中は魔女でも住んでいそうな程の暗さだ。

 でも日光がかすかだがこちらにまで行き届いている。


「そろそろ行こうか」


「ふむ、一刻も早く靖子を助けに行かなければな」


 子供ながらもきりりと引き締まった顔つきで言う。


 テントを畳んで国道の方へと歩き出す。


 森の中をこうして国道の方へと向かうと、私とリリンが出会った時の事を思い出してしまう。


 あの時、私は自殺しようとしていた。


 死ぬ寸前の時にリリンと契約を交わした。

 契約とは・・・私がリリンの為に小説を書くことだったっけ。

 それも一年って言っていたけれど、まだリリンとは出会って一年もたっていない。

 リリンに一年たったらどうなるのか聞いてみようと思ったが何か恐ろしくて聞けなかった。


 国道にたどり着き、私達はリリンの言うとおり、一刻も早く靖子さんを探しに行かなければいけない。


 国道を歩き、リリンに聞く。


「こんな悠長に歩いていて靖子さんは大丈夫なのか?」


「我もそう思っている」


「いっそうの事ヒッチハイクをしてみてはどうかな。お金はあるし」


「だがお主は狙われている。下手に動くとまた昨日のような連中につかまり、殴られるかも知れないぞ」


 僕は思わず大きなため息をついてしまった。


「仕方がない。確かに一刻を争うときだ。雅人から得た力で、少しでも靖子との距離が縮むように、ワープを使ってみるか?」


「その手が合ったか、じゃあ早速ワープを使おうよ」


「ふむ」


 リリンは死神の鎌を召還して、ワープを試みようとしている。


「さあ、雅人、我に捕まれ」


 僕は言われたとおり、リリンの肩に両手を添えて、まばゆい光に目を閉じた。


「ついたぞ雅人」


 その目をゆっくりと開けると、そこは小さな町であった。


「ここはどこだ?」


「我にも分からぬが、靖子の気配が強まってきた」


 スマホを使うのは危険なので、私達は辺りを見渡しながら散策した。


 すると高崎駅が見えてきた。


 ここは群馬県高崎市だ。


 コンビニでサングラスを買って、これで少しは私の正体を隠すことが出来るだろう。


「ずいぶん南へと進んだね」


 リリンは力を使い果たしたのか?大分力を使ってしまった様子であり、息を切らしている。


「雅人よ。我はちょっとばかし力を使い果たしてしまった。どこか茶店でお主の創作意欲のパワーを我にくれないか?」


「分かった」


 茶店と言っても僕は世界中の悪者に狙われた存在だ。


 茶店にその悪者がいないか心配になってきた。


 僕の心を読んだのか?リリンは「大丈夫じゃ雅人よ。悪者が来ても我が関知する」


「でもここにも私を狙う者はいるんでしょ」


「確かにいないとは限らないが、大丈夫じゃ。さっきも言ったように、悪者が来ても関知する」


「分かった」


 リリンは力を使い果たしたが微力ながら、その力は残っている。


 リリンの力の源は私が小説を書く意欲を元にしている。

 本当はこんな悠長な事をしている場合じゃなく、一刻も早く靖子さんを助け出すために、動きたいが、そのためにはリリンの力が必要だ。


 茶店に入ろうとして、どこか目立たない所に茶店はないだろうか?高崎駅周辺の路地裏にそのボロい喫茶店は合った。


「ここなら人目もつかないと思うけれども、リリンどうかな?」


「大丈夫だと思う」


 早速そのボロい喫茶店に入ると、客は一人もおらず、年寄りのマスターが新聞を読みながらたばこをふかしている。


「いらっしゃい。お好きな席へとどうぞ」


 座席もテーブルも色あせていて、これではお客は来ないのは当然だなと思った。

 でも丁度良い場所だ。


 僕とリリンは座席に座って、リリンは早く魂の源の僕の創作エネルギーを欲している。


「リリンはパフェでも頼むか?」


「それも良いが、早く雅人の創作意欲が欲しい」


「分かったその前に注文しないとね。マスター」


 と呼ぶと老人のマスターはすぐに私とリリンにお水とお手拭きを差し出してくれた。


「あの~、マスター」


「はい」


「コーヒーとスペシャルサンデーパフェをお願いします」


「はいかしこまりました。コーヒーの方はアイスとホットがありますが」


「じゃあ、アイスで」


「かしこまりました」


「じゃあ、リリン、早速創作活動を始めるから」


「頑張るのじゃぞ、靖子を助けるにはお主のパワーが必要じゃからな」


「うん。任せてよ」


 私は鞄からポメラを出して、早速創作活動に専念した。

 靖子さんを助けるためだ。一刻も早く創作活動を始めなければ。

 リリンは言っていた。

 世界中の悪者を相手にしても私の小説を読んで、味方になってくれる人がいると。

 そう思うと書く気になり、創作活動を始める。


 靖子さん待っていて、今すぐに助けに行くからね。

 キーボードの手が止まらない。


 とにかく書いて書いて書きまくるしかない。


 読者のみんなに私の小説を読んで貰いたい。

 それと一刻も早く靖子さんを助けに行かなくては。


「雅人エネルギーが満ちてくるぞ」


「もっともっと満たしてあげるからね」


 自分でも凄いくらいに小説が進む。

 そして私自身が書いた小説メモリーブラッドの二巻が終了した。


「力が力がみなぎってくるぞ」


 リリンは叫んだ。


 するとうるさいと言わんばかりにマスターの咳払いが聞こえてきた。


「分かったから落ち着いて」


 時計は丁度午後一時を回っていた。


 お腹も空いたことだし、ここで何か軽食をいただこうと思っている。


 メニューを見て、丁度カレーライスが合ったのでそれを注文することにマスターを呼んだ。


「はい。ご注文は何でしょうか?」


「リリンもカレーライスで良い?」


「うん。我はカレーを食べると元気が出てくるからな」


「じゃあ、マスターカレーライスを二つお願いします」


「かしこまりました」


 マスターはそういってカウンターの中にある、調理室らしきところに入っていった。


「リリン、力がみなぎったようだね」


「これも雅人のおかげじゃ」


 そう会話している途中で、カレーライスは運ばれてきた。


「うまそうじゃのう」


「じゃあ、いただくとしようか」


「「いただきます」」


 そういってスプーンをとりカレーをすくって食べてみると凄くスパイシーでとてもおいしかった。


「おいしいよリリン」


「ふむ」


 リリンも食べてみると「おいしいぞ雅人。外観はボロくても味は最高じゃのう」


「リリン、それは失礼だろう」


 小声で叱責した。


「すまぬ」


 するとマスターが「はっはっはっ、良いんだよ。このお店を始めてからカレーだけには自信があるんだよおじさんは」


「そうですか」


 まあ自負するだけの味である。


「なぜお客が来ないのじゃ?」


「まあ、辺りにおいしいお店がたくさん出来てね。そろそろわしも年だしこの店を閉めようとしているんだ」


「そうなんですか?」


「カレーライス頼んでくれてありがとう」


「こちらこそ、こんな長い時間居座って申し訳ありません」


「良いんだよ」


「さてリリン、そろそろこの店を出ようか」


「・・・」


「リリン?」


 リリンが険しい顔で外を見つめている。


「どうしたリリン」


「マスターよ、お主通報しおったな」


「な、何のことだい?」


「まさかマスターも?」


「雅人よここはもう危険じゃ。早く外に出るぞ」


 ドアから出ようとするとマスターは立ちふさがり「おっとおだいをまだいただいておりませんよ」


「いくらですか?」


「一千万円」


 マスターがそういった瞬間にリリンはマスターを電撃を与えて、気絶させた。


「なぜこんな優しそうな人が私を狙って・・・」


「話は後じゃ、一刻も早くここから出るぞ」


 ドアを開いて僕たちは外に出た。


 外には達の悪そうな男が三人いた。


「ちょっと待てよ、お嬢ちゃん達」


 襲ってくるやいやなリリンは電撃を加えて三人を気絶させた。


「行くぞ雅人」


「うん」


 そういって店から出て、駅の方には人がいるので、あまり人気のない路地裏を通って逃げた。


 どういう事なんだリリン。あのマスターでさえも。


「お主は呪われているようだ」


「呪われている?」


「ああ、お主に出会った人間の心の悪を芽生えさせ、邪悪な心へと変化してしまう呪いじゃ」


「アッハッハッハッ」


 忘れもしない、アケミのあざ笑う声が聞こえてきた。


「アケミ、それにリリス」


 リリンがたち構えて言う。


「その呪いを解く方法はない。お前は人と出会う度に襲われる人間にしてやった。もはや靖子と出会っても、靖子の悪の心が呼び覚まし、心は邪悪に染まりお前を殺すだろう」


「ならばせめて靖子さんを解放しろ」


「誰がお前の言うことを聞くか、お前は永遠に人に会う度に人の邪悪な心呼び覚まされいつしか殺されるだろう」


 そういってアケミとリリスは消えていった。


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