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死神様  作者: 柴田盟
第1章北へ
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雅人の力

 素行の悪そうな兄ちゃんがテントの入り口にまで入って来た。


「何だ。あんた等は?」


 私が言うと顔面ピアスだらけの坊主頭が「ここは俺たちの縄張りなんだよ」


 さらにもう一人のパンチパーマでサングラスをした兄ちゃんが「俺達の縄張りに入ったんだ。百万渡したら助けてやるよ」


 そこで靖子さんが「ここは公園よあなた達の縄張りなんじゃない」


「何だ姉ちゃんお前が体で払ってくれるのか?」


「嫌よ私はこの人の妻なんだから」


「んだこらっ、何が妻だ」


 顔面ピアスだらけの男がテントの中に土足で上がり込み、靖子さんに手を出そうとしたところ、私が「やめろ」と勇気を振り絞って言った。


「僕の妻だからって手を出すなって言いたいのかい?」


「そ、そうだ」


 自分でもわかるが私はかなり動揺している。

 こんな時にリリンに助け船を出したが、リリンは力を使い果たして今は眠っている。


「お前ちょっと表に出ろよ」


 言われた通り表に出ると、こいつ等を併せて八人の素行の悪そうな不良がいた。


「ちょっと雅人さんをどうするつもり」


 私の前に立ちはだかり、私を庇う靖子さん。


「おお、かわいい姉ちゃんじゃねえか」


 外にいた連中の一人が言った。


「この女こいつの妻だってよ。中に小さなガキがいたけれどもな。何お前達のガキか」


「そうよリリンちゃんは私達の子供よ」


「ガキを産んだような体型はしていねえな」


「ここはあなた達の縄張りなのね、悪かったわよ。お詫びに百万円上げるから」


「マジかよ」


 懐に隠してある百万を靖子さんは渡した。


「おおっすげえマジで百万だぞ」


 その百万は賞金の半分だ。


 でもこの状況でそれが得策としか考えられない。


「ついでにこの女どうする?」


「百万渡したんだから良いでしょ」


「男は別だ」


「あー俺良い事を思いついた」


「何だ言って見ろよ」


「この女を雅人さんの前でりんかんしようぜ」


 何だこの人間のクズは?本当にこんな人間がいるのか。

 怒りがこみ上げて来る。


「ふざけんなよおおおおおお」


 叫んだと同時に空から縄みたいな変な物が降ってきた。


 それはマムシだった。


 大量のマムシが不良達にかみついた。


「何だよこれ」「これマムシっすよ」「俺噛まれたよ」「早く解毒しなきゃ」


 大量のマムシは容赦なく不良ども全員に噛みついた。


 不良どもは百万円を落として、慌てて逃げ出し行った。


 降ってきた大量のマムシは私達に襲いかかろうとせずにすぐに引っ込んでいった。


「キャー蛇怖い」


 私に泣きつく靖子さん。


「大丈夫だよ」


 いったい何が起こったのだ?

 この感じ、昨日の靖子さんがアケミの銃で撃たれた時のと同じだ。

 これはリリンの力ではない。


 本当に私は何者なのだ?


 とにかく私は「ここはもう離れた方が良い」


「でもリリンちゃんが」


 リリンがテントから出てきて「雅人の言う通りじゃ、そろそろこの場から立ち去った方が良い」


 そんなリリンを見ると披露困憊の状況だった。





 ******   ******





 テントを片づけてリリンを私が背負い再び北へと向かう。


 私は不安だった。

 私が憤ると先ほどのような現象が起きるのか?

 私が『やめろおおおおお』と言った時空からマムシが降ってくるんだよな。

 最低な輩達だから自業自得何だけれども、私は殺人者になりたくない。


 駅のホームにたどり着いて、盛岡から青森までの列車に乗った。

 そんな時靖子さんが「あの時の事を気にしているんでしょ」


「いや別に」


 あまり心配かけない方が良いと思ってそういっておいた。


 すると靖子さんは私を抱きしめて来た。


 靖子さんの抱擁の中、私は悩んでいたんだ。

 それを見透かして靖子さんは私を抱きしめたのだ。

 靖子さんは私の気持ちを看破していたんだ。

 本当に私は良い奥さんを持った。


 ヤバい涙がこぼれ落ちてきた。

 そうだ。私は甘えたかったんだ。

 甘えたいが為にアケミにあんな事をしてしまったのだ。

 でも今はこうして私を包み込むように甘えさせてくれる靖子さんがいる。


「ありがとう靖子さん」


「ドンマイだよ雅人さん」


 にっこりと菩薩のような笑顔で私をみる。


「よし書くぞ」


「その活きですよ雅人さん」


 リリンは私と靖子さんの挟んで眠っている。


 私はポメラを出して創作活動に取り組んだ。


 靖子さんは昨日私の書いた小説のキャラをイメージしてスマホのアプリで書いている。


 電車は動きしばらく書いていると、リリンが目を覚ました。


「感じるぞ二人の魂が」


 そんなリリンを目の当たりにして私と靖子さんは微笑み合ったのだ。




 ******   ******




 そんな創作活動を電車の中でやり、終点にたどり着いた。


 電車を降りて靖子さんは言う。


「蛇が降っていた事がニュースで取り上げられているわ。それにみんな軽傷で済んだみたいだよ」


 それを聞いて私はホッとした。

 あんな奴らでも人を殺すのは後味悪いからね。


 リリンがその蛇が降ってきた事を聞いて複雑そうな顔をしていた。


 リリンは言っていた。

 いずれ私自身が分かることだと。

 私は自分が何者なのか?どうしてリリンはこんな私に寄り添って幸せを供給してくれるのか?

 知りたいけれど怖い。

 今リリンに私の事を聞けば教えてくれる空気で合ったがあえて聞かなかった。

 いや自分を知ったら恐ろしい現実に目の当たりにしそうで怖くて聞けなかった。


 色々と考えていると後ろからリリンと靖子さんが私の背中を叩いた。


「何辛気くさい顔をしているんですか雅人さん」


 そしてリリンが「いずれ自分の正体が分かる時が来るが、大丈夫じゃ。雅人は我が守ってやる。だから安心していつもの雅人で良いのじゃ。それにお主が怖がるほどの事じゃない雅人は」


 それを聞いて私は安心する。


 青森に到着して、いったんそこで寝床を確保するために

公園を探した。

 自然豊かな草原を遠くから恐山を見渡せる。


 先ほどトラウマがあってか、私は一つ提案する。


「今日はテントじゃなくてどこかに民宿を探して泊まった方が良いんじゃないの?」


「それもそうね。どこか安い民宿をスマホで探すわ」




 ******   ******




 民宿はすぐに見つかり、一人二千五百円の宿だ。


 民宿まで歩く時、自然の豊かさを感じた。


 民宿にたどり着き、女将に案内され六畳一間の部屋だった。


「丁度、三人眠れるね」


 私が言うと、靖子さんは「お金は充分にあるけれども、あまり使いたくないけど仕方がないわね」


 腰を下ろして早速お昼ご飯の用意をしたいが、台所もなく靖子さんが持っている調理品で作るのはまずいので、近くのお弁当屋さんで三人分のお弁当を買ってお昼はそれで済んだ。


「さてご飯も食べた事だし、創作活動を実施しよう」


「そうね」


 リリンは靖子さんの膝を枕代わりに目を閉じて黙っていた。


 リリンの力の源は燃やし尽くす私達が創作活動をしている魂を感じる事にある。


 リリンを元気にするのは私と靖子さんの創作活動にある。


「二人の魂を感じる。我に力が沸いてくる」


 私が小説をきりの良い時に終わらせて。


「そうだ二人とも買い物に行かないか?」


「買い物って何を買いに行くの」


「そうだなみんなの服でも買いに行こうよ」


「だったらサザンカハウスって言うアウトレッドの服を買いに行きましょう」


 サザンカハウスって聞いたことがある。

 全国にアウトレッドの服が破格の安い値段で買える店だ。


「この辺にサザンカハウスはあるかスマホで確かめて見ましょう」


 靖子さんはスマホで探して「合ったここから十五分の位だって」


 さすがは上場企業アウトレットサザンカハウス。


「早速行ってみよう」


 歩いて十五分でサザンカハウスにたどり着いた。


 中に入り、本当に安い値段だ。

 良い物がたくさんある。


 今、靖子さんが着ている服は、使い古したジーパンに赤いチェック柄のカッターシャツだ。

 私はネズミ色のチノパンに黒いカッターシャツだ。


「うわー凄い安いね」


 私が言う。続けて、


「靖子さんこんな服はどうかな?」


 藍色のワンピースを靖子さんに差し出した。


「私はスカートなんて柄じゃないよ」


「良いから試着してみてよ。リリンは子供用の黒いワンピースが似合っていないか?」


「いや我は以前買ってもらったこの白いワンピースで充分じゃ」


「良いから良いから二人とも試着して見ようよ」


 二人は試着室に入り私が進めた服に着替えている。


 早速リリンが着替え終わって試着室から出てきた。


「どうじゃ?」


 照れくさそうに出てくるリリン。


「うん似合っているよ」


「そうか?」


 靖子さんは試着室から顔を出して照れくさそうに言った。


「さあ見せてよ靖子さん」


 靖子さんは観念するように試着室のカーテンを開いた。


 それは眩しすぎるほど可憐な姿だった。


 私はもう一人の妻を迎えた感じたした。


「うん。似合っているよ」


「そうかな?私スカートなんて柄じゃないと思っているから」


「そんな事はないよ」


 そんなワンピースの似合う靖子さんの他にはいないと思うほどだ。


「やだ、ちょっとじろじろ見ないでよ」


 カーテンを閉めて試着室に閉じこもる靖子さん。


「出ておいでよ靖子さん」


「む~」


 顔を真っ赤に染めて出てくる。


「それにしようよ。ウエディングドレスの時はノリノリだったじゃないか」


「あれは小さな頃の夢で・・・」


「とにかくそれにしようよ。さあリリンも」


 二人の手を引きカウンターまで連れていく。


「この二人が今着ている物を下さい」


「はい。そのまま着て帰りますか」


「はい」


 そこで靖子さんが「ちょっと雅人さん」


「良いじゃないか」


 リリンが「靖子似合うぞ、我の次にかわいいぞ」リリンは胸を張っている。

 リリンって意外とナルシストだったなんて。


「お二つで千六百円でございます」


 私は一万円を出してお釣りを受け取った。


「さて帰ろうか」


「ちょっと待ってよ」靖子さん。


「えっ?」


「雅人さんもイメチェンしようよ」


「私は良いって」


「それは何でもずるくない。私にこんな恥ずかしい服を着せさせたのだから」


 幸せってこういうのを言うのかな?

 昨日は靖子さんが襲われそうになった時になったのにこうして買い物を楽しんでいるのが嘘みたいに思える。

 今は自分が何者なのか不安に苛まれる事はなく安心している。

 昨日は不良どもに何が何だか分からないが、蛇を降らせて撃退させたが、それはそれで良かったのかもしれない。


 色々と考えていると靖子さんが「これなんてどうかな」紫色の妙なロゴの入ったカッターシャツを私に見立てた。


 私もそれが気に入り「いいね」と言葉にする。


「それとズボンは」


 ズボンが並べられている棚に活き「これなんてどうかな」凄い鮮やかないかにも高価そうなジーパンを私に差し出して「いいね」と言った。


「雅人さんも試着してみれば」


 そうさせて貰うよ。


 試着室に入った私は久しぶりに自分を映す鏡を見た。

 何だろう何か引き締まった顔を見て、テンションがあがる。

 それに靖子さんが選んでくれた服を着てみると、より一層おしゃれに見えた。

 そして試着室から出ると靖子さんは瞳をキラキラと輝かせて「凄いかっこいい」と言われて私は少し照れてしまった。リリンも同じ事を言っていた。


 早速着たままカウンターに向かい、全部で二千円だった。 


 買い物も済んでもう日が暮れていた。


「そろそろ晩ご飯にしましょう。リリンちゃんは何が食べたい?」


「青森の特産物を食べたい」


 そこで私が「青森の特産物ってマグロだよ」


「ちょっとお刺身は高くない?」


 節約癖の靖子さんが言う。


「まあ、お金が入ったんだから良いんじゃない」


「ダメよ癖になるから」


「なら回転寿司何かどう?」


「まあ、回転寿司なら良いでしょう」


 靖子さんがスマホで回転寿司を探して、すぐ見つかり私達はそこに向かった。


「おおっお寿司が回っているぞ!」


 リリンが瞳を輝かせながら言った。


「高いお皿は取らないで下さいね」


「高いお皿?」


 とリリンが一番高いお皿を取ってしまった。


「リリンちゃんそれは高いお皿だから戻しなさい」


 戻そうとすると店員が「一度振れたお皿を戻すことはなりません」と注意を受けた。


 ちなみにリリンが取ったお皿は六百円する高価な寿司であった。それに大トロでありリリンはおいしそうに食べていた。


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