新人
案外近くに知り合いがいるかもね。
あれ?あなたの後ろにいる人は?
後ろ見てみて?
あたし…………連絡先交換してない…?
嘘…嘘嘘…?ウソ?うそ?
漢字だとちょっと変…?
いや…………今はそんな事どうでもいい…。
あたしにしては上出来じゃない…?
だってあたし絶対初対面の人にウザがられる人ナンバーワンだと思うし、ええーーーーー…。
あ…連絡しなきゃ………。
待って…なんて送ればいいんだろう。
好き…?ド直球……。
嫌い…?嘘つき……。
無難に……一緒にご飯行きませんか…?
いや無難ではないよ……。
ほかの人ならこうゆうのすぐに分かったりするのかなー。
動画でも脈アリとか脈なしとか、好きとか嫌いとかあるけど…やっぱり分からない……なら聞いてみよう。
華愛(あの…LILILILineをあまりほかの人とあまりやったりしないので勝手がわからないのですが…)
これでよし…。
………バカとか…思われてるかな…。
瞬(僕もです…なので華愛さんのペースでいいですよ)
大人!
じゃあ……。
翌日
天井を見て、目が覚めた。
瞬「会社行くのだるいな…」
朝の準備は憂鬱だった。
あまり朝の身支度は好きではない。
瞬はそのまま黙々と準備をしていった。
スマホを見るとLILILILineがきていた。
おはようございます、とメッセージがきていた。
僕からしてもよかったんだけどあの子のペースに合わすことにした。
おはようございます、と送り返した。
準備をする手が止まっていたので再開した。
その後にスマホがなった。
時間はそんなにないのでスルーした。
人がわんさかいる電車に乗り、会社に向かう。
会社につくと上司が仕事をしていた。
上司A「あ、瞬くん、来たばっかで悪いんだけど…これやっといてくれない?今日中に…ありがとう!」
うちの上司は人の話を聞かない。
そして人任せだ。
責任からも逃げる。
何も言ってないのに仕事を任されてしまった。
会社の人たちはハッキリ言って変人だと思ってる。
でも一人だけまともな人もいる。
?「先輩!お疲れ様です!」
ビシッとお辞儀をした、この人だ。
瞬「うん、お疲れ様…遇人くん」
朝から元気だな。
遇人「暑いっすね!」
リュックを机に置いてそう言った。
瞬「うん、とっても暑いよ」
遇人くんはここで唯一の常識人。
おっと……この仕事は流石に一人じゃ無理だな。
今日までってどうなってるんだ……仕事量が半端じゃない。
遇人「大丈夫ですか?」
瞬「ちょっと手伝ってほしいかも」
遇人「はい!喜んで!」
いい後輩を持った。
お礼を言って机に向き直った。
いつかお礼に奢ってもいいな。
1時間後。
そうだ…聞かなきゃいけないことがあったんだった。
瞬「遇人くん、明日って時間ある?」
遇人「すいません…明日はちょっと用事があって」
それなら仕方ない。
それにしてもなんの用事だろう?
瞬「分かった、それで用事って?」
遇人「結婚式に招待されて」
遇人くんがへっと笑った。
結婚式かぁー僕は招待されたことないな。
瞬「分かった、土産話待ってる」
遇人「あはは…結婚式って言ってもひっそりやるんですけどね」
そうなのか…ひっそりやる結婚式ってあるんだな。
僕はそういう話に疎いからな。
瞬「結婚かぁ」
遇人「お?するんですか?!」
目を見開いて聞いてきた。
瞬「違う違う…縁がないなってだけ」
遇人「そもそも結婚はしたいんですか?」
……そうだなー…あんまり分かんないんだよなー。
瞬「まぁ…好きな人ができたらするかもね」
遇人「ヒュー!」
まぁ…人と出会う機会がそもそもないけどね。
出勤する日以外は基本家にいるし、会社には意地悪な人しかいない。
癒しがほしい…。
瞬には没頭できるものがなかった。
楽しみなことは食べることと寝ることだった。
趣味は料理で、唯一少しだけ没頭できる事だった。
上司A「あ、瞬くん…これもおねがーい!」
瞬の机に沢山の資料が置かれた。
上司A「整理しといて」
瞬「はい…」
上司Aがスキップしながら席に座った。
遇人「ここってブラックですか?」
瞬「うーん…マシな方だと思う…イジメとかはないし」
遇人「グレーか…」
はぁ…。
上司B「あ、忘れてた…みんな一旦手止めてもらっていいですかー」
御局様「何ですか…?」
上司B「今日から新卒の子がね、うちの仲間に入りました…前にどうぞ」
新卒の子……。
新卒さん「どうも」
新卒さんは若い男の子だった。
上司B「あの…自己紹介…」
新卒さん「あ、はい…」
低い声だった。
新卒さん「派舞 芽縷縷です…よろしくお願いします」
芽縷縷さんが頭を下げた。
何歳くらいなのか…。
遇人「…女の子みたいですね…」
コソコソと言った。
瞬「…確かに…」
上司B「それじゃあ…教育係は瞬さん…お願いします」
えぇ…。
上司A「ハハ、瞬くんはいい教育係になりそうだ!」
はぁ…。
上司B「それでは仕事に戻ってください」
押し付けられた。
芽縷縷「お願いします…」
瞬「よろしくね…えーと、僕の名前は甘井 瞬ね…それじゃあ、仕事内容を教えるね」
芽縷縷「ありがとうございます…」
人形みたいだな…。
瞬「それじゃあ、芽縷縷くんの席は…ここ?」
芽縷縷「はい…そうです…」
瞬「じゃあ…座ってもらって」
芽縷縷「はい…」
……大丈夫かな…。
瞬「パソコン開いて」
芽縷縷「はい…」
瞬「それじゃあ、やってもらいたいことなんだけど…ウンタラカンタラをカクカクシカジカしてもらってそうしたらパンパラピーのポンポコラーノをして……」
説明をしていると。
芽縷縷「まつ毛長……」
瞬「え?」
芽縷縷「なんでもないです……」
びっくりしたー急に褒めてきたのかと思った。
気を取り直して、仕事のやり方を教えていく。
1時間後
この子…もしかしてポンコツ…?
芽縷縷「すいません…」
瞬「あーと、ミスするのは仕方ないよ」
芽縷縷「本当ですか………」
同じ事を言っても、ミスをしてしまう…。
集中力が切れた…?それとも何か……。
瞬「聞き取りづらかった?」
芽縷縷「あ、いや、そういうわけじゃ…」
てことは……。
瞬「理解ができなかった…?」
芽縷縷「はい……」
瞬「それじゃあ、メモに書いて渡すよ…それならどうかな?」
芽縷縷「ありがたいです…」
瞬「それと、分からないこととかこうしてほしいとかあったらハッキリ言っていいからね」
芽縷縷「はい…ありがとうございます…」
瞬「うん」
これでやっと僕の仕事に戻れる。
遇人「お疲れ様です」
瞬「ふぅー、何もしてないんだけど疲れたよ」
遇人「まぁ…人に何かを教えるって難しいですよね」
上司A「今日さぁ!新卒くんの歓迎会しよう!」
芽縷縷「え……」
上司A「新卒くんいいよね?」
芽縷縷「あ…はい…」
上司A「新卒くんの奢りで!」
芽縷縷「………」
上司A「冗談じゃん!」
仕事しろよ…。
後、名前覚えろよ…。
心のなかでそう思ったけど口には出さない。
それが社会人。
遇人「俺のときもやられましたわ」
そうだね…。
上司A「それじゃあみんな手を動かして!」
動かしてるよ…。
お前だけだよ…。
遇人「ほんとにグレーすか?」
お昼の時間
終わったー、間に合ったー。
瞬「ありがとう、遇人くん」
遇人「いやもう全然!こちらこそありがとうございました」
芽縷縷「あの…」
お…芽縷縷くんも終わったかな?
瞬「はい?」
芽縷縷「ありがとうございました…すごい助かりました…」
瞬「うん、よかったよ…どう?大丈夫そう?」
芽縷縷「あっ…その…えっと……」
あたふたしてる…。
瞬「ゆっくりでいいよ…それと言いたい事は言っていいよ」
芽縷縷「ありがとうございます……僕…実は…耳から得た情報を理解しにくいです…」
瞬「そうなの?」
芽縷縷「はい…だから迷惑をかけてないか…心配で…」
瞬「そんなことはないよ、それに誰だって理解できるわけじゃないから、気にしないでね」
芽縷縷「あ…ありがとうございます…」
遇人「そういえばもうお昼っすね、また公園で食べるんですか?」
瞬「うん、外で食べるのはとってもいいよ」
遇人「開放的ですよね」
瞬「そうなんだよねー」
芽縷縷「あの……一緒にお昼いいですか…?」
お昼?
瞬「いいけど…僕と一緒でいいの?」
仕事仲間と一緒にって…最近の若者達は大丈夫なのかな…。
まぁ…無理してなさそうだけど…見ただけじゃ分からないからな…。
芽縷縷「はい…その…瞬さんのことを知りたくて…」
………あれ……なんか…なんだ…?
あっ思い出した、華愛さんが初対面の人とは名前か名字で呼ぶか迷うって話を今なぜか頭によぎった。
別に初対面でもないのに…。
芽縷縷「あの…瞬さん…?」
おっと…。
瞬「あ、ごめん……それじゃあ行こうか?」
お弁当が入った袋と水筒を持って外に出る。
芽縷縷「外は…暑いですね…」
まぁね。
瞬「どんどん暑くなるらしいね…熱中症気をつけて」
芽縷縷「はい…」
公園まではすぐだった。
人は誰もいなかった。
ベンチに座って袋からお弁当を取り出す。
芽縷縷「木の陰になってるおかげか…温度が下がっている気がします…」
何度か下がったよね。
瞬「ここ涼しいよね」
芽縷縷「その…瞬さん…」
オドオドしているけど、大丈夫かな…。
瞬「ん?」
芽縷縷「瞬さんは…好きな食べ物はありますか…?」
手を動かしながら聞いた。
好きな食べ物………。
瞬「えっと、バナナ…とか?」
芽縷縷「あ…いい、ですね…………」
…………………………………。
芽縷縷「あの…好きな曲はありますか…?」
好きな曲…………。
瞬「仮面ライダーのオープニング…とか?」
未だにいいなと思ってるんだけど、どうかな。
芽縷縷「あ、いいですよね…」
…………………………………。
芽縷縷「じゃあ……好きなお寿司はありますか…?」
好きなお寿司………。
瞬「マグロ…とか?」
芽縷縷「あ…おいしい、ですよね…」
…………………………………。
芽縷縷「それじゃあ……」
瞬「ごめん、話を遮っちゃうけど……聞いてもいいかな?」
芽縷縷「なんなりと……」
瞬「無理してない…?」
芽縷縷「…………………すいません」
瞬「芽縷縷くんが快適に過ごせればそれでいいからね、だから無理しなくてもいいんだよ?」
芽縷縷「違うんです………僕……障害を持ってて……それで…………」
瞬「話たくなかったら無理はしないで…でも話してくれるなら真剣に聴くよ…」
芽縷縷「聞いてほしいです……」
芽縷縷くんがギュッと手を握った。
瞬「うん、自分のペースでいいからね」
芽縷縷「あの………僕………コミュニケーションがすごく苦手で……一人でいたいんですけど…一人じゃ何もできなくて……友達もできたことがなくて……僕がいると…空気が悪くなるって言われて…だから僕のために普通に接してくれて…嬉しくて……えーと………なので…また…教えてほしいです……」
俯きながらそう言った。
言葉は拙いけど…言いたい事は伝わった。
瞬「いくらでも…何回でも教えるよ、君が成長できるように僕も手伝うね」
芽縷縷「ありがとう…ございます…」
最近の若い子も苦労しているんだな。
世代が違うと、若い子の悩みを理解しにくいのかもしれない。
僕が少しでも力になれたらいいけど。
華愛「あれ…弟…なんで」
あれ…?
芽縷縷「あれ…おねちゃん…」
あれ…面倒なことになったかもしれない。
夏なんで怖いこと言うね?
スゥーフゥー。
怖い。




