ただ、友として
本日4話目の投稿です。これにて完結となります。
「ヴィルヘルムの息子リアムとソフィアの婚約は認められないと?」
サミュエルは手元のヴィルヘルムからの書簡を臣下達との会議の最中、机に叩きつけた。
手紙の中身はヴィルヘルムの継嗣の婚約者探しで、娘のソフィアを嫁してもらえないかというものだった。
「当然でしょう。ソフィア様は我々の希望の女神。イェルドがその実力を見せつつある今、王……今は公爵でしたな——にする事はできないとしても、腐朽の果実などに嫁がせることなど民が許しません」
「庶子とはいえ王が認めた継嗣だぞ! 問題あるまい!」
「ただの庶子じゃない。赤狼の悍婦と宰相との不義の子で王の血を引かないという噂のある、極めつけの腐朽の果実だ! いつまで継嗣として扱われるかわかったものではない!」
ヴィルヘルムには返しきれない恩がある。
だが公爵として、臣下達の反対を振り切ってまで、その婚約を押し通すことは出来なかった。
フォルトル教の教えは広く染み渡っていて庶子に対する風当たりは強い。
まして王に似ておらず父親の側近とよく似た子であればなおさらだ。
断腸の思いでヴィルヘルムに断りの手紙を書き、せめてメルシア王家の王権を強められればと、ヴィルヘルムの従兄弟のテオドールとソフィアの婚約を整えた。
それが大きな間違いだったと気がつくのはソフィアが王立学園に入り、婚約者と揉めた末に上級生の卒業パーティーで婚約破棄騒動を起こされた時だ。
だが、それも運命神に定められていた道筋だったのだろうか。
リアムはその不遇の立場を逆転させ、サミュエル達のお膳立ての必要もなく、ソフィアと想いを交わして結婚し、ヴィルヘルムから王位を継いだ。
その後生きる気力すら無くしたように、自分を見失い、ただ毎日中庭のベンチに座るヴィルヘルムを見て、サミュエルは今回こそ彼を本当に支える時だと思ったのだ。
ソフィアとリアムとの結婚を求められた時はベルニカ公爵という立場に縛られていたが、奇しくもイェルドに公爵位を譲って只人になっていた。
ただのサミュエルならば、ヴィルヘルムを友人として全力支えられる。
だから彼を誘って旅に出た。
そして、彼が望むのならば相棒として地獄の果てまで付き合おうと思っている。
兄との対峙で相当疲れていたのだろう。酒盃を持ってうとうとしはじめたヴィルヘルムの手からそれを取って机に置き、風邪をひかないように毛皮をかけてやる。
そして一人、暖炉の炎を見ながら手酌でもう一献傾けた。
ここは暖かくて、飢えもない。
ベルニカの民も飢えて死ぬ事はほとんどなくなった。穀倉地帯が領土に入り、連合王国の各国でも食糧を融通し合えるようになったからだ。
「いい時代になったよ。ヴィル。ありがとうな……」
そう独りごち、サミュエルは手元の美酒を飲み干した。
燃え尽き王の再燃 完
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カクヨムで開催中のコンテストに参加中ですので、ひとまず完結となります。
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