宝石に相応しい美女
こんな時間に更新で申し訳ありません。
オークション終了後、しばしボックス席で待たされた二人は競売人の元へ案内された。
「大変お待たせいたしました。実は先ほどお客様と競り合っていたお客様がどうしてもディアーラの珠玉をお譲りいただけないか、交渉してもらえないかと粘られまして……」
「寝言は寝てから言えと言っておけ」
当然譲るわけがない。にべなく返答するサミュエルに萎縮するように男は白髪混じりのブルネットを下げた。
「もちろんそう伝えました。こちらは最も高値をつけたお客様の物でございます」
サミュエルが主になって落としたのは明白なのに、競売人の銀縁眼鏡の下の笑み含んだ視線はじっとりとヴィルヘルムにまとわりついて離れない。
居心地の悪さを覚えながらもヴィルヘルムは切り出した。
「まずは商品を見せてもらおうか」
男が視線を流すと用心棒がディアーラの氷華と青磁の皿を持ってきた。
「こちらで間違いないか、ご確認ください」
サミュエルは宝石を手に取り、色々な角度から観察し、灯火に透かしてそれが間違いなくディアーラの氷華であるか確認している。
ヴィルヘルムも青磁の皿を色々な方向からじっと見て、軽く叩いて音を聞いた。
聞いたが何も分からない。
実のところ、叩いたのは兄がやっていたのを見たことがあるからやっただけだ。
確認している体が大事なのである。
そんなヴィルヘルムの体たらくをよそに、サミュエルはしっかりと真贋を判別し、小さく安堵の息を漏らして言った。
「ああ、間違いない。偽物だったら叩き斬ろうかも思っていた」
「では、お支払いを」
財布を取り出しながらも、サミュエルは支払いを止めて男に尋ねた。
「ところで、この宝石を飾るに相応しい美女は扱っておらんのか?」
「は?」
サミュエルの言葉にピンときてヴィルヘルムもそれに乗る。
「本当は、夜の相手をしてくれる奴隷を買いに来たんだ」
「……それはそれは。私のコレクションでよければお客様にお似合いの黒髪に琥珀の瞳を持つ美女をお売りすることは可能ですが」
男がこちらに向ける視線の粘度が増した。
「なぜ似合いなんだ?」
「黒髪は好かん。だいたいこの宝石を飾るならディアーラの女こそふさわしいだろう? ディアーラの氷華だぞ」
「ごもっともでございます」
頭を下げた競売人は、残念そうに続けた。
「ただお客様のような見事な金髪のお方には、黒髪の奴隷がお似合いだと思っただけですので! 深い意味はございません」
サミュエルはその提案を跳ね除けた。
「我々が欲しいのは、ディアーラ美人だ。お前の手垢のついた女じゃない」
「申し訳ございません! 金髪の男ならご用意できますが」
「男が必要に見えるか? 女っ気が欲しいといっとるんだ」
演技とは思えない真剣さで言うサミュエルに苦笑しながらヴィルヘルムはそれを引き継いだ。
「いないなら仕方ない。もし出品されるようならすぐに連絡をよこせ。言い値で買おう」
「はい! もちろんでございます!」
男に手を握られて、ヴィルヘルムは反射的にそれを振り払う。
「支払いを」
取り繕うように言い、支払いを済ませて二人は宝石と青磁の皿を手に入れた。
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