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燃え尽き王の再燃  作者: オリーゼ


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元王と元公爵皿を洗う

カクヨムで開催中のMFブックイケオジ小説コンテスト参加中の作品です。

本日(7/21)もう1話更新予定。

 大陸制覇を目論んでいたノーザンバラ帝国に対抗するため、ディフォリア大陸の西部小国群がまとまり一つの国となったメルシア連合王国。

 その初代国王である賢征王ヴィルヘルム・ブリッツ・トレヴィラス。

 ノーザンバラと国境を接する公爵領の最前線で、帝国の顎を押し返した辺境の雄。軍神との誉れ高いサミュエル・ベルグラード。

 二人はその地位を若く優秀な後継に譲ると表舞台から華々しく勇退し、悠々自適な隠居生活を送っていた。

 ……はずだったが、今、二人は海を渡った新大陸リベルタにある連合王国統治領の高級娼館で皿を洗っていた。


「どうしてこの俺が! 皿洗いなんてやらなきゃなんないんだ! くそがよ! エリアスの狷介! 腹黒! あいつのカーチャンでべそ!」

「どうしてって、お前がこしらえた借金のせいだろ。あと母上への悪口はやめてくれ」

「おっと失礼。そういやお前、あの陰険悪辣顔整いおじさんの弟だったな!」

「おじさんって、同い年だろ?」

「俺は溌剌元気なアラフィフであいつは枯れた五〇代の初老! 全然違いまーす! ばーか! お前のカーチャンでべそ!」

 子供じみた罵声を響かせながら乱暴に皿を洗い、水を飛び散らさせるサミュエルをヴィルヘルムは嗜めた。

「もう少し丁寧に扱った方がいい。多分、一枚割っただけで借金が倍に膨らむ」

「ふん、こんなヒビだらけの器が高いものかよ」

「兄貴の好きそうな東方の青磁だ! 高いに決まってるだろ」

 兄エリアスはノーザンバラの謀略が発端となり二十年間、野にくだった。リベルタで奴隷から成り上がって巨万の富を築き、紆余曲折の末、今は大公として連合王国の一地域を治めている。

 奢侈を好むわけではないが身の丈に合った贅沢を好む男だ。

 そして財力という彼の身の丈は頭抜けていた。

「はーん。そんなに稼いでんなら俺らを無償で歓待するもんなのに、ごうつくばりのシャバ僧め!」

 この辺りでサミュエルの話がエリアスへの恨み言でループする。

 先程やらされた草むしりの時も手のひらサイズの芋虫に雑巾を引きちぎるような悲鳴をあげて『こんな化け物、俺の庭には存在しない‼︎』と毒づいたサミュエルは、似たような悪口を吐き捨てた末にひとくさり同じ話をした。

 その時に兄の行動をフォローして、怒られた記憶も新しい。

 察したヴィルヘルムは機先を制して先に言い添えた。

「そうだな。ここは兄貴がオーナーの娼館だ。特別料金でご案内しますと支配人に言われれば、割引して歓待してくれると思うよな」

 サミュエルからしたら嵌められたという気持ちが強いのもわかる。兄が自分達に罠を仕掛け、通常の倍支払う羽目になっているのは事実なのだ。

 だがヴィルヘルムの愚痴スキップ作戦は空振りに終わった。

「それよ! 前にも首都のあいつの娼館で飲んだんだが、その時もな……!」

 結局、この男、話したいことを話し、愚痴りたいことを愚痴り、怒りたいことを怒るのだ。

 というか、前にも引っかかったことがあるのか。

 うんざりとした気持ちですすいだ皿を拭いていると、サミュエルが突然、胴間声を張り上げた。

「おい! 聞いてるのか?! ヴィルヘルム!」

「うわっ!」

 突然の大声に驚いて、手に持った皿に力が入る。

 儚い青磁の皿はお約束通り、ぱきりという音と共に手の中で半分に割れてヴィルヘルムは台所にしゃがみ込んだ。

お読みいただきありがとうございます。

男娼王子、NTR王子のスピンオフ新シリーズになります。過去作はあらすじに貼ってありますのでご興味もっていただけましたら合わせてお読みいただければ幸いです。

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