表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界異能譚  作者: 幸田啄木鳥
虎擲竜挐のベルセルク

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/56

哀れな道化



 エイドの対峙するその男。

 金髪のいかにも王族といったような赤いフォーマルマントを身につけ、豪華な装飾を付けた青基調のジャケットに提灯ズボンを履いているその男こそが、スカムバグ・グランデベントである。

 しかし奴の目は明らかに正気の目ではない。


「……しかしよく"俺"だとわかったな。貰い物の赤眼でも、鍛えれば成長するわけか」

「さぁ、どうだろうね?」

「……しかしいくら成長しているとて、貴様は所詮"破砕"の一幹部に過ぎないがな……」


「俺が今人形にしている"コイツ"も、哀れな男だった。利権を求めてくだらない立ち回りをした結果、俺に操られるだけの人形になってしまった。コイツの意識は消え失せて、今やどこにも存在していない」

「……」

「……何も言わんか。コイツは相当嫌われていたらしいな」

 エイドは空中に浮かぶその男との間合いを測っている。"スカムバグ"を警戒すると言うより、それを操るカルモ・アモーレの力を警戒しているようだ。

(……コイツが急に現れたって事は、どっかで見ている可能性が高いって事だ。常に……警戒しなければ)

 エイドはひとまず、懐からナイフを取り出して即座に"スカムバグ"に投げつける。しかし奴はそれを指で挟んで容易く止めてしまう。

「やめておけ。お前の攻撃程度俺なら容易く止められる」

「……」

 "スカムバグ"はナイフを投げ返す。

 それはエイドの投げた速度とは比べ物にならないほど速く、鋭くエイドの腹部を貫く。

「がっ!」

 エイドは血を吐き、膝をつく。腹部にはとんでもない大きさの穴が空いていた。

(……なんて速度、なんて威力! 一瞬で……こんな……!)

 耐えきれず、エイドはその場に倒れ伏してしまう。

(……く……そ……視界……が……暗く……)

(……ああ、クソッ! こんな所で……こんな……)

 そのまま、エイドは意識を手放した……。


「……………………ククク。稟賦(ひんぷ)に恵まれ、数多の異能の力を学び、または教え育ててきた……。赤眼族の今を作ったとも言える、この俺の前に! 貰い物の力など通用せんのだ……」

 一人で高笑いする、カルモ。

 しかしそのカルモ───というより彼が操る"スカムバグ・グランデベント"に対して攻撃を行う者がいた。

 その男は背後から現れ、"スカムバグ"に対して一閃。手に持つその剣は刀身が鋭く長く、それでいて美しい。剣の柄には羽模様。光を浴びて、爛々と輝いている。

 銀の短髪が風に揺られて、まるで神だとでも言わんばかりに、沈みゆく太陽が差し込み、後光となりて男を輝かせる。

 敵を見据えるその眼には、赤い瞳が輝いていた。

「……お前はっ!? 何故ここがわかった!!?」

「……可愛らしいお嬢さんがいたもんでな。悪い男に襲われては事だと思って、別の所から監視していれば……矢張り悪い男に捕まりそうになっていた」

「……その程度の理由ではあるまい! しかも彼奴は男だぞ!」

「関係ないねぇ。だって別に俺は身体に興味があるわけじゃねえもーん。俺が興味あるのは……人の笑顔だからさ」

 男はカルモに剣を向ける。

「……両親のため、仲間のため」

(そして何よりアイツのため)

「お前は生かしておけないのさ。赤眼族アモーレ家の面汚し。唯一無二にして最悪の汚点」

「……フン。貴様ら赤眼族の愚か者どもが、エルファニアなどという小国の一部になるなどと言わねば、俺は今頃歴史上の人物で終わっていただろうさ」

「……クソジジイが。いつまでも終わった事で拗ねて凹んでんじゃねえよ!」

「小僧が、言わせておけば!!」

 "スカムバグ"に剣を抜かせ、カルモは男に向けて振らせる。男は剣を避けて、しなやかな動きで華麗に背後に回り込むと、剣を使わずに蹴りで"スカムバグ"の背中を穿つ。

「ぐうっ!」

「人形に斬られるほどやわじゃない」

「……ただの人形と思うな……コイツは曲がりなりにも"破砕"のリーダー。お前如きがどうこうできる存在ではない」

 "スカムバグ"が動く。

 男が構える。男の視界に映るのは、無数の剣の幻影とその中を動き剣を前にして突進する"スカムバグ"。

(速い!)

 男は赤眼を煌めかせ、無数の剣のうち本物を瞬時に見抜き、自らの持つ剣を前に構えて防ぐ。しかし突きの威力にたまらず吹き飛び、後方のビルに激突してしまう。

 そのビルに人がいなかったから良いものを。窓ガラスを破り、オフィス内をぐちゃぐちゃにしながら転がり込む。怪我なし、被害者なし。夕焼けの奇跡である。

「……後で弁償だな。リーダーに怒られる……か」

 "スカムバグ"がゆっくりオフィス内に入ってくる。

「怒られる事はないさ。どのみちお前はここで死ぬ。何故なら、コガラ。お前は俺に殺されるのだから」

 "スカムバグ"はビルに瞬時に近づく。カルモは"スカムバグ"越しに、壊れた窓からその男に語りかける。男の名前はコガラというらしい。

「……」

 コガラは剣を構え、"スカムバグ"を睨みつける。


「待て小僧。貴様ではこの男には勝てん」

 突然、声がこだまする。

 怪訝で厳かなその声は、上層から聞こえてくる。はっきり聞こえる分相当大きい声であるのがわかる。

 コガラはその声に注目し、そして何かを察知したのか窓から離れる。そうしてコガラが離れた所に、凄まじい風が"スカムバグ"を襲う。

「この風は……!?」

 風を放ったその男は、上層から勢いよく落下してきて、その勢いを利用して両足を突き出すような姿勢で"スカムバグ"に激突した。"スカムバグ"はたまらず、地面に向かって落下していく……。それは目視では確認しづらいほどの速さだった。


「……貴様の相手はこのエオリカが引き受けよう」

 現れたのは……エオリカであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ