52 家具を揃える
みなさんおはようございます。ヒナタです。
床で雑魚寝をしたせいで腰が痛いです。
やっぱりベッドで寝た方がよかったな。
でもベッドは移動式マイホームの中だから、一度無限収納から取り出さないといけなかったんだよね。
さすがに人がいないからといっても街中で移動式マイホームを召喚したくない。
だから多少の犠牲はしょうがない。私の腰くらい自然回復スキルですぐに治るだろう。
カレンとシャルもまだ寝ているから、私は朝食の準備でもしようかな。
腰も痛いし、簡単にパンと目玉焼きでいいや。
あ、でもテーブルがない。
家具がないと不便だな。生活に必要なものは最優先で買いに行かないと。
とりあえず簡易として土魔法でテーブルとイスを作る。
耐久力はあまりないと思う。あまり魔力を込めて頑丈に作ってしまうと、後で処分に困ってしまう。
「これでいいかな」
テーブルの上にパンと目玉焼きを置いてから2人を起こしに行く。
「ほら、2人とも起きてー」
2人の肩を揺らして起きるように促す。
カレンが「あと5分……」とか言っているけどそんなのは許しません。
強制的に起こしてイスに座らせる。
カレンは目を瞑りながら器用に食べている。
そして朝食を食べ終えて、すぐに出かける準備をする。
いつも通りのワンピースの私服に着替えて家を出た。
3人で家具が買えるお店に向かう。
カレンが言うには、この世界にもニ◯リみたいなお店があるようなので安心だ。
これでなんの不便もなく家具を揃えられそうだ。
「とりあえずベッドにダイニングテーブルとリビングテーブル、イス、食器棚、食器類とかかな」
料理道具はあらかた無限収納にしまっているから、優先的に欲しいのはそれくらいかな。
欲を言えば、冷蔵庫とかも買っておきたいな。
そう考えれば、王都のゲイル商会で買っておけばよかった。
あの時は家を買うことなんて考えていなかったからな。
最初にベッドを見に行く。
移動式マイホームと違って1人で寝られればいいから、シングルベッドを3つ買うことにした。
私は少し大きめのベッドを買ったけど。もしかしたらサーシャが泊まる可能性もあるからね。
次にお店に並べられている複数のテーブルを3人で選んで決める。
ダイニングテーブルは少し大きくてもいいけど、リビングテーブルは小さくてもいいかな。
マイホームの内装に合うように、木製の茶色いのを選ぶ。
食器棚も少し小さめで大丈夫かな?
いや、今後のことを考えて大きめのを買っておこう。
食器は普通に5人分くらいのお皿とかコップがあればいいだろう。
あとお風呂用にバスタオルも余分に10枚くらい買っておく。
「こんなところでいいかな……」
無限収納に全部しまうのもいいけど、怪しまれそうだしベッド以外の大きい家具は後日届けてもらうことした。
そろそろ帰ろうかと思って家具店から出ようとしたところで、ソファーが目にいった。
「そうだ! ソファーも欲しい!」
忘れていたよ。
リビングにソファーをおいてゆっくりもしたい。
追加でL字型の5人くらいが座れるソファーも合わせて購入する。
「いやー、買った買った」
余は満足じゃ。
……あ、一応カレンとシャルもお金を出してくれたよ。
2人のベッドと布団以外は結果的に私のものになるから遠慮したけど、頑なに譲らなかった。
折角の2人の厚意を無碍にするわけにもいかないので遠慮なく頂くことにした。
これで目的の家具も買えたことだし、ニ◯リを出て昼食を食べるために食事処に向かった。
なんだかんだ外食するのって久しぶりのような気がする。
最近は宿か手料理か貴族の屋敷か王宮かだもんね。
いや、後半2つはおかしいだろ。冷静に考えればただの冒険者ではありえないんだよね。
かなり恵まれた生活をしているのを改めて実感する。……本当に恵まれているのか?
そして定食屋らしきお店に移動し昼食を食べる。
「明日からは冒険者ギルドで依頼を受けるか?」
「そうだね。もうやりたいことも終わったし、仕事をして稼ごうか」
「うん。結構お金使っちゃったから働かないと」
3人で明日の予定を話す。
私と違って2人は困窮しているわけではないけど、お金を稼ぐ必要がある。
それに最近は3人での共闘戦を全くしていない。
だからパーティーとしてしっかり活動するべきだ。
そして昼食も食べ終わって、次は冷蔵庫が売っている魔道具売り場に行った。
ゲイル商会ほどではないが品揃えはしっかりしている。
目的の冷蔵庫売り場に一目散に向かう。
他の魔道具を見るとつい要らないものまで買ってしまう可能性があるからね。
「これ、すごくいい!」
なんとびっくりゲイル商会でもなかったものが売っていた。
それは2段になっている冷蔵庫だった。
上段が冷凍庫になっていて、下段が冷蔵庫なのだ。
これはすごくいい。
マイホームにはぴったりだ。
すぐに店員を呼んで購入を決めた。
その後はやることも無くなったので、久しぶりにセレナに会いに行くことになった。
つまり冒険者ギルドね。
冒険者ギルドに入ると、いつも通り視線を集める。
他の男性冒険者がヒソヒソと私達を見ながら話している。
やっぱりこれは慣れないな。
もし私が男だったらカレンとシャルを連れてのハーレムだからね。
そりゃ、男どもはこの状況を羨むだろう。
あ、そもそも男だったらこのパーティーを組んですらいないか。
とりあえず私は単独で受付にいたセレナのところに向かう。
まだ私に気が付いていないセレナに向かって声を掛ける。
「セレナさん!」
セレナは後方から声をかけられて私の方を振り向く。
「あら、ヒナタさん!」
感動の再会に2人で抱きしめ合った。
女性を抱きしめるのなんてサーシャ以外ではほとんどないからか、大人の女性であるセレナからは不思議といい匂いがしてくる。
それにセレナの胸の感触が……。げふんげふん!
知らなかったけどセレナも結構大きいみたいだ。
抱きつかれた時に私の胸とは比較にならないほどの弾力があった。
いつか一緒にお風呂に入る機会があったら拝ませてもらいます。
「帰ってきていたんですね!」
「そう、昨日帰ってきたの!」
「これから依頼でも受けられるんですか?」
「違うよ。セレナさんに会いにきたんだよ」
お、セレナさんが喜んでいるのか顔が少しニヤけている。
ウルレインを離れて1ヶ月くらいしか経っていないけど、王都での出来事が濃密だったからか長く感じた。
セレナも何も変わっていなくて安心だ。
「あれ? カレンさんにシャーロットさんまで一緒なんですね」
気がつくと私の後ろにはカレンとシャルが立っていた。
そうか。セレナは2人とパーティーを組んだことを知らないんだよね。
ウルレインではワイバーン討伐に臨時で組んだだけだし。
「王都で偶然再会してね。紆余曲折あってパーティーを組んでいるんだ」
「そうだったんですか! Bランクの冒険者パーティーがこの街にいてくれたら安心ですね!」
ウルレインではAランク冒険者がいないから、実質私たちが最高位の冒険者になる。
ここなら私たちのことを知っている冒険者も多いから絡まれる心配もないだろう。
私の場合は初日に威圧スキルで何人かの冒険者に脅しもしているからね。
そのおかげか今は平穏な生活が出来ている。
「よかったら皆さんでお茶でもいかがですか?」
「いいね。行きましょう! カレンとシャルもいいよね?」
「ああ、いいぜ」
「はい。是非」
セレナからお茶に誘われたので、4人で冒険者ギルドの近くにある喫茶店に入った。
セレナの仕事は大丈夫かなと思ったけど気にしない。
「王都でそんなことがあったんですね〜」
セレナから王都での出来事を聞かれたので、色々答えた。
ゴブリンキングの討伐に始まり、トロールの討伐、クソ貴族のことそしてタラサの街でのこと。
タラサの街で私が女神様扱いされていることは黙っていたかったけど、カレンがつい話してしまった。
カレンも「ヤベッ……」みたいな顔をしていたけど、セレナが笑ってくれたのでよしとする。
一応秘密にしておくように口止めはしておいた。
どこから情報が回るか分かったもんじゃないからね。
それからセレナの話を聞くと、私がウルレインからいなくなった後も冒険者ギルドがかなり平和だったみたいだ。
どうも私が初日に冒険者を脅したものだから、新人冒険者を脅す輩がいなくなったらしい。
先輩冒険者の新人冒険者への脅し行為は、前からギルド側でも苦慮していた案件だったらしいので感謝された。
知らないところで私は新人冒険者を助けていたみたい。感謝せよ。
そして1時間程度話し込んだところで、セレナも仕事があるため喫茶店を出て、私たちはマイホームへと戻った。
各自で、買ってきたベッドを部屋に置いてからお風呂に入る。
夕食も食べてベッドで眠りについた。
もちろん寝心地は最高だ。
今日はいい夢が見られそう。




