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51 夢のマイホーム


 みなさんおはようございます。ヒナタです。


 朝はサーシャに起こされました。

 目を開けたら天使がいたから天国にでも昇天したのかと思いましたよ。


「おはようございます。ヒナタお姉ちゃん」

「おはよう、サーシャちゃん」


 その後はカレンとシャルも起こしてフィリップを含めて朝食をいただきました。

 そしてその場で私は口を開く。


「土地を買うのってどこに行けば買えますか?」


 私はフィリップに尋ねた。

 ウルレインに帰ってくる時にみんなに話した内容だが、私自身この世界で土地を買うのはどこ行けばいいのか分からない。

 であればこの街で一番偉い領主に聞けば確実に分かる。


「なんだヒナタさんは家でも建てるのか。それなら不動産仲介所に行くといいよ」


 前世と同じような場所があるみたいだ。

 でも私みたいな子供が行っても大丈夫かな。

 冷やかしだと思われないかな。ってこれはフラグになりそう……。


「分かりました。ありがとうございます」

「私も行きます!」

「え……?」


 突然サーシャが立ち上がって言ってきた。

 え? サーシャも来たいの?

 なにも面白いことは起きないと思うけど……。


「そうだな。ならサーシャも連れていってくれないか?」

「……あ、はい。構いませんよ」


 よく分からないけれど、サーシャと一緒なら癒しになるから私に損はない。

 ちょっとしたデート気分すら味わえる。


「なら一緒に行こうか」

「はい!」




 フィリップからの地図に従って、4人で不動産仲介所に向かう。


「不動産仲介所なんて初めて入ったぜ」

「私もです……」


 冒険者が不動産仲介所に用事なんてそうそうないよね。

 宿に泊まっているのが多い冒険者にとっては行く必要もなさそうだし。

 私なんて存在自体初めて知ったからね。


 とりあえず受付にいたお姉さんに声を掛ける。


「あの、土地を買いたいんですけど」

「……親御さんはどこかな?」


 おっと、やっぱり聞かれるのかよ。見事にフラグ回収ってところだな。

 確かに私は背も小さいけど、そこまでではないと思っている。

 150センチはあるよ。絶対に。

 もしかしてあれか? 顔が童顔だからか?


「はっ!!」


 受付のお姉さんがサーシャを見た途端、急に目が見開き、そして席を立ち上がり奥の部屋に走り込んだ。

 え? 急に何?

 数分待つと、奥の部屋から30代前半くらいの綺麗なお姉さんがやってくる。


「あら、サーシャお嬢様でありませんか」

「お久しぶりです」


 サーシャを見る綺麗なお姉さん。

 綺麗なお姉さんが私の後方にいるサーシャを見て私を信用したのか椅子に座って話し始める。

 サーシャが来てくれて助かった。

 

「サーシャお嬢様もいるから信用できそうね。私はギルドマスターのクルシャよ」


 やっぱり冷やかしとでも思われたのかな。

 でも疑うような目で見られてもしょうがないか。

 見た目は幼いからね。見た目だけは。


「それで土地を買いたいんですけど」

「えぇいいわよ。とびっきりに広い土地を紹介してあげるわ」

「いや普通のでお願いします」


 大きな土地はいらないのよ。

 家もそこまで大きいの建てるつもりもないしね。


「あらそう? 何か場所とかの希望はある?」

「そうですね。普通の家が一軒建てられて、小さな庭が確保できるくらいの土地がいいですかね」

「それだったらいくつか候補があるわ。ちょっと待ってて」


 私の希望に合わせて、クルシャが地図を取り出して空いている土地を探しているようだ。


「ここならどうかしら?」


 指が差された場所は、街中にポツンと空いていた土地だった。

 周辺には住宅もあり飲食店もある。


「あ、できれば住宅街じゃなくて周囲に家がないほうがいいですかね」

「変わった子ね……」


 クルシャが首を傾げる。

 不思議そうな顔で私を見てくる。

 でも家を魔法で建てるから、なるべく人がいないほうが目立たなくて済むんだよね。


「なら、こことかは?」


 提示された場所は周囲に家もなく街の少し外れたところだ。

 でも、冒険者ギルドからそこまで離れている場所でもないので不便ではなさそうだ。


「いいですねここ。実際に行ってみても良いですか?」

「そう。ならアルナにお願いしようかしら」

「あ、はい!」


 最初に対応した受付のお姉さんが緊張した面持ちで返事をした。

 それじゃ、早速見学に行こう!


「なあヒナタ、なんで街の外れの土地にしたんだ?」

「だって、魔法で家を建てるんだよ? 目立たないようにするにはそれしかないじゃん」


 2人は納得したような感じだ。

 しかしサーシャは私の隣で首を傾げて不思議そうな顔をしている。

 何故ならサーシャはマイホームの存在を知らないからだ。


「こちらになります」


 案内された場所に辿り着く。

 周囲に住居もなく、人通りも少ないようだし落ち着いた場所だ。

 やっぱりこの土地はいいかもしれない。

 ゆっくりできそうな環境だ。


「いいですね。カレンたちはどう思う?」

「え、良いと思うけど」

「わ、私も良いと思います」


 2人の許可も降りた。ならここに決めよう。


「ならここでお願いします」

「はい、では契約書を準備しますので一度仲介所に戻りましょうか。家の建築はどうなされますか?」

「すでに手配していますので遠慮します」

「そ、そうですか……」


 家は私が建てますからね。

 でもアルナに教える必要はない。

 適当に濁して答えるのが正解だろう。


 不動産仲介所に帰ってきて、アルナが土地売買契約書と土地権利書を持ってくる。

 そしてそれに私がサインをして契約が成立した。


「お支払いは一括ですか? それとも分割にしますか?」

「一括でお願いします」


 私はギルドカードをアルナに渡す。

 ギルドカードはかなり便利だ。

 前世のクレジットカードと同じようなものだ。

 でも、預金額の上限までしか使えないことになっている。

 なので預金額が充分にないとお支払いができないようになっている。

 前世とは少し違う仕様だ。


「はい、確かに。それではこの契約書は権利を証明するものになりますので、大切に保管しておいてください」


 私は無限収納に契約書をしまう。

 これで土地をゲットだぜ。

 あれ、でも少し気になることがある。

 土地や建造物の所有者が私であることを証明するには、権利書だけでなく第三者にも公示する必要があるはずだ。


「あの質問なんですけど、土地と建物の登記申請とかってどこでやるんですか?」


 そう登記申請である。

 前世だと法務局とかに行って、土地や建物の所有権保存や移転登記が必要だ。

 前世で祖父の家を相続登記するにあたって父親と一緒に手続に関与したことがある。

 申請にあたって司法書士への依頼料や登録免許税を徴収されるため、かなり高額だった記憶がある。

 そのようなこともあって、もしかしたらこの世界でも同じような手続が必要なのではないだろうかと思って質問をした。


「とうき? なんでしょうかそれは……」


 はい。この世界には登記がないようです。

 それなら大丈夫です。ありがとうございました。


「いえ、なんでもないです。気にしないでください」

「あ……はい」


 少しだけ気まずくなってしまったが、そそくさと私達は不動産仲介所から外へと出た。

 さて、先ほどのことは忘れて早速家を建てよう。


「ヒナタお姉ちゃん。これからは私もお家にお邪魔しても良いですか?」

「もちろん。でも、ちゃんとお父さんに許可をもらってからだよ?」

「はい!」


 私が購入した土地に辿り着き、早速家を建てるためにイメージをする。


「3人とも、ちょっと時間が掛かるけど待っててね」

「分かった」

「はい」

「え……何をするんですか?」


 サーシャが相変わらず不思議そうな顔で見ているが、あえて何も説明しない。

 驚いてくれた方が面白そうだから。


「さてと……」


 まずは土台を作るために土魔法で穴を掘る。

 土台ができたら、1階にはリビングルーム、ダイニングルーム、キッチン、トイレ、大きめのお風呂。

 2階には3人の部屋と客室としてもう2部屋ほど。そして一応トイレも設置しよう。

 あと、家の中央に螺旋階段を設置する。

 このようなイメージで次々と土魔法で家を造り上げていく。

 家を作成している途中にサーシャが後方で驚いていたが気にしない。

 そして建築を始めて数時間。ようやくマイホームが完成した。


「よし、できたよ!」

「なんですかこれは!?」

「え? 家だよ?」


 惚けるようにサーシャに言う。

 サーシャは目の前の現象が信じられないのか、口を開けっ放しだ。


「さ! 入ろうか!」


 4人でマイホームに入る。

 ちなみに外装は白にした。

 中に入ると、なかなかの出来栄えだ。


「こりゃすごいな」

「すごいです!」


 カレンもシャルも喜んでいるようだ。


「1階は基本的にみんなで共有するためのスペースだよ。2階にはカレンたちの部屋も用意したから」


 そう言って、螺旋階段を登り2階に行く。

 1部屋あたり8畳くらいの大きさにした。

 かなり贅沢だよね。

 客室は6畳くらいだけど。


「家具とかはあとで買いに行こう」


 魔法で作れないこともないけど、市販で売っているものが良いだろう。

 特にベッドは大きいのが欲しい。


「もう遅いから家具はないけどこの家で休もうか」


 サーシャを屋敷に送ってから、私達はマイホームに帰り雑魚寝をしながら眠りについた。

 明日は家具を買いに行こう。

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