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11 スパシーバ効果
「スパシーバ効果はあると思う人?」
予備校の授業が終わった後、講師の先生が言った。
この時期は、風邪をひく人が多いから気をつけるように。偽薬効果なんて当てにならないので、ひいた場合は速やかに医者にかかるように。
そういう注意勧告と共に、先生が私たちに聞いてきたことが、冒頭の問いだった。
正しくは、『プラシーボ効果』なのだけど、どうやら先生は素で間違えているようだった。
どうしたもんかと考えていると、最前列の席に座る男子が、躊躇いがちに口を開いた。
「せ、先生。それを言うならプラシーボ効果です。スパシーバは、ロシア語で『ありがとう』の意味です…」
先生は一瞬きょとんと呆けた後、耳を真っ赤に染めた。
「あ、ありがとう」
「い、いえ」
はにかみながらお礼を言う先生が可愛らしかった。男子も少し照れがあるのは何故だろう? 先生は、男の人なのに…。
「これがスパシーバ効果か…。尊い…」
私の横に座る、腐った友人が何事かを呟いた。
先生は教室から飛び出していった。耐えられなかったのだろう、色々と。
読んでくれて、スパシーバ!