12 Bボタン
不思議な光が空を覆った日、人類にあるものが備わった。いや、この場合「生えてきた」と言った方が正しいのだろうか。
それは、何かのボタンだった。
人体のうなじ辺りに、「ボタン」としか形容できないものができてしまったのである。
老若男女、赤ん坊にさえも、それはあった。何故できたのか詳細は不明だが、できてしまったのである。
突然理解のできないものが体にできてしまって、人々は狼狽えた。当然のことである。しかし、人は狼狽える生き物であると同時に、物事に慣れる生き物でもあった。
一か月も経った頃には、人類は落ち着きを取り戻していた。
「よく分からないけれど、別に悪影響みたいなものはないようだし、良いかなって」
隣の席の深花守もそう言って笑っていた。
だが、彼が笑い飛ばした日の、五限目の自習時間のことである。
いきなり、深花が胸を押さえて苦しみだした。
周囲はパニックである。俺も動揺しつつ、彼に話しかける。
「お、おい、大丈夫か?」
「う、うぅ」
苦しそうな深花。委員長は指示を出し、保健室に誰かを向かわせていたが、保健の先生が到着するよりも早く、事態は急転する。
深花が明滅しだした。
何を言っているのか分からないという顔をしているな? 分かる。俺だってそうなるだろう。しかし、事実だ。深花の体は、光ったりおさまったりを繰り返していたんだ。
ここで、俺は何処かで見たことがある光景だと感じた。しかも、一度だけでなく何度も目にしたことがある、と。
彼の背中を摩りつつ(どうすればいいのか分からなかったので、とりあえずそうしていた)、俺は考えた。
どこだ? 俺はどこで見たんだ?
そして、辿り着く。気付くと俺は、深花のうなじ辺りにあるボタンを押していた。
ポチっ。
その音と共に、深花の怪奇現象は止まった。彼の顔を見ると、ぐったりしているが命に別状はないようだった。
とりあえず一安心してから、俺の口をついて出た言葉は、
「Bボタンキャンセルって………。深花は進化しようとしていたのか?」
人類は、俺たちは、いったい何になったのだろう?
俺は、無意識の内に自分のボタンに触れていた。
そう、私たちもポ○モンと同じように、進化する生き物だったのだ!
なーんて。




