53
高校を卒業して1ヶ月が過ぎたある日、俺は刻星にある提案をした。
「つまり、今のパーティーから僕は脱退して海とパーティーを組まないか⋯そおいうことかい?」
目を瞬かせながら小首を傾げていた。
「そお言ったつもりだったが聞き取れなかったのか?」
刻星はスクっと立ち上がりリビングを出ていった。
少しして戻ってくると「リーダーには連絡を入れて許可は取れた。リーダーが今日中に手続きを終わらしてくれみたいだから明日にはパーティー申請をしに行こうか!」と満面の笑顔で言い放った。
「お、おい⋯そんなにあっさり許可がおりるものなのか?」
俺が誘ったのだがこんなに電話一本で許可がおりる事は無い筈なのだが・・
「元々リーダー達には今日付けで脱退する事は伝えていたから海の誘いがなくても脱退自体はしていたんだよ」
さらっとすごい事を言い放った刻星。
そんな事は小さい事だと言っているかの様に妄想の世界に入ってしまった。
「それに海が提案しなくても僕がしていたから気にしなくてい良いだ」
と俺とパーティーを組むのは決定事項だったようだ。
「お前には勝てなさそうだ⋯」ボソリと呟いた言葉は幸運にも聞こえていなかった様だ。
翌日、俺達は冒険者ギルドに来ていた。
「そう言えば海は本格的な冒険者登録はしていなかったんだね」
そお語る刻星に向けられる黄色い歓声と完全に悲鳴に近い声が上から前後から左右から聞こえてくる。
「そうだな、仮登録はしていたがちゃんとした登録はしていなかったな」
黄色い歓声・悲鳴を無視しながら答えた。
授業や従魔の申請にのみ使えるのが仮登録であり本格的な登録ではないため冒険者としては認められない。更にランクも適用外になっている。
更にいうなら学生でなくなった今の俺は仮登録もなくなっているのだ。
高校を卒業している俺は本格的な登録をしないと冒険者として活動出来ない。
そんな事を思い出していると受付に着いていた様だ。
「キ、鬼公子様!今日はどの様なご要件でしょうか?」
隣にいる刻星に声をかけた受付の女性はかなり嬉しそうにしていた。
「忙しい時に来てしまってすまない。実は隣にいる彼の冒険者登録と彼とのパーティー申請をしに来たんだ」
言われてようやく受付女さんは俺に気付いたようだった。
「そうでしたか、では手続きの書類をお渡ししますね」
とにこやかだがその声には驚いた感情が見え隠れたしていた。
受付側に備わっているのだろうか、引き出しを開けて書類を取り出そていると受付の奥から初老と思われる男性の職員がこちらに向かってきた。
初老の男性職員は受付女さんに二言三言話してから「お取り込みの所、大変申し訳ありません。刻星様に取り急ぎお話したい事があるとギルドマスターがお呼びになっています。ご足労願いますでしょうか?」と刻星に声を掛けてきた。
言われた刻星はあからさまに苛ついていると分かるように纏う雰囲気が変わった。
もろに当てられていない受付女さんは顔を強張らせている。いや白くなり始めていると言えば良いのか?
だが流石と称賛するべきなのか初老の男性職員は顔色を変えていなかった。だが額から頬にかけて汗が流れてはいたが。
パシッ
「やめろ」
刻星の頭をはたき雰囲気を霧散させた。
「刻星が申し訳ありません」と謝った後「ほら刻星、かなり急いでいる様子だから行ってあげろ。それと登録や申請は俺1人でも出来るんだから」
俺の言葉を受けて何か言いたそうだったが、渋々と動き出した。
しかし去り際に「久々にご飯を一杯飲むからね」と言われ俺は背中に嫌な汗をかく羽目になった。




