㊲
俺の返答に晴龍は⋯笑った
「あはははは、海君らしいね。刻星さんとの時間が大切なんて、とんだのろけ話をされるとは僕も思っていなかったな~」
さっきまでの殺気だった雰囲気を霧散させて言い放つ晴龍に離れたところで椅子に座っている刻星は面食らっていた。
「逆にこの力で世界征服とか言い出していたらどうするつもりだったんだ?」
俺の例え話に笑い出すのを必死に堪えて、目元だけ鋭くし返答した。
「そうだな〜、海君は殺したくないから四肢を切断して幽閉かな」
さらっと答えたにしては内容はとても穏やかとは言えないなかった。
「刻星は如何するつもりだった」
俺は冷静に問いかけてはいるが此奴ならやると言えばやれる事は分かっているからか内心は冷静になんていられなかった。
「刻星さんかい?殺すよ。後の事を考えたら殺しておいた方がいいからね」
分かっていたがやはり予想と同じ返答をしてくる晴龍。
だからこそ俺が晴龍に言った言葉は⋯「だろ~な。だからお前は腹黒ゲス野郎なんだよ」だった。
一連の話を聞いていた刻星は納得がいかなかったのか不満げに問いかけてきた。
「ちょっと待ってくないかい。海は僕が彼に殺されると思っているのかい?あまつさえ愛する人の四肢を切断させるとそお思っているのかい?」
「刻星思っている、思っていないに関わらず龍宮院 晴龍はそれが出来てしまう。
⋯⋯だからこそ自他共に認められ、名実ともに【龍帝】という二つ名が付いているんだ」
俺の言葉を聞くや刻星のオッドアイの目元に涙が溜まりだした。
踵を返し自身の寝室に駆け込んでいった。
「⋯」
俺は引き止めることも追うこともしないまま、ただ刻星が出ていったリビングの扉を見詰める事しか出来なかった。
恐らく先程の刻星と同じ様な姿になってしまっているのかと思う事しか出来ない俺自身に嫌悪する。
「海君すまなかった。今日のところは僕は帰る事にするよ。…⋯また明日、刻星さんには謝る」
それだけ言い残し晴龍は俺達の家から立ち去った。
後に残ったのは重苦しい空気と双方ともに無力だと自覚した事だけだった。




