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久野市さんは忍びたい  作者: 白い彗星
第二章 現代くノ一、現代社会を謳歌する!

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第63話 文明の利器ってやつですね!



 久野市さんへのプレゼントを買いに来た先で、その久野市さんと合流してしまった。

 話の流れで、俺たちは一緒に買い物をすることに。


 一階の食品売り場へと、移動する最中……


「しかしぃ、木葉っちもやるねぇ」


 俺の隣に移動してきた火車さんが、こそっと俺に耳打ちをする。


「やるって、なにが」


「だってよぉ、こんな美少女三人も侍らせちゃってさ。両手に花って言葉があるけど、こりゃ両手から花がこぼれ落ちちゃうんじゃねえの」


「んぐ……」


 両手に花だ、と楽しそうにつぶやく火車さん。

 自分で美少女とか言うかね。いや、確かに火車さんも一般的に見れば普通に……かなりかわいい部類に入る。


 だが、俺は一度火車さんに殺されかけている。

 その経験のせいか、火車さんのことはちょっと苦手になっている。


「だから、これは悲しい事故なんだよ」


「ふぅん。ま、深くは聞かねえけど。

 んでも、ちゃんと言い訳はしたほうがいいぜぇ。主が自分を放って他の女とあいびきなんて、心中穏やかじゃないだろ」


「あいっ……そんなんじゃないって」


 今前を歩いている久野市さんと桃井さんは、仲良さそうに話している。

 出会った直後は不穏な空気だったけど、もう久野市さんは気にしていないように見えるが……


 火車さん、こんなんでもあの一件以降は、わりと協力的だ。今日のこともそうだし。

 その火車さんからのアドバイス。無下には、できないか。


「それで、なにを買うんです?」


 食品売り場につき、かごを取りつつ久野市さんが問いかけてくる。

 俺はカートを押してきて、それにかごを乗せつつ考えを巡らせた。


 食品を買いに来たなんてのは、桃井さんのでまかせだ。果たして、なんと答えれば……


「実は、お米がそろそろ切れそうでね」


 あっさりと答える桃井さん。お米とは、うまい言い訳だ。

 それなら、桃井さん一人で運ぶのは厳しい。俺……いや男の手を借りても不思議じゃない食材だ。


「なるほど。だから木葉っちを駆り出したってわけか」


 その意図を汲み取り、火車さんが桃井さんの言葉をフォローする。

 ナイスだ、火車さん!


 それを聞いた久野市さんは、納得したようにうなずいていた。


「あれ、主様それは……主様の持っている、けいたいでんわ、ですか?」


 久野市さんが、俺の手元を見て不思議そうに首を傾げた。


「あぁ、これは買い物専用の携帯、みたいなものだよ。

 ここに欲しい商品のバーコードを読み取れば、商品が登録されて……わざわざ人がいるレジに行かなくてもスムーズに会計が……」


「木葉っち木葉っち。それ都会に出てきたばかりの忍には、呪文みたいなもんだから」


「ばーこー……すむーず……?」


 いけない、説明に夢中になり過ぎて、久野市さんの頭がパンクしてしまったようだ。

 彼女はふらふらと体を揺らし、それを桃井さんが支えている。


 久野市さん、これを利用したことないのか。

 ま、俺も最初見た時は意味わかんなかったもんな。


「まあつまり、これを使えばいろいろ便利ってこと」


「な、なるほど……」


 説明を省きすぎた気もするけど、今の久野市さんにはこれだけわかっておいてもらえばいいだろう。


 そんなわけで、買い物開始。

 もちろんお米だけを買うのもあれなので、他にも必要なものがあったら買っていくことにする。


「わぁ、画面に商品の値段が表示されましたよ!」


「あぁ。バーコードを読み取れば値段が表示されて、登録された商品の合計金額が出てくるんだ」


「ほぇー」


 久野市さんは、初めて見る機械に興味津々だ。

 これまで近場で買い物をしてきた彼女も、これに触れるのは初めてだろう。


 というか久野市さんの場合、右も左もわからない状態だから店員さんに任せていた方が安心まである。


「これと、これも……」


「あ、私これー」


「いや火車さんまで……まあいっか」


 いつの間にかお菓子をかごに入れていく火車さん。

 なぜ自分のものまで……と思ったが、今日は火車さんに協力してもらったから……ささやかなお礼と考えればいいか。


 一通り買い物を終えて、レジへ。もちろん、お米も買うことは忘れてはいない。

 久野市さんがいつも行くであろう有人レジではなく、専用の無人レジへ。


 そして、登録していた商品を確認し、お支払いの画面へ操作し……バーコードを表示し、それを読み取らせる。

 ものの数秒で、会計は完了だ。


「……えつ、もう終わったんですか!?」


「そうだよ。慣れれば早いもんだよ」


「わぁ、すごい! 文明の利器ってやつですね!」


 今の数秒のやり取りがよほど気に入ったのか、久野市さんは目を輝かせたままだった。それにしても難しい言葉を覚えたものだな。

 なんにも知らない田舎っ子にいろいろ教えるのは、ちょっと楽しいかもしれない。


 あんまり機会がなかったけど、今後はこういうところにも積極的に連れてきてみようか。


「よっ、と」


「木葉くん、大丈夫?」


「はい、これくらい」


 桃井さんが買ったのは、五キロのお米だ。それを持ち上げる。

 不安そうな表情を浮かべる桃井さんに、笑みを向けて応える。


 これくらいは、全然苦にはならない。


「ごめんね、払ってもらっちゃって。あとでお金払うからね」


「いいですよ、これくらい……」


「だめです。こういうことは、ちゃんとしないと」


 専用レジでいっぺんに会計をしたので、桃井さんが買ったものや俺が買ったもの、それらは全部一緒になっている。

 全部一緒に払ったので、お金を払った俺が当然全員分払った形になる。


 俺としては、これくらい奢らせてもらってほしいのだが……

 桃井さんからしてみれば、そういうわけにもいかないのだろう。


 ともあれ、買い物は終了。お金は帰ってから払うということになり。

 さて、帰るとしよう。

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