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久野市さんは忍びたい  作者: 白い彗星
第二章 現代くノ一、現代社会を謳歌する!

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第47話 香織ちゃんに贈り物?



 さて、一通り状況の確認ができたところで解散となった。

 久野市さんが学校に転入してきた理由、火車さんが学校に通い続けている理由。それは納得できるもので、俺に危害が加わらないのなら否定する理由はどこにもない。


 火車さんは自分の家に帰り、久野市さんは俺の部屋に……居座ろうとしたが、桃井さんが自分の部屋に連れ帰った。

 ただ、近いうちに隣の後藤さんの引っ越し手続きが完了するので、終わり次第隣に久野市さんが移ってくるだろう。


 ……なんか、しょっちゅう押しかけられる未来が見えるのは気のせいだろうか?


「……火車さんに、桃井さん、か」


 俺はスマホの電話帳を開き、そこに登録されている二人の名前を見た。

 片やクラスメイトとして友達になったときにルアとも一緒に。片や代理とはいえ大家になったからアパートの住人として。それぞれ登録した。


 火車さんはともかく、桃井さんにはさっきまでの話は重たくはなかっただろうか。普通の一般人に、忍者とか殺し屋とか財産の相続とか。

 ま、今更考えたところでどうしようもないんだけど。


 桃井さんには、久野市さんを部屋に住まわせてもらっている恩もあるし、今度諸々のお礼をしなければいけないな。


「うーん、女の人が喜ぶものか……」


 大学生の女の人が、喜ぶもの。それはなんだろうと考えてみる。

 ぱっと思いつくのは、甘いものとかかな。女の人は甘いものが好きだと聞くし、桃井さんもその例には外れないはずだ。


 他に、個人的に桃井さんが好きなもの……は、なんだろうか。コンビニでよく買っていくお菓子とか……

 いやいや、お礼にそれは……しょぼすぎるし、第一なにを買ってるかなんていちいち覚えてない。しかも食べ物類ばっかじゃないか。


 ただ、形に残る物も、それはそれでどうなんだろうか。


「あ、そろそろバイト行かないとな」


 床に寝転がって携帯をいじっていたが、時間を見ればそろそろバイトの時間だ。

 立ち上がり、クローゼットから適当な服を引っ張り出して、と。今日も、働くとしますか。


 ……あ、そうだ。せっかくなら……


「香織ちゃんに贈り物?」


「はい」


 ……コンビニにてバイト中。シフトが同じだった篠原さんに、女の人にプレゼントして喜ばれるものを聞いた。

 ただ、一口に女の人と言ってもそれぞれの好みがあるし、誰に送るのかわからないとアドバイスしようがない……と言われたので、結局桃井さんの名前を出すことになってしまったが。


 まあ、桃井さんに贈り物をするって相談したところで、まずいことがあるわけでもない。


「いつもいろいろ、お世話になってるので……特に、ここ最近は」


「へぇー、それでなにか、プレゼントしたいってことね?」


「はい。……なんでにやにやしてるんですか」


「別にぃ?」


 なんか妙な誤解をしている気がする。それにすごい乗り気に見える。

 ……まあいいか。アドバイスをしてくれるなら、いくらか乗り気である方がいろんな意見を貰えそうだ。


 とりあえず、お客さんが来ている間は会話もそれほどに抑えて。人の流れが切れたところで、篠原さんは口を開いた。


「瀬戸原くんは、贈りたいもののはどういうものがいい、というのは考えているの?

 贈り物と言ってもいろいろあるわよ、食べ物、小物、実用的な日用品……あの年の子だと、特に種類は多いわね」


「……正直、ジャンルすらも不明でして」


 篠原さんに相談する前に、俺としてもいろいろ考えてみた。

 だが結局、なにをプレゼントするのか。そのジャンルすらも決められないままだ。俺ってやつはなんてだめなんだ。


 そもそも、考えてみれば俺、誰かに贈り物をしたいなんて考えたのは初めてかもしれない。年上の女性というものがまず周囲にいなかったのに、その人に渡す贈り物。

 それをなににするか。考えてもわからないのは、俺の経験値のなさゆえか?


「そう……例えば食べ物を贈りたいなら、相手の好みを食べ物方面で探ることもできるけど」


「すみません、優柔不断で」


「ふふ、それだけプレゼントを考えてくれてるってことでしょう? 私が香織ちゃんの立場なら、嬉しいわ」


 優柔不断ではあるが、それは同時にそれだけ深く考えているということだ……篠原さんにそう言われ、少し気持ちが楽になる。

 とはいえ、篠原さんに相談しておいてまで、ふらふら悩み続けているわけにはいかない。


「篠原さんは、桃井さんがなにを好きとか、知りませんか?」


「そういうのは瀬戸原くんのほうが詳しいんじゃないの?」


「……不甲斐ないことに」


 確かに、桃井さんと接している時間が多いのは、篠原さんよりも俺だろうが……本当に不甲斐ないことに、桃井さんの好きなものを、俺は知らない。

 それよりはまだ、同性で仲のいい篠原さんが知っているのでは、と思ったのだ。


 篠原さんは、視線を一点に見つめて考え始める。なんだか申し訳ない気持ちと、少し嬉しい気持ちが湧いてくる。

 篠原さんを当てにしているだけじゃだめだが、なにかヒントを得られれば……


「……瀬戸原くん、料理はできる?」


 ふと、篠原さんがそんなことを言った。


「料理? まあ、多少は……」


 料理は、一人暮らしの必須スキルだと思って、ある程度は身につけた。いや、身につけていた。

 最近では、学校やバイトが忙しくて、料理をする時間も気力もない。それに、適当な惣菜とか買ったほうが楽なのだ。


 なので、最近は料理はしていない。


「そう……考えたんだけど瀬戸原くん。

 香織ちゃんへのプレゼントは、瀬戸原くんの手作り料理でどうかしら!」


「……!?」


 桃井さんへの贈り物、その内容に……俺の手料理はどうかと、篠原さんはどこか自信満々な表情で言い放った。

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