表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/97

旅行計画1


皆でお酒を飲んでから数日が経過し、七月へ突入した。

夏が顔を見せ始める中、伊織は以前とは少しだけ変わった日常を過ごしていた。


その変わった所とは……。


「久遠伊織よ、龍を祀った社は今でもあるのか?」

「社…神社ですか?そうですね、龍を祭ってある神社もありますよ」

「そうかそうか、今の世でもあるのか。ふむ、今度見に行ってみるか」

「そ、そうですか…」


まずは緋冥が伊織家に加わった。


クシナやシアナと違い魂約をしているわけではないが、伊織の事が気に入った緋冥は仮契約を結び、伊織の家で生活している。


緋冥はよく出かけてくると一言だけ告げ、ふらっと外出する事があった。

最初のうちは何処に行ったのか気になっていた伊織だが、緋冥が返ってくるとその日に行った神社について熱く語るのを見て、神社を巡ってるのかなと推測する。


神社巡りの趣味があるため、龍を祀っている神社はあるのかと聞いた緋冥だったが、そのご神体と同じ種族の緋冥がその神社に行って何か意味があるのかなと伊織は疑問に思った。


そしてもう一つ変わったところがあるとすれば……


「ねぇ主様?最近夏が近づいてきて暑くなってきたわよね?」

「ん?そうだね、そろそろ冷房とか入れる時期になってきたかな」

「そうよね?それでね、暑い日には冷やしたお酒とか凄く美味しいと思うの」

「た、確かに美味しいかもね…」


それは、クシナが事あるごとにお酒を飲まないかと誘ってくるようになったことだ。


実は皆でお酒を飲んだあの日、伊織には途中から記憶が曖昧になっていた。

自分が何を喋って居たのかもあまり覚えていないし、いつ寝たかも記憶にない。


翌日起きたときクシナが横で寝てたのを見て驚きはしたが、いつもの事かと思いながら起きたクシナにその事を聞いてみた。


『クシナ、昨日の後半から記憶が曖昧なんだけど、なんか変なこと言ったりしなかった?』


泥酔すると普通では考えられないような行動をすることがあると、知識だけは知っていた伊織がそう尋ねてみたのだが……。


『えぇ、全然大丈夫だったわよ?おかしな所なんて何もなかったし、むしろ私としては凄く嬉しかったわ!!』

『嬉しかった?』

『そうよ?所で主様、これからも定期的にお酒を飲むのもいいかもしれないわね。ほら、緋冥も今の時代のお酒をもっと飲んでみたいだろうし、主様も自分の許容量は知っておいた方が良いわ』

『そうかな?』

『絶対にその方がいいわ!なんなら今夜から飲みましょう!それでまた主様に……』

『また俺に?』

『あ、いえ、何でもないわ』

『……』


なんとも不穏な終わり方で、誤魔化された。

もし本当に何もなく、ただただ自分がお酒に弱いだけであれば、伊織もクシナの要望に直ぐ答えただろう。


ただ、あまりにも含みを持った言葉で終わったので、絶対に何かあったと伊織は確信していた。


「どう主様?」

「でも明日も大学あるし……また今度かな」

「そうよね、明日に響くかもしれないわよね。それじゃあ、週末に飲みましょう!」

「……」


着々と、伊織の逃げ道は塞がれつつあった。




▼△▼△▼△▼△▼


今日も大学へと通う伊織だが、そろそろ定期試験の季節だ。

ただ日頃から復習をしたり、試験に提出するレポートの内容もあらかた考え終わっているので、定期試験に対する不安はない。


むしろその後にやってくる夏休みが問題だった。


今まであまり友達の多くなかった、いや、ほぼ白雪しか友達の居なかった伊織は夏休みが非常に暇だった。

出かける予定も、遊ぶ予定もない伊織は家の中で本を読むかゲームをするかしかやることがない。


唯一の友達だった白雪も、夏休みは予定が多いのか中々遊ぶことが出来なかった。

これについては伊織が退魔士の世界に入ったことで何となく理由が分かった。


おそらく、白雪は長期休暇中に退魔士組合から依頼などをこなして経験を積んでいたのだろう。


それを考えると、退魔士になった自分の元にも依頼が沢山回ってくるかもなと思い、暇も持て余さない良い夏休みになりそうだなと感じていた。


「あ、おはよう伊織君」

「おはよう白雪」


いつものように大学付近で白雪と合流して大学へと向かう。


「そろそろ試験が近いけど、伊織君は大丈夫そう?」

「うん、特に問題ないかな?」

「そっか、所で伊織君って夏休みに何か予定あったりする?」

「予定?今のところ特にないけど、退魔士の依頼があるならそれをやろうかなって考えてる」

「そうなんだ、じゃあさ、前に話してた旅行に行かない?」


そう、白雪が提案してきた。


旅行?と内心首を傾げつつ記憶を思い返していると、以前白雪や楓と旅行の話しをしていたことを思い出した。


「あぁ、前に組合のカフェで話してた旅行の事か?」

「そうそう!鹿児島に行かないかって話してたやつ」

「確かに、良いかもしれないな」


あの時旅行の話をした後、直ぐに厄星関係で慌ただしくなってしまった。

その後も緋冥が家に来たりとバタバタしていたため、伊織はすっかり旅行の事を忘れていた。


確かあの時は、クシナやシアナも一緒に遊べる旅行地があるか考えていた時に、退魔士名家である夏空家の本家がある鹿児島県を勧められた。


そして夏空家の分家出身である結衣に話しをしてみようというところで話しが止まっていた。


「そうだよね!じゃあ今日大学が終わったら早速朱炎に話しに行ってみようよ」

「分かった」


まだ結衣に話していないので実際に行けるか分からないがもし皆で旅行に行けた場合、楽しくなりそうだなと思った。


そして今年の夏休みは、なんだか騒がしくなる予感を感じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ