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カフェに行こう

ひとまず的へ直撃した炎を見て伊織はホッとする。

白雪達からはお墨付きを貰っていたが、やはり少しは暴発するのではないかという考えが頭の片隅にあった。


「よかった、ちゃんと発動した」

「おめでとう伊織君」


初めての攻撃系札術と言う事もあり少し緊張感を持っていたが、白雪から声をかけられたことで肩の力が抜ける。


「結衣さんから見てどうでしたか?」

「えぇ、とてもいい札術でした。完璧だと思います」


火の専門家である結衣からもお墨付きを貰えたので、伊織は安心する。

的の前から白雪たちの方へ戻り、これからどうするかの話しをする。


「もういいの?」

「あぁ、ひとまず札術の確認も出来たしいいかな」

「そっか、じゃあカフェ行く?」

『パンケーキ...』

「そうだな、行こうか」


白雪のカフェに行くという言葉に敏感に反応したシアナの言葉が脳内に響く。

余程楽しみにしているらしく、そのウキウキとした様子が容易に想像できるので伊織は少し苦笑いしながらカフェに移動することにした。


「これからカフェに行くのですか?」

「あ、はい。シアナがパンケーキを食べたいらしくて」

「そうなんですね、よろしければご一緒してもいいですか?」

「大丈夫ですよ、一緒に行きますか」

「わ、私も一緒に行っていいですか!!」

「はい、楓さんも一緒に行きましょう」


話しを聞いていた二人はもっと伊織と話しをしたかったので、カフェに行くのであれば自分たちもついて行きたいと提案してきた。

伊織としても特に断る理由もなかったので了承する。


「(伊織さんとカフェ、これはチャンスです!!見ていてください美月姉さん、ここでちゃんとアピールして見せます!)」


日頃から美月にもっとアピールするようにと言われていた楓は、この機会を逃さずにしっかりと伊織に対してアプローチすることを決意する。


「(カフェでアピール......。何をすればいいんですか!?)」


しかし悲しいことに楓にはどういったアピールをすれば伊織の印象に残るか全く思いついていなかった。

美月からもアピールはしろと言われていたが、何をどうすればいいなどの話しはしたことがなかった。


「シアナ、出てこれるか?」

「ん!」


カフェに向かう前にシアナに呼びかけ、姿を見せてもらう。

いつもより元気のいい返事と共にシアナが現れた。

風を纏いながら現れたシアナに結衣が目を見開いて驚いている。


「これが伊織さんの契約している妖魔...。初めまして、朱炎結衣と申します」

「ん、よろしく」


初めて伊織の契約してる妖魔を見た結衣は、これがあの紅葉を降した妖魔かと思いながら綺麗にお辞儀をして自己紹介をする。

既にパンケーキで頭がいっぱいなシアナはあまり興味がなかったのか、それに対して簡素に答えていた。


「それじゃあ行くか」

「ん!、パンケーキ」


こうして五人はカフェスペースに移動する。




カフェに到着した五人はそれぞれ席に着く。

パンケーキとうわ言のように呟いていたシアナが壁際奥の席に座り、隣に伊織が座る。

それを見ていた白雪はすかさず伊織の隣を確保する。

結衣と楓は伊織たちの正面に座り、メニューを開いて何を頼むか吟味していく。


シアナもメニュー表を開いてデザートの項目を見ていた。

一口にパンケーキと言っても、様々な種類が存在する。

メニュー表に載っているパンケーキの写真はどれも美味しそうであり、うんうん唸りながら悩んでしまう。


「決められないか?」

「ん、どれも美味しそう...」

「まぁ来れるのは今日だけじゃないし、今は一番食べたいと思ったものを頼めばいいよ」

「ん、確かに」


伊織からまた連れてくるというニュアンスの言葉を聞いたシアナはどれが一番食べたいかを決め始めた。


「ん、決まった」

「そっか、皆も大丈夫ですか?」

「おっけーだよ」

「はい、こちらも決まりました」

「大丈夫です!」


シアナの注文も決まったので他の人はどうだろうかと伊織が尋ねてみると、全員頼みたいものが決まったらしい。

店員を呼びそれぞれ注文を行っていく。


「ん、楽しみ」

「シアナちゃん、ここのパンケーキは本当に美味しいから期待してていいよ?」

「ん!」


尻尾をユラユラさせながらパンケーキが来るのを今か今かと楽しみにしているシアナに白雪がそう言った。


「しかし驚きました、まさか伊織さんがここまでの妖魔と契約していたとは」

「やっぱりシアナって珍しいんですか?」

「そう...ですね、少なくとも私は見たことがありません」

「そうなんですね、ちなみに他の退魔士ってどんな妖魔と契約してるんですか?」


メニューを開きながら悩むシアナを見て、結衣がふとそう呟いてしまう。

伊織としてもよくシアナと契約していることに驚かれていたが、実際他の退魔士が自分とどう違うのか分かっていなかったのでいい機会だと思い結衣に聞いてみる。


「私が見たことのある妖魔ですと、猫系統の妖魔と契約している退魔士は見たことありますね」

「でもシアナみたいな感じじゃないんですよね?」

「はい、半透明の猫で物を浮かせたりしてました」


以前結衣が見かけた契約妖魔はただの猫の様な妖魔であった。

主人である退魔士の言う事は聞いていたが、会話は出来ていなかったし行動も猫そのものであった。


「そうなんですね、楓さんはどうですか?」

「わ、私は餓狼を使役してる退魔士なら見たことあります!」

「が、餓狼を...そんな人も居るんですね」

「はい、凄く可愛がっていました!」

「そ、そうですか...」


楓は餓狼を三体ほど使役している退魔士と共に仕事をしたことがあった。

その退魔士はまるで犬を可愛がるように餓狼を撫でまわしており、若干引いたのを覚えている。

伊織としても以前餓狼に襲われたことがあり、あまり可愛いとは言えないその見た目を知っていたので、可愛がっていたと聞いて世の中には色んな人が居るんだなと遠い目をしていた。


「普通妖魔と契約っていうと、大体そう言った下位の妖魔が基本なんだよね。だからシアナちゃんみたいな存在はすっごく珍しいんだよ」

「なるほどね、ありがとう」

「いえ、お役に立てたならなによりです」


白雪からの補足も入り、何故シアナが驚かれていたのか納得した伊織。

お礼を言った伊織に対して結衣も笑顔を浮かべながらそういった。


「お待たせしました、こちらご注文のお品になります」


そこまで話したところで、待ちに待ったパンケーキが到着した。


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