116、ラグナロク(2)
神庭ソフィアの最奥。
衰微の間に二本の槍がある。
神槍ロンギヌス。
別名神殺しの槍。
もし万が一、神が暴走したとき、この槍を持って戦うようにと天使たちに与えられた槍。
そしてもう一本。
ロンギヌスを作る際に失敗した槍だ。
悲槍シルヴィア。
実際に神を殺した槍。
神殺しの両槍の片方を手に取る。
「嫌な形だ」
ロンギヌスを見上げながら言う。
首がない翼の生えた人の形をしている。これが戦いのときは棒状になり、槍になる。
シルヴィアを手に地下フロアを後にした。
「女は捨ておけ」
広い荒野の中を天使たちが取り囲む。
リュゼとコノハをかばうようにしてルインが前に出る。
「いよーう、ルイン。久しぶりだな」
「アルバート。何の真似だこれは」
いつの間にか現れた天使たちがアクセル一行を取り囲んでいた。時刻は夜中だ。場所はミレーネとソフィアとの境界近くの荒れ地帯。背徳の巫女の十二花だ。
「仕事だ」
「ツォン。お前まで」
エネルギーボルト。
神器は体に現れるものと武器を具現化したものの二通りがある。彼らはエネルギーボルトという物質で具現化された武器を扱う天使たちだ。煌々と光り輝いてそれは辺りを照らしている。
弓、剣、斧。
「兄さん、焼きが回ったな」
「ルティン、どういうことだこれは」
天使の数は五人だ。
取り囲む三人の後方に長身の男とまだ少年の天使が控えている。
少年の持つ弓だけが異様なオーラを纏っている。
「反逆者アクセルの抹殺。魔貴族と手を結び神界転覆を図ろうとしている事由による」
「何だその馬鹿げた命令は」
「ミコトからの命令だよ」
ルティンと呼ばれるルインによく似た風貌の天使が言う。
「俺はミコトに護衛を頼まれたんだが」
「何だって?」
アクセルがそれを聞いて驚く。
「すまんな、黙ってて。お前が神界の上層部から命を狙われているのは知っていた」
「何で!? アクセルが何をしたの!?」
リュゼが取り乱して言う。
「さあな。俺たちは命令に従うだけだよ」
アルバートと呼ばれる天使が笛を手に取る。エネルギー体の笛だ。エネルギーボルトだ。笛を吹き始める。
悲しい音色が辺りを包む。すると体が急に動かなくなってきた。やがて完全に拘束される。こちらではルインだけが構わずに笛の音の中を動けるようだ。あとの四人は動きを縛られている。
相手側でも同じようだ。動けるのは笛を吹いているアルバートと後方にいる長身の男だけのようだ。
「なるほど。そうすると俺の相手はルインだな。あとは大した事なさそうだ。ルティンはアクセルを。ツォンはもう一人の男をやれ」
どうやら戦闘力が自分以下のものの動きを縛る笛のようだ。二人に指示を下し、具現化されていた笛を消した。
「行くぞ。では任務遂行、始め」
ドンッ!
戦いの衝撃音が辺りに鳴り響く。
どうやら不当な処遇を受けたようだ。事の内実を確かめる必要がある。早く七賢者のブルーノの元に戻らねばならない。
立ちはだかる十二花を退けるための戦いが始まった。




