あなたをさらった。
いつかの約束の通り、あなたがライブを見に来た。
ソロと違ってメンバーのライブは派手だ。
仕掛けも大掛かりだし、動員数も多い。
こんなところに連れてこられたのは初めてなんだろう、少し気後れしているあなたをメンバーに紹介した。
今まであなたの存在はメンバーにさえ秘密だった。
マネージャーに連れられて楽屋に現れたあなたは、あたりの空気を払うように艶やかで品があった。
今まで俺たちが付き合ってきた女たちとは明らかに違う。
みんなの注目を浴びながら、悪びれるでもなく、みんなに向かって優雅にお辞儀をし、あなたは隅のソファにきれいに足を揃えて座った。楽屋にいた誰かがふっとため息をついた。それが合図のようにみんなの緊張が解け、それぞれが自分の持ち場に戻っていった。
しばらくして、マネージャーがあなたを客席に案内した。
Tが客席に消えた後、メンバーに囲まれ質問攻めにあった。
最近俺の付き合いが悪くなったのは、彼女のせいか?とか、あんな美女とどこで知り合ったんだ?とか。
手短に質問に答えていったが、なぜだかTが人妻とは言えなかった…。
ライブが終わって、マネージャーの運転する車であなたの屋敷まで送って行く途中、
今日のあなた、本当に別人みたい。
とても素敵だったわ。
マネージャーの耳を気にして、俺の耳元で囁くあなたの甘い声。
ライブの興奮があったと思う。だけど、あなたの甘いささやき声が俺の官能を刺激した。
行き先変更や。俺のマンションまで。
俺はあなたをさらった。
今夜は帰さない。
だめよ。だめ。もう帰るわ。
弱々しいあなたの抵抗を封じるように、甘く激しいキスをする。
いつもの手順で愛していけば、あなたが抵抗できないのわかっている。ゆっくりと早急に、やさしく激しく、あなたの官能を引き出していく。
その夜、あなたも疲れて眠ってしまった。
俺は、あなたの寝顔を毎晩見られたらどんなにいいだろうと考えていた。
翌朝、
私はこうなることが怖かったの。
私だって、あなたとこうして朝を迎えたかった。
でも1度だってそんなことしたら、もう歯止めがきかなくなる。毎日毎晩、あなたに抱かれて眠りたい。
だから早く離婚してくれ。とりあえず別居してほしい。
俺の悲痛な叫びを無視して、あなたは早朝の街を自宅へと急いだ。




