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T  作者: 水面
10/22

あなたをさらった。

いつかの約束の通り、あなたがライブを見に来た。

ソロと違ってメンバーのライブは派手だ。

仕掛けも大掛かりだし、動員数も多い。

こんなところに連れてこられたのは初めてなんだろう、少し気後れしているあなたをメンバーに紹介した。

今まであなたの存在はメンバーにさえ秘密だった。


マネージャーに連れられて楽屋に現れたあなたは、あたりの空気を払うように艶やかで品があった。

今まで俺たちが付き合ってきた女たちとは明らかに違う。

みんなの注目を浴びながら、悪びれるでもなく、みんなに向かって優雅にお辞儀をし、あなたは隅のソファにきれいに足を揃えて座った。楽屋にいた誰かがふっとため息をついた。それが合図のようにみんなの緊張が解け、それぞれが自分の持ち場に戻っていった。


しばらくして、マネージャーがあなたを客席に案内した。


Tが客席に消えた後、メンバーに囲まれ質問攻めにあった。

最近俺の付き合いが悪くなったのは、彼女のせいか?とか、あんな美女とどこで知り合ったんだ?とか。

手短に質問に答えていったが、なぜだかTが人妻とは言えなかった…。



ライブが終わって、マネージャーの運転する車であなたの屋敷まで送って行く途中、


今日のあなた、本当に別人みたい。

とても素敵だったわ。


マネージャーの耳を気にして、俺の耳元で囁くあなたの甘い声。

ライブの興奮があったと思う。だけど、あなたの甘いささやき声が俺の官能を刺激した。


行き先変更や。俺のマンションまで。


俺はあなたをさらった。

今夜は帰さない。


だめよ。だめ。もう帰るわ。


弱々しいあなたの抵抗を封じるように、甘く激しいキスをする。

いつもの手順で愛していけば、あなたが抵抗できないのわかっている。ゆっくりと早急に、やさしく激しく、あなたの官能を引き出していく。


その夜、あなたも疲れて眠ってしまった。

俺は、あなたの寝顔を毎晩見られたらどんなにいいだろうと考えていた。


翌朝、


私はこうなることが怖かったの。

私だって、あなたとこうして朝を迎えたかった。

でも1度だってそんなことしたら、もう歯止めがきかなくなる。毎日毎晩、あなたに抱かれて眠りたい。


だから早く離婚してくれ。とりあえず別居してほしい。


俺の悲痛な叫びを無視して、あなたは早朝の街を自宅へと急いだ。




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