~112 サクラ vs 悪魔~
タリスに憑いている悪魔を倒すべく
マキシマム・グレー"幽玄夢想"
を放ったサクラ。
いまこのタリスの私室に居るのは
タリスを除いて3人。
パリエットにどれ位の時間ここに人が来ないように
出来るかを尋ねるサクラ。
「とりあえず話が終わるまでは
入らないよう申し付けております」
それを聞いて安心する。
10分とか言われたら
どうしようかと思っていたサクラ。
「今の魔法でタリス様と私の精神を繋ぎました」
その言葉である程度察する
セレネースとパリエット。
「ということは、
先ほどの悪魔は本当にタリス様の心の中に?」
「サクラちゃん、そこに行くってことね?」
その通りと頷くサクラ。
そして簡単に今からやることを説明する。
「あの悪魔、もうサキュバスで間違いないでしょう。
精神世界や夢の世界に入り込めるという
特性を持っています。
引き摺り出して倒す方法も無いことはないのですが
術を掛けられている本人、
タリス様に下手をすれば
精神崩壊を引き起こし兼ねないくらいには
相応の負担を強いることになります。
ですので、少しでも負担を軽くするのに
精神世界で倒すことを選択します」
パリエットがそれを聞いて尋ねる。
「目の前で見ても信じられませんが、
精神世界へと逃げたのは間違いないのですな?」
頷くサクラ。
「私のこの魔法は先程も言いましたが
現在タリス様と繋がっている状態。
異物混入のような違和感、間違いなく居ます」
その一言で腹を括ったのか
セレネースが声を掛ける。
「お願い、サクラちゃん。
お兄ちゃんを元のお兄ちゃんに……
お願い……」
両手を合わせ目を瞑って
涙を滲ませ祈る様に呟いている。
その様子を見ていたパリエットも同様に
腹を括ったのか、
「お願い致します、サクラ殿。
タリス様にあの様な下品な女性は似合いません。
何卒」
そう言って頭を下げる。
それを聞いてクスリと零すサクラは、
突入前に二人にひとつだけ頼みごとを伝える。
「これから私が戻ってくるまで、
肉体の方は完全に無防備になります。
私があちらに行ったら、
涎が垂れないようお願いしますね」
目を見張る二人だが直ぐに相好を崩し
「グス、相変わらず変なの。
お願いねサクラちゃん!!」
傍で胸に手を添え頭を下げているパリエット。
セレネースの泣き笑いの顔を見ながら
タリスの精神世界へ侵入するサクラであった。
☆★☆★☆★☆★☆★
タリスの精神世界 秘密の花園
「……何ここ? バラかしら?」
タリスの精神世界へ着くなり辺り一面バラだらけ。
所謂バラ園のようになっている場所に出たサクラ。
良い香りがするが
それが魅了効果を持つ匂いだと瞬時に判断、
同時に近くにあの悪魔がいることを察する。
すると少し先のバラの壁からスルリと
抜け出て来たのは、
「まさかさっきの魔法がこの世界へ繋ぐ効果が
あるとはねぇ。
てっきり攻撃魔法かと思って逃げたのにねぇ」
悪魔がそう言った瞬間、蕾であったバラも含め
一気に花弁が開き匂いが辺りに充満する。
「私にその匂いは効きませよ」
匂いの成分が鼻腔粘膜に張り付かないように
するくらいはお手の物であるサクラ。
といってもここは精神世界なので
匂いたくなければ匂わずに済むのである。
但し強靭な精神力と
高い精神攻撃耐性が必要ではあるが。
「フフフ、何か慣れてるわねぇ、あなた?
でも忘れてない?
ここは私の秘密の花園、私の庭よ!!」
言うなり辺りのバラが一斉に飛び交い
目の前を覆い尽くしサクラに向かって飛んで来る。
既にバラの形は取っておらず
先端が尖った黒い針のようである。
(そのネーミングセンスはどうなんですか?
“秘密の花園”って、お蔭で頭の中が
セ〇コちゃんで埋め尽くされましたわ!!――
逸れる思考を軌道修正し、
――神竜結界モドキ
サクラVer リアクションムーブ付き」
キッチリ対処は行うサクラ。
ゴォォオオ ガガガガガガ――――
ギンギンギィンギギギギギ――――
全ての黒い針が弾き返され
逆に悪魔に向かって飛んで行く。
サクラでさえ竜の里で見た”神竜結界”は
真似することが出来なかったが
近い強度と効果を持たせ
ついでに反射機能をつけたモノを展開していた。
「チッ、何ですか?
その出鱈目な結界は」
自身の作り出したものだからなのか、
一つ舌打ちをして一瞬でその黒い針を消し
別の魔法を繰り出す悪魔。
「地獄の涙!!」
上空から黒い雨が降り出す。
直ぐにドシャ降りになり辺り一面を覆い尽くす。
結界に当たる雨粒が
ジュウジュウと音を立てているところを見ると
どうも強酸の液体の様であるが、
意に介さず立っているサクラを見て
顔を歪める悪魔。
「なら、これはどう?――
攻撃の種類を切り替えるようだ。
――「甘い記憶!!」からの「地獄の口づけ!!」
地面から湧き出して来た黒い塊が人の形を取り
サクラのよく知る人物に代わっていく。
タケルである。
ここは精神世界、
ダイレクトに精神に影響をもたらす世界。
最も好意を寄せる相手の記憶を呼び起こし形にし
接触させることで
相手の精神を乗っ取る魔法である。
「……」
何かを探っているサクラ。
同時に考え事をしながらも
この精神攻撃ではサクラの精神を
乗っ取ることは出来ないようであったが、
更に攻撃は続く。
「これも効かないなんて、
あなた一体どんな鍛え方してるのよ!!」
段々と余裕が崩れてきており
口調も荒いものに変わってきている。
「しょうがない、眼に負担は掛かるけど――
そう言って一度目を瞑り片目だけをカッと見開く。
――堕天使のウィンク!!」
左目に魔方陣の浮き上がった瞳がサクラを見据え
それを見たサクラが虚ろな目になったかと思うと
動きを止めその場でガクッと膝を付く。
結界の効果も切れたようだ。
……
それを見た悪魔は笑みを浮かべ
ゆっくりとサクラに近付いて来る。
「フゥ、私の庭でここまで粘ったのは
あなたが初めてねぇ、楽しかったわぁ」
落ち着いたのか口調も元に戻り歩調と同じく
ゆったりとしている。
そしてサクラの前まで来ると、
「ウフフ、どうかしら私のウィンクは?
強烈だったでしょう?
意識を塗りつぶされて真っ白な状態で
次に考えるのは寝ても覚めても私のことだけよ――
余程嬉しいのか口元に笑みを浮かべながら続ける。
――精神攻撃耐性も高い、それにさっきの結界。
こんな強い子、しかもスゴイ美女、
そんな子が私のお人形さんになるなんて、
嬉しいわぁ……
これでノルマ達成にならないかしら」
最後に悪魔が呟いた刹那、
ガッッ!!
「ウグゥッ!!」
サクラの右手が悪魔の喉元を圧し潰すように
掴み上げている。
片手で喉元を掴まれ持ち上げられる悪魔。
驚愕の目でサクラを見ているが声は出せない。
「やっと、捕まえましたわ。
確かになかなか強烈な”魅了眼”でしたね。
ただあなたのネーミングセンスのお蔭で
そのことばかり気になって魅了されるどころでは
ありませんでしたよ」
驚きと同時に何のことか分からないと
目で訴え掛ける悪魔に
キッとした鋭い目付きで睨むサクラが問い掛ける。
「あなた異世界人ですね!!
更にセ〇コちゃんファン!!
さぁ、キリキリ吐きなさい!!」
真剣に問い質すサクラであるが、
当初の目的はどうした?
タケルかセイラが居ればそう突っ込んだであろう
状況だが、残念ながら
今サクラを止める者は誰も居ないのであった。




