あの頃の真実と本当の彼女
あの頃の記憶は心の奥底に沈んでる。
ただ、時々思い出す。
「変えてみせるわ。この世の闇を。」
彼女が歌っていたワンフレーズ…。
彼女は何を伝えたかったのだろうか。
ー20歳ー
高校の同級会のお知らせが届いたのは2週間前のことだ。
俺は大学の音楽科に進学していた。
夢はまだはっきりとは決まっていない。
「久しぶり。」
そう声を掛けてきたのは、同じ部活に所属していた仲の良いやつだった。
懐かしい話をしながら記憶がよみがえってくる。
あの頃から俺は成長できているのだろうか。
「そういえば知ってるか。あいつのこと。」
急に話が変わった。
「あいつ?って。」
誰のことだろう。
「お嬢さんだよ。」
俺は驚いた。その名前が出るなんて。
「……知らない。」
正直、思い出したくなかった。
このまま、忘れていてほしかった。
なのに、俺の心のどこかにまだいたんだ。
「えっ!?知らないのかよ!よくTVに出てるのに。」
「…は?そうなの?あいつが!?」
またしても驚いた。
人前に出るのがあんなに苦手だった彼女が、あがり症だった彼女がたくさんの人に見られる舞台に立つなんて俺には想像もつかなかった。
右耳が聞こえないのにどうやって活動しているのだろうかと、ふと思ってしまった。
「きゃー♡」
突然歓声があがった。
「噂をすれば本人登場だ。」
俺はそっちに釘付けになった。
舞台に立つ彼女はキラキラしていた。
いじめられていたのが嘘のように。
彼女の歌声は変わっていなかった。
何かを伝えたいと願う思いが込められた声。
俺はドキドキした。
気がつくと、泣いていた。
俺は会場から出ようとした。
こんな姿を見られたくないから。
「待って。」
彼女の歌が止まった。
俺は背を向けたまま振り返らない。
「聞いて欲しい歌があります。」
そうして彼女は歌いはじめた。
その歌は、男の子の優しさに甘えてしまった女の子の歌だった。
許されないとわかっていたの。
でも、あなたしかいないから。
好き。好きすぎて消えたいくらい。
いつまでもどこかにいるあなたの幸せ、祈ってるから。
彼女も彼女なりに苦しんでいたのだと思った。
あの頃、お互いに逃げたりしなければこんなに遠回りしなかったのかもしれない。
忘れようと思っても忘れられなかった。
消したくても消せなかった。
ああ、やっと本当の彼女に会えた気がした。
あの頃の真実…それはただ逃げただけではなかったということ。
本当の彼女は、主人公の俺に別れを告げるという辛い思いをさせたくなくて姿を消したんですね。
お互いがお互いを思い合いすぎたのでしょう。
だんだんとクライマックスに近づいてきましたね。
このあとの展開はどうなるのでしょうか。
今回も最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
次回もぜひぜひよろしくお願いします。




