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第5章:最弱コンビの限界と、絶望の来訪者

午後、訓練を中断した僕は、獅堂神父の厳しい監視のもと、重い足取りで学校へと向かった。

学校の校門をくぐる瞬間、結界を抜けた感覚と共に、冷たい湿気を帯びた悪意の波長が肌にまとわりつくのを感じた。

教室は、一見平静を装っている。しかし、僕には全てが歪んで見えた。クラスメイトの朗らかな笑い声は、悪魔の嘲笑に聞こえ、廊下のざわめきは僕の周りを蠢く悪意の予兆にしか感じられない。

僕の幼馴染の泉田 陸の変質は、さらに深まっていた。それは、氷室怜央の法則が確実に機能している証拠だった。

休み時間。陸は、彼の席ではなく、僕の席の斜め前に立っていた。僕の方を見ようとはせず、苛立たしげに窓の外を見ている。

彼の傍に椎名 密が不安そうに立っていた。

「陸、そろそろ先生に相談した方がいいよ。全然眠れてないんでしょう?」

密の声はいつも通り穏やかで優しかったが、その言葉には強い心配が滲んでいる。

「関係ないだろ!」陸が声を荒らげた。普段の活発な陸からは想像できない、荒んだ声だった。

「俺は足りないんだよ。この前の物理だって、あいつ(氷室)は満点で、俺はたったの88点だ。努力が報われてないなんて、恥ずかしい」

陸は、自分の点数を罵倒するように机を叩いた。彼の情熱的なエネルギーは、今や自分自身を攻撃する鋭い刃へと変質している。

密は陸に突き放され、悲しそうに肩を落とした。その時、密の視線が、一瞬だけ僕に向けられた。

彼女の視線は陸に向けた心配とはまた違う、静かな、助けを求めるような色を帯びていた。そして、彼女は何かを言おうとして、寸でのところで唇を噛んだ。

(密は……僕の今の状況を心配してくれている?)

密は、僕がこの全てに巻き込まれていることをなんとなく察しているようだった。陸が荒れる理由が、氷室怜央と僕を起点としていることに、彼女だけが気づいているのかもしれない。彼女は心配と助けたい気持ちで動揺しながらも、僕に余計な負担をかけないように、その言葉を飲み込んでいる。

僕の心の拠り所である陸が、僕を責め立てる刃へと変質していく。そして、密の秘めた優しさが、僕をさらに孤独にさせまいと静かに抵抗している。この複雑な状況が、僕の日常の安寧を音もなく、静かに崩壊させていた。

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