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第5章:最弱コンビの限界と、絶望の来訪者

氷室怜央が去った後、獅堂神父は僕を連れて急いで教会に戻った。彼の硬質な表情は、氷室の存在と僕の恐怖によってひどく強張っている。

「憂さん。申し訳ありません。私の神聖力の拙さが、貴方を危険に晒した。もう二度と、貴方をたった一人で歩かせません」

獅堂神父は、僕の肩を抱きながら、強い決意を口にした。

しかし、僕の心は教会という安全な聖域に戻っても解放されなかった。

『貴方の周りの者が、貴方をどう破滅に導くか、楽しみに見届けさせていただきます』

氷室怜央の冷酷な言葉が、呪いのように脳内で反響する。それは、単なる脅迫ではない。法則を司る者の残滓による『予言』であり、僕の未来を既に決定づけているかのような絶対的な確信を持っていた。

僕の魂は、氷室の言葉によって完全に支配されていた。彼が法則を提示した瞬間から、周りでの異変も、悪魔の襲撃も、全てが氷室の実験のプロット通りに進んでいるように感じられ、足元から静かな恐怖が這い上がってくる。

その日、教会は重苦しい静寂に沈んでいた。ルカさんと獅堂神父は、氷室の目的について深刻な声で話し合っている。二人の頼りになる聖職者の声も、僕には薄い膜一枚隔てた遠い世界の出来事のように響いた。

「チッ……神父が全力で貴様を守る以上、ヤツは別の手を打つだろう。法則を直接捻じ曲げるような不測の事態に、警戒しろ、宿主」

僕の体内のベリアルも、氷室の予測不可能な行動に苛立ちを隠せないでいた。智を司る悪魔にとって、もう一人の智の存在は最も忌々しい敵なのだ。悪魔同士のプライドが、僕の心臓を鋭く締め付けた。

その後の智の訓練は、もはや拷問だった。ベリアルの知識は宇宙の真理のように冷徹であるはずなのに、僕には恐怖と結びついて、精神的な毒にしかならない。

『智の法則を学べ』

『智の法則は絶対ではない』

二人の智の悪魔の相反する教えが、僕の脳内で激しく衝突し、激しい頭痛を引き起こした。僕は自分の席で、冷や汗を止めることができなかった。

「フン。貴様の心は水面のように波立っている。波長を制御できなければ、私の知識は貴様の魂を焼き尽くす毒になるぞ、愚かな宿主」

ベリアルの声は冷酷だ。僕は自分の恐怖を制御する方法が全く分からない。僕とベリアルのコンビは、圧倒的な知性と圧倒的な臆病さを組み合わせた、ちぐはぐなコンビだった。

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