【Scene03:瞬撃 - Flash Clash】
【Scene03:瞬撃 - Flash Clash】
「……行くぞ」
その一言が、地雷の起爆装置だった。
――視界から、消えた。
風が鳴る。砂が跳ねた、次の瞬間。
ドンッ。
踏み込んでいた。もう、間合いの“奥”だ。
腹を狙った拳――フェイント。
実際に来たのは、膝下からの風刃。沈み込んだ回し蹴りが、地を裂くように走る。
しかし。
カウンター使いは微動だにせず、軸足をずらすだけ。最小限の“ズレ”でかわす。
「速いが――見える」
その目線が下に落ちた。と見せかけ――上段肘打ち。
咄嗟の判断。スピード型は重心を引き、首筋をなぞる刃をかわす。
連撃、始動。
右、左、肘、膝、踵。
一撃一閃、全てが刃。 空間を裂き、空気が悲鳴を上げる。
「……チッ、速ぇだけじゃねぇな」
舌打ちの刹那、踏み込まれていた。
鳩尾に拳――
カチン。
腕を絡め、力で捻じる。
その隙に、鋭く膝。
ビッ。
頬が裂け、赤い線が走る。
けれど、止まらない。
痛みより速さ。
止まれば、死。止まれば、“負け”。
ゼロ距離。
掌底からの肘。足を絡めて、崩しにかかる――
「――甘い」
地を蹴っての後転、流れるように体勢復帰。
その瞬間、踵が空を裂く。
避けた軌道を読んで、拳が再び走る。
「速い……でも、読めるッ!」
全てを読み切った末の一手。
カウンター使いの拳が、顎を撃ち抜いた。
ガッ――!
時間が、止まった。
スピード型の身体が、わずかに震え――
膝をついた。
「……お前、速すぎだ」
「……お前も、見えすぎだけどな」
肩を上下させながら、二人とも笑っていた。
勝ったのはどちらでもない。“生き残った”のは――両方だった。




