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32:再会しにいった

「『自由周遊クーポン』……そうか、タマモたちとの絆で手に入れていたのか」


 そして『永住権』との併用ができないという話も、俺は今720時間クーポンで来ているから、これがあれば時滞在中にでも時代を移動できるということか。



「ノユキ? どうしたの?」

「ちょっとタマモの事を聞ける人に話を聞いてくるよ」


「そんな人がいるのか?」

「ま、まぁね……」



 しかも何度も使えるので、向こうに飛んだとしても話を聞いてから問題なく戻って来れるはずだ。


(エイラに話を聞いて、タマモに伝えたらその話の出どころは一体誰になるんだ……?)


 果たしてその情報の出所は誰になるのか?

 本来のエイラの先祖から伝わる情報の出所とは変わるのだろうか。


(本当は未来のタマモが自分で気づいて口伝していくと仮定すると、今のタマモに情報を教えた時、未来のエイラに影響が出てしまわないか?)

 

 いわゆるタイムパラドックスというものが起こる可能性がある。

 過去や未来の自分自身に会うことも念の為避けたほうがいいだろう。



 

 (それに……俺に会わないように気をつけないと)


「旦那?」

「あ、あぁごめん。ちょっと今日の領主様との会議が終わってから確認してみるよ」

「承知しました……あの、私のために無理しないでくださいまし……」


「……タマモが敬語喋ってる……こわ……」

「なっ、わ、私だって最低限の礼儀ぐらいはある!」


 ちなみにライネも甘えている時は若干敬語になるのは言わないでおこう。

 そのまま、タマモは上がって行ってもらい領主館へ同行してもらうことにした。


 ライネも行きたがっていたが、子供の相手もしたいので遠慮するとのことだった。



 

「でも次は行くからね、あの子にも久々に会いたいし」

「あの子?」

「領主のアンネ・ベルグ伯爵様ね!」

「旦那、ライネとアンネは親戚同士なんだ」


 

 ここにきてまた新しい情報が出てきた。

 そういえば何人か同族は街に住んでいるって聞いた気がしていたが、領主が親戚とは初耳だった。



 ということは、将来的に俺がここの領主になっていたのも、そういうことか。



 色々と合点が行ってしまった俺は、まずは領主へと会いに行き、その後エイラに会いに行って見ようと思ったのだった。



 


◆◆◆◆◆



 


「ねぇ、そのクーポン? だっけ? 2人一緒に移動できないの?」


 俺は地下都市アングラにある宿屋でお腹が少し大きくなっていたエイラとナツミに挟まれていた。

 突然の再会に、エイラとナツミに一通り泣かれてから色々と玉藻族についての話を聞き、どうやって再び会いに来れたのかを説明したところ、そんな質問が飛んできたのだった。


 


「流石に無理じゃないか……じゃあ帰る時に手でも繋いでやってみようか」

「うんうん! ねぇ、もしダメでもまたきてくれるんだよね?」

「そうだな……しょっちゅうは無理でも定期的に顔は見せられる算段がついたかもしれない」


「そっかーえへへ、そっかぁーうれしーなー! ねぇナツミ!」

「えっ? んっ、ぐ……(ごくん) そ、そうだね」



 

 呼ばれたナツミはベッドへ座り俺が持ってきてポテチを一心不乱に食べていたのだった。久しぶりのあっちの味、ジャンキーなものに飢えていたらしい。


「それにしても、つわりがあんなにきついとは思わなかったわよ。もうポテトが恋しくて恋しくて……やばかったわ」


 悪阻の時期は人によって食べられるものがかなり偏ると聞いたことがあるが、ナツミはよりによってこの世界ではほとんど見かけないものを食べたくなったのか。


「もっといっぱい持ってきたらよかったなぁ……」


 俺は大量に買い込んであった駄菓子の類を全てエイラとナツミに献上した。

 リンとレン、ベルタとも仲良く分けてくれてるといいが。


「次さ、もしさ、この子が元気に産まれたらなんだけど、ベビー用品とか欲しいなーオムツとか……」


 そういえばそういう方向性のお土産は考えてなかった。

 ライネたちの子供は本人やメイドさんたちが全員で力を合わせているが、ナツミたちは別の家だし、仕事を休んでいる間は満足に買い物もできないそうなので、かなり苦労しそうなのだ。


「任せとけ。大量に仕入れてきてやるから。そこは安心しろ。だがら身体を大事にするんだぞ?」

「うん……」


 今日はすぐに帰り、明日以降また近いうちに遊びに来る約束をしていた。

 なにしろうまく会えるかどうかもわからなかったのだ。どちらにせよ今日のところはすぐに帰るとライネに伝えてきたのだった。



「……別に1週間いたとしても、特定の日付に行けるんでしょ?」


「それはそうなんだが、俺自身の感覚がなー。なんか時差ボケみたいな感じになるんだよ。なんから次くる時は明日の朝とかに指定して飛んでくるけど」


「でもそれって、たとえば5年後のノユキだったりするんだよね」

「確かになー。それはそれで楽しいかもだけど今の俺が、エイラやナツミのことが心配だからちゃんと会いに来るよ」


 

「そっか、ノユキ自身の時間感覚の問題ってわけね」



 

 時間移動が出来るというのは、便利そうであり相手の感覚との意識のズレというか、感覚のズレのようなものが発生しやすい。

 俺は10年ぶりでも明日の日付に戻ればエイラにとっては1日ぶりなのだ。


 ユキネたちにだってそうだ。

 あれだけ盛大にお別れ会を開いてもらったのに、その翌日に俺が現れたら、ユキネたちからすれば微妙な気持ちになる。



 

 (そう考えると、今の俺より未来の俺……たとえば5年後の俺が、エイラに会いにきていないというのは、やっぱり思い出の齟齬が発生するからなのか?)



 

 もしくは過去や未来は1つではなく、この俺から繋がっている未来と、他の時間軸の俺から繋がっている未来は違うものとでも言うのだろうか。


 (……あー無理、混乱してきた)



 

「とにかく、リンとレン、ベルタにも会っていくでしょ?」

「あぁそのつもり……だけどエイラ、呼び捨てになってるんだな」


「えへへ……流石に仲間意識が芽生えちゃってね」

「大変だったらしいわよギルドと衛兵のほう」


 突然5人もまとめて子供ができ、しかも父親はもう居ないとくれば、いろんな勘ぐりがあったらしい。



「旅の商人で、次の街に行っちゃったからまた来るかもーって説明はしてあるのよ?」

「それにしても……あーまぁいいか」



 

 確かに残された方としては、ご近所さんたちにどう思われているのか問題もあるのか。



 

「んで、リンとレン、ベルタはどこにいるんだ?」

「3人は……というか、ナツミもこの家に住んでいるんだけど、いま3人ともギルドにかなぁ」


「リンとレンは警備隊の方って言ってたわよ」

「あーそうだった。なんか休み前の引き継ぎやら色々あるんだって」



 

 なるほど、そろそろ仕事をやめるようなタイミングなのか。そう考えた時にハッと気づいてしまった。



 

「あー、ごめんすっかり忘れてた。みんなそうなるってことはお金いるよな」


「へっ? い、いや、そりゃ蓄えは潤沢にあるわけじゃないけど大丈夫よ」

「うん、贅沢しなけりゃ問題ないから」


 2人して手を振りながら問題ないというが、これはどう考えても大丈夫ではない気がする。


「いやもうわけない、すっかり失念していた……苦労かけてすまん。ちなみにこの国お金ってどんなものがあるか見せてくれないか?」



 

 俺が持っているのはライネたちのいる国――アーガルズ王国のお金しかないため、両替する必要がある。


「えっと、ほんとにいいのよ……? 一応、この国のお金はこんな感じだけど……」


 そう言って財布代わりの皮袋からじゃらじゃらとお金を広げて見せてくれるエイラ。

 どう見ても殆どが銅貨で銀貨が何枚か混じっている。



 

「エイラ結構持ってるね」

「一応冒険者だったからね」


「これ、それなりにあるのか?」

「ええっと、これが銀貨で、こっちが銅貨、これが鉄貨……1人1ヶ月これぐらいあれば生活できるわ」


 そう言って貨幣価値をなんとなく教えてくれたのだが、明らかに後3ヶ月分もない。


「……俺が泊まった宿、一泊で銀貨何枚か取られたぞ? そんな金額で生活できるのか?」

「えぇ……できるわよ、心配しないで」



 

「ナツミさ、1日何食で、昨日は何食べた?」

「普段は1食よ。昨日はパンと干し肉」


 はい、ダメ男確定でした。


 本当にすまない気持ちが溢れてきて、自然と涙が溢れてきてしまった。



「えぇ、ちょ、何泣いてるの? ノユキ?」

「ちょっと待ってな」


 俺はマジックバックから金貨をベッドへじゃらじゃらと取り出しアプリを起動した。



 

「うわ……すごい量の金貨……」


『アーガルズ金貨100枚を、スルート金貨104枚+(優遇分4枚)に両替しますか』


 『はい』をタップすると、金貨が消えて再び現れた時にはこの国の金貨へ変わっていた。

 


 

「これでしばらく持つか?」


 金貨100枚、大体1000万相当だ。

 これだけあれば俺の感覚だけど5年はなんとかなるだろう。


 

「へっ、こ、これ私たちに?」

「当たり前だ」


「もっ、もらいすぎだよ」

「子供のためにもちゃんと栄養のあるものを食べるんだ。あと1日3食とは言わないからお腹が空かないようにだけはしてくれ」


「エイラ、この人言い出したら聞かないのわかってるでしょ?」

「ううーそうだけどさぁ……申し訳ないよ……子供が欲しいって言ったの私だし……そんなの」



 

 本当に申し訳ない気持ちなのか、エイラのピンと立っていた狐耳が見たことのないレベルで垂れ下がっている。

 


「エイラ、これは子供を育てるためのお金だと思ってくれ。俺とエイラの子供、元気な立派な子に育ててくれるんだろ?」

「――わっ、わかった! これで立派な子供に育てる……!」


 施しがダメなら理由を変えてみたのだが、こっちだとあっさりと受け入れてくれた。

 よかった。


「じゃ、じゃあとりあえず冬物の服とか、蓄えとか揃えないとね! リンたちと分けるから25枚ずつ……うわー何買おう……必要なものリストアップしようね、ナツミ」


 すぐさま必要なものをあれやこれやと浮かんでくるあたり、やっぱり足りてなかったんじゃないか。



 ナツミと2人で、何やら優先順位付けを始めたので先に訂正しておくことにしよう。



「これがナツミの分、これがリン、レンの分、これがベルタの分な」

 

「えっ……えぇぇぇっっっ!?」


 俺はマジックバックから1人あたり100枚ずつの金貨を取り出し、次々と両替していったのだった。

 

 

次回最終回、このあと21時投稿予定です!


もし気に入っていただけた方は「ブクマ」や下の評価【★★★★★】などよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] だよなぁ。 自分の子供産んでくれた女が、一日一食、パン干し肉なんていたたまれないわ。 テメェのメシ減らしてでも甲斐性みせにゃぁならんわ。
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