本題前にまさかの事実
リリーナのために用意したというお菓子たちは
甘いだけでなく、スパイスや塩味などの味のアクセント、
口に入れた時のほどけるバランスも計算されており、
どれも秀逸だった。
「だめです…こんな美味しいもの出しちゃ…!」
頬を押さえながら、幸せそうな顔で食べるリリーナ。
彼女の前にあるお菓子たちが、気持ちいいくらいに
どんどん無くなって行く。
「ふふっ、リリーナにこんなに喜んでもらえるなんて、
頑張って考えた甲斐があるわ。」
「ええっ!これ、メリンダ様が考えたレシピなんですか!?
天才……!!」
「そうね、遠い記憶も頼りにしつつ。
私にとっては懐かしい味なのよ、これ。」
「幼い頃にすでにこんな美味しいものに出会っていたなんて
とっても羨ましいです…!」
そんな話から始まり、演劇の話や最近の出来事など、
いつもカフェで談笑する内容で、しばらく盛り上がった。
コト…
メリンダがお茶を一口飲んで
カップをソーサーに置いたタイミングで
「お茶をお淹れしますね。」
と、グラフィムがすかさず新しいお茶を用意する。
さすが、出来る従者はレベルが違うなぁ、と
リリーナは感心した。
「グラフィム、ハチミツ多めに入れてちょうだい?」
「え、お嬢…やめときましょう。」
グラフィムは顔の前で手を振り、意見を受け入れない。
「どうして!」
メリンダは口を尖らせて言った。
「最近も着られなくなったドレスがあるでしょう。
連日のカフェ巡り分の我慢をどこかでしないと、着られるドレスが
どんどんなくなりますよ?」
「そんなことレディに直接いうんじゃないの!もうっ!
いいわ、我慢するっ!」
プイッとそっぽを向くメリンダを見て、
グラフィムは微笑みながら、カップにたっぷりハチミツを注ぎ手早く混ぜた。
「体を動かす時はつきあいますからね、お嬢。」
コト…
「入れときましたよ。」
彼女の耳元に顔を近づけると、
囁くようにそう言い、テーブルにそっと紅茶を置いた。
ざっくりと分けた前髪からのぞく、切れ長のオレンジアイが
メリンダを流し見る。
(お…や…?)
とたんにメリンダの顔が赤らみ、小さく震え始めた。
動揺しているのは明らかで、絞り出した言葉もぎこちない。
「か…かん…しゃ…するわ!コホッ!…ふう。」
(ははーん…?)
グラフィムは茶器を整えると、また女子同士の話ができるように
少し離れた場所まで下がり、目線を落とした。
それを確認すると、リリーナが真剣な顔でメリンダを見た。
「メリンダ様。」
「なあに?」
「ものすごくわかりやすいです。」
「え、…なにが…かしら?」
「…もうそんな赤い顔と、うるうる視線を見て
いくら鈍感な私でも、気付かない訳ないでしょう…?」
というと、メリンダの顔がまた赤みを帯び始めた。
普段見られない表情がとても初々しくて、
リリーナの真剣な顔も崩れてニマニマしてしまう。
「ふふっ…ほらぁ…!」
「うぅ……まぁそうね…お察しの通り。
す、す……き…、し、慕っているわ…!
じゃあ、もう、それを踏まえて、そろそろ本題に入るわよ。」
メリンダはお茶をこくり、と一口飲むと
少し赤みを持ちながらも、真剣な顔で返した。
「ああっと、はい!」




