勇者です。はじまりの街から出れました
最終話です。
最後までお読みくださった方ありがとうございます!
のどかな田園風景の街道がようやく終わりを告げようとしていた。
朝の太陽が俺たちを優しく包み込み、寝不足な俺たちを迎えてくれる。
「朝か……」
マリーを倒したのち、俺たちは無事、はじまりの街から出ることができた。
今は次の街へ向かっている最中だ。
リーシャ曰く、もう少し歩けば街が見えてくるとのことだ。
夜通し歩き続けたのでもうへとへとだ。
「ハヤト。おなかすいたわ」
「ガマンしろよ。お前のせいで荷馬車が壊れたんだからな」
「ラピスさん。お菓子でよかったら食べますか」
「い、いるわ!」
「リザ。あんまりラピスを甘やかすなよ」
「ラピスさんだって、昨日は頑張ったんですから大目に見てあげてください」
「ん、まぁそうだな」
「やった!」
「……グゥ~」
「あ、あの……ソニアさんもお菓子いります?」
「……」
「ソニア。なぜそこで俺を見る?」
「少年。食べていい?」
「俺の許可なんかいらねぇって。いいから食え」
「モグモグ」
『小僧。われらを餌付けするつもりか。モグモグ。こんな菓子ごときで。モグモグごっくん。ワシらを手懐けられると思うなよ』
「はいはい。食べながらしゃべらない」
いつの間にか、ソニアも俺たちの隊列に加わりいつもよりにぎやかだ。
ってか、なにげにティンクルベアのべアートとその子もついてきている。
人型のソニアならともかく、モンスターが街に入れるのか?
『小僧。心配するな。ワシらはこのあと、里へ帰るつもりだ』
「そうか、安心したよ。さすがに街には入れないからな」
あの後、いろいろあってべアートと俺たちは和解した。
いや、和解したと言っても一時的なものだが。
「べアート。私は残る。いいよね」
『好きにしろ。もう、お前を縛るものはない』
ソニアは魔女……マリーによって束縛されていたが、今はもう自由だ。
俺たちについてくるっていうところは少しだけ意外だったがまぁ、いいだろう。
ちょうど、前衛が俺だけしかいなくて火力不足だと感じていたんだ。
「ところで、おにーさん。契約のこと忘れてないやね?」
「う”」
そうだった。リーシャと契約したんだった。
10分で1万だっけ?
戦闘時間がたしか……。
「返却はいつでもええよ。書類だけ見といてな」
契約書類を渡される。
そこには秒単位で戦闘時間が記されていた。
俺たちが戦ってる間ずっと数えていたのか……。
「ん?」
書類を読んでいると2枚目があることに気づいた。
2枚目?
見るからに1枚目だけで完結しているのに2枚目?
「ハ、ハヤト。それは……」
ラピスが書類を奪おうとしてくるがヒラリと避ける。
ん……なになに。
「……ラピス」
「な、なによ」
「これはいったいどういうことだ」
書類の2枚目。
そこには尋常じゃない金額が記されていた。
500万シルバ。
「そ、それは……作戦に参加した冒険者たちへの報酬で……」
「ふむふむ。一人当たり10万シルバ。あと、手数料やらなんやら」
なるほど。今回の作戦のからくりがわかった気がする。
どおりで冒険者たちの士気が高かったわけだ。
こんな大金をもらえるんならみんな必死になるよな。
でも、そんなことはどうでもいい。
冒険者なんだから報酬を支払うのは間違いじゃない。
問題なのはこの書類のほうだ。
「なぁ、ラピス。なんで俺の名前が契約書に書かれているんだ?」
「さ、さぁ。ハヤトが無意識に書いたんじゃない?」
「なるほど、なるほど。じゃあ、この母印も無意識のうちってことか」
「そうなのよ。ハヤトがぐっすり寝ているうちに……ってしまった!」
「ほぅラピス。いや……この駄精霊! 覚悟は決まってるんだろ!」
「や、やめなさい! あんたは私の勇者でしょ。あんたを助けるためにやったんだからいいでしょ!」
「よくない! せめて事前に話してくれよ! お前は今日から酒抜きだ!」
「それだけはそれだけはやめてよぉ!」
「ふふっ。ラピスさんたち楽しそう」
「少年って意外とS?」
「そこ、人の不幸を笑うんじゃない!」
500万シルバだぞ。
まだ、初日の借金も残っているし、10分1万の借金もある。
それなのにプラスで500万シルバなんて。
「おにーさんたち。次の街や」
俺が悲嘆に暮れているといつのまにか次の街が見えてきたようだ。
べアートとはここでお別れ。
俺、ラピス、リザ、リーシャ、ソニア。
この5人でこれからあの街へ向かうんだ。
借金があるのは気が重いけど、これからあの街で新たな冒険が始まるんだ。
「ハヤト! 行くわよ!」
ラピスが呼んでいる。
こいつのせいで借金を背負ったけど、こうして冒険できるのもこいつのおかげだ。
「わかったから。もっとゆっくり歩こうぜ」
そうだ。ゆっくりでいいから進もう。
これからも俺たちの冒険は続くのだから。
FIN




