魂の欠損
私はファーディアと冒険した日数分行方不明だったので、周囲は私が何かひどい所に誘拐されていたのか、それとも山奥のどこかに捨てられて生還したのかと考えた。
女子高生誘拐監禁事件の出来上がりだ。
勿論警察などで証言も求められたが、私は何も覚えていないで通した。
笑ってしまうが、ファーディアとのことを口にしたらそれだけで私が異常者と思われるかもという現実的な思考ではなく、彼の死を口にしたら現実になってしまうかもしれないという考えによるものだ。
つまり、もしかしたら生きている彼が私を呼び戻してくれるかもしれない、という希望的観測からである。
彼はドルイドだ。
そんな可能性はあるでしょう!
でも、彼のよすがに巡り合う事もなく、私は何事もない顔をして年を重ねていくしかなかった。
魂が欠けてしまった私に、いや、初めてあんなに誰かを愛した私なのだから、他の誰かを愛するなんて出来るわけはない。
私は何事もない顔で人生を生き続けた。
それは以前に目指した生活と変わらない生活のようで、嘘くさく感じる生活となった。
私は大学に行かなかった。
私は公務員試験を受けたのだ。
そして高校の卒業から地元の役場で働いている。
安定した職場勤務のお陰か、私には犯罪被害者という過去があるのに、意外と見合いが多いのは純粋に驚きだ。
それだけ地方は嫁不足が加速しているのかもしれないが。
親は私が過去を吹っ切って結婚をする事を望んでいるが、私は結婚したくないからこそ一人で生きていける職業を選んだのだ。
両親には申し訳ないけれど、私はファーディアでないと嫌なのだ。
ぶぶぶ。
スマートフォンがメールの到着を知らせ、私は画面だけ見て再びベッドに横になった。
もうお昼。
お母さんがご飯だと声を上げる時間だ。
ドオオン。
「え、お母さん?」
大きな破壊音に慌てて起き上がって部屋の戸口を見ると、私は渦を巻いた水に襲い掛かられるところだった。
いや、濁った水が粘土のように形作った。
ああ、なんと、私の部屋の戸口には大きな犬の頭が突っ込まれているではないか。
「ファーディア!」




