とりあえず、現在地確認から
取りあえず、ファーディアが小枝で地面に絵を描いて説明してくれたところによると、私達がいる地点は湖水地方で、あと一週間歩けばスコットランドに辿り着けるだろうという事だ。
お前の足だったらな。
純粋な直線でも二百キロかなって感じだぞ。
それにしても、彼の描いた地図は驚くほど正確だという事に私はひどく驚かされたのだが、彼はこれはドルイドならば当たり前なのだと軽く答えた。
ドルイドはケルト人の歴史の暗記はもとより、森羅万象全ての理を知らねばならず、それら全てを間違えてはいけないのだそうだ。
当り前だと言った彼はすまし顔だが、彼の鼻の穴が少し膨らんだのを私は見逃していない。
さて、勉強のできない私がイギリスの地名を知っているのは、私が高校生で、鞄の中に地図帳が入っていただけである。
「何だそれは!その絵は誰のものだ!」
「え?」
ファーディアの出した少々怒った声に、私は少々驚かされた。
「どこのドルイドがミミにそれを与えたのだ!」
怒る意味がわかんないし、説明が面倒そうだな、と思った。
「私の世界の魔法が作ったもの。私はフリーハンドで地面に正確に地図が書けるファーディアこそ凄いと思う。」
「当り前だ。俺はドルイドになる男だ。」
まだドルイド未満の男は誇らし気に鼻を鳴らし、そして本来話し合わねばならない私達の行程の続きを彼は話し始めるかと思ったが、彼は私の鞄から勝手に私の大嫌いな数学の教科書を抜き出した。
そして、抜き出したそれをパラパラとめくり、ぷすっと噴き出した。
「下手糞な絵だが、鳥がパタパタと飛んでいる。これはミミの仕業か?」
パラパラ漫画が私の作だと、どうしてそこだけわかるのだろう。
ファーディアがドルイドになる男だからだろうか。
「ね、ねぇ、この変な線は何?」
私は話題転換のために、ファーディアが描いた地図の湖水地方の上部に引いてある線、地図帳には描いてない線を指さした。
ファーディアは自分で書いたその線を足で蹴るようにして消した。
「これは侵略者が俺達に蓋をしようとしているのだ。まだこの線の様にはできていないが、これは必ず完成する。」
「まだ完成していないんだ。」
「あぁ。建設中だ。だからここには兵士が沢山いる。」
「やっぱり、北上するのは、止める?」
「大丈夫だ。誓いは果たさなければならない。誓いはドルイドは決して破ることは出来ない。誓いは命が終わるまで縛られるものなんだ。お前もだ。ミミ。お前は俺とずっと一緒なんだよな。」
私は当たり前だとファーディアに答えたが、念を押すという事は、ファーディアは私を信じてはいないのだろうか。




