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お兄ちゃんと愛しきキョーダイ達  作者: 文房 群
お兄ちゃんの愛しきキョーダイ達
9/19

そんな日常の七男


 けっして他人と馴れ合わない系弟の、我が家の七男くんを紹介します。

 

 

 六男くんと同じ日に産まれた七男くん。

 そのためか六男くんの片割れとしてキョーダイの中で認識されてるし、当人達もお互いを片割れとして見ている、天然ジゴロな六男くんの片割れである七男くん。

 コードカラーは白色で、六男くんは黒色だから昔はお互いのことを「シロ」「クロ」と呼び合っています。うん、可愛い。

 そんな六男くんの片割れである七男くんは、それはもうとっても可愛い男の子で、一見女の子に見えちゃったりするぐらい可愛い子です。黙ってれば天使。

 キョーダイの中で一番スカートが似合います。いわゆる男の娘ってヤツですね!

 

 そんな花のように可愛い七男くんですが――――見た目は素晴らしくても中身はアレでして。

 外見はパーフェクトなんですけど、肝心の中身が、その…………全然可愛くなくて。

 

 

 頗る人間不信なんです。

 

 

 他人が信じられない、っていう面では次男くんと似通ってたりしますが、七男くんの場合は程度が半端じゃない。

 次男くんの場合、社交辞令として他人にも声をかけたりするけど、七男くんはそれすらしない。

 まず視界に入れようとしない。

 次に絶対に自分から話しかけない。

 最終的に同じ空間にいたくないから別の場所に移動する。

 こちらから挨拶してもチラッと一瞥するだけで後はスルーだし、話しかけても反応すら示しません。初めて七男くんと出会ってから一年ぐらい、お兄ちゃんがそうでしたもん。

 どうにかコミュニケーションを取ろうとして根気よく話しかけると、「うるせぇ」「黙れ」「話しかけてくんな」「死ね」といった暴言を吐いてきます。

 心折れかけるよね、初対面なら特に。

 

 別に七男くんのこの対応はその人個人が気に食わないとかそういう理由じゃなくて、全ての人に対してだから後々「そんなに気にすることじゃないかな」って思えるようになるんだけど。

 まあ、初めの方はすっごい傷付くよね。普通に。

 

 ああでも七男くんのこの態度はキョーダイに対してなら若干マシでして、言葉数は少ないですが喋ったり目を合わせたり、ちゃんと話に対して反応を示してくれたりします。

 それでも『俺に関わるんじゃねぇ』オーラはヒシヒシと出ていますが。

 お兄ちゃん、七男くんが大人になった時ちゃんと社会でやっていけるか心配です。

 

 そんな社会不適合なところが目立つ七男くんですが、七男くんは片割れの六男くんに対してだけは他と対応が違います。

 それこそ雲泥の差と言わんばかりに、百八十度変化します。

 その態度から七男くんに名付けられた称号が一つ。

 

 

 六男くんの専用シークレットサービス――――通称SP。

 

 

 それが七男くんの持つ、もう一つの名です。

 

 どういうことだってばよ、と思う人達にお兄ちゃんが説明して差し上げましょう。

 七男くんがいかに六男くんの事が大好きなのか。

 具体例を挙げると――――いや、あえて言わなくても普段の生活を見てて分かることなんだけど。

 

 七男くんはいつも、六男くんの後ろにいます。

 用事がない時でも六男くんの後ろに控えています。常にいます。

 たまに兄弟に引き止められて離れたりしますが、六男くんを見付けたらふらっとその後を着いています。たとえ七男くんが嫌いな人混みの中でも、まるでカルガモの子のように着いていきます。

 なんで六男くんの後ろを着いて回るのか、訊いてみたところ「なんとなく」と返って来ました。

 でもたまに六男くんを見失うと、明らか様に機嫌が悪くなっていくので、おそらく本能的な習慣なんだと思います。

 堂々たるストーキングだね七男くん!

 

 そして六男くんへ知らない人が話しかけると、まずその人を睨み付けます。黙って、じっと、睨み付けつけます。SPの渾名に恥じぬくらい目を光らせます。

 そこで七男くんが六男くんに話しかけるその人を『無害』だと判断すれば、何も言わずそのまま様子を眺めていますが…………ここで六男くんが困ったり、知らない人がしつこく迫ってきたりすると、『有害』と判断して六男くんの前に出て威嚇します。

 マジで威嚇します。

  サファリの肉食動物のように、本当に「ぐるるるるっ」と威嚇します。番犬かお前は。

 そして『有害』と判断したレベルが高ければ高い程、殺す気で攻撃してきます。容赦の言葉の欠片すら無いです。

 長男くんと四男くん曰く、これでもかなりマシになったそうですが、昔は無差別に攻撃していたそうです。

 かくいうお兄ちゃんも六男くんと初めて会った時、「よろしく」と握手しようと出した手を、六男くんの後ろから出て来た七男くんに叩き落とされましたが。

 ファーストインパクトで思いました。

 何この子、セ〇ム?

 

 さらに七男くんは非常に他人に触れられるのか嫌いで、兄弟はまだ触れる方として、キョーダイ以外から肩とか触れられるとガチギレします。

 どんだけ他人が嫌いなんだよ、と思うところですが、その一方で。

 

 

「アーニーキー、ヒーマーァー」

「……おもい」

 

 

 六男くんには超スキンシップをとります。

 気が付いたら手を繋いだり、本を読んでる六男くんに後ろからのしかかったりしてます。

 その上普通に「あーん」の催促をしたり、当然のように背中合わせで座ったり、一緒のベッドで寝たりします。

 明らかにキョーダイの距離感じゃないです。というか七男くん、六男くんにベッタベタしすぎなんですけど。

 他の兄弟との接し方に差がありすぎるんですけど、どういう事なんです?

 そのあたり気になって、プライベートはほぼ同じ時間を過ごしている六男くんと七男くんに訊ねてみると、片や不思議そうに小首を傾げながら、片や怪訝そうに眉を顰めながら言いました。

 

 

「だって片割れ(シロ)だし」

「だって片割れ(クロ)だし」

 

 

 シンクロして言いやがって、お前ら仲良過ぎかマジ天使。


 そんな一部凶暴な面がある七男くんは、今日も今日とて六男くん専属のSPをしているのでした。

 お兄ちゃんとしては七男くんの将来が心配です。

 いやだって、素でストーキングしてる時点でいろいろ危ないと思うんです、はい。

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