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嫌われ者の世界征服  作者: 芋けんぴん
レッツ、世界征服!
8/8

強欲な嫌われ令嬢

「だって、酷いよ。私は何も悪いことしてないのに、いきなり追いかけられるなんて。お陰で、家も今までの生活も失っちゃった。だから、私がこの世界で一番偉い人になって、もうこんな事が起こらないようにするの」

「素晴らしいです、オーリア様!」


まるでピクニックの計画を話すように、オーリア様は言ってのける。

まるで自分にとって簡単なことだ、とでも言っているようだ。

僕は、ついに目の前の人間が分からなくなってきた。


「…それは、国家に反逆するってことですか?」

「うーん…?まぁ、そうなるね」

「そんなに、恨んでいるんですか?」

「ん?」

「…トージャー殿下のことを」


その名前を出すと、オーリア様はあっと声を上げた。


「そう!私、あの人嫌い。うるさいから」

「う、うるさい…?」


容姿端麗、文武両道、何より身分関係なく人々に慈しみを与える、あのみんな大好きトージャー殿下のことがうるさいから嫌い、と言ったのか、この人は。

予想外すぎて、言葉を失った。


「私が何をするにも、ああしろこうしろって、うるさいんだもん。せっかく寝ようって思ったら、少しは勉強したらどうだって言うし、散歩に行こうとしたら、令嬢がひとりで出歩くものじゃないって怒るし」


…殿下はお前の親か。

そう言いたくもなったが、僕はそれを飲み込んだ。


「…至極真っ当では?」

「このモブ!口を慎みなさい!!」


オタが口を挟んでくるが、僕は無視した。

どうしてこの石は僕に当たりが強いのだろう。


「たしかにそうかもしれないけれど、私はその時どうしても寝たかったし、どうしてもひとりで散歩がしたかったの。それだけは、絶対に譲れない…しかもこの間のせいで、私は居心地のいい大好きな家も奪われた」


その瞬間、オーリア様の声色が変わった。


「私は、私の大事な場所と時間を、もう誰にも奪われたくないの」


先程まで穏やかだったその声が、今では身震いするほど冷えきっている。

彼女は、本気で怒っていた。


オーリア・カインノーラという人間は、何事においても無なのだと思っていた。

恵まれた環境も、学校も、人間関係にも無関心。

生まれた時から歩む人生が決まっていた彼女にとって、夢も希望もないだろう。

何に向かって生きていけばいいのか、分からない。

だから彼女は特に何かを頑張ることはせず、人の言うことを最低限こなす生活をしている……しかし、それは間違いだった。

オーリア様は、自分自身の欲のままに生きているのだ。

周りのことに一切気を止めず、自分を思って貰った忠告も無視して、我がままに生きてきた。

だから、授業もサボるし成績は最下位だし、悪い噂も気にもとめないし、殿下に婚約破棄されてもそれで心の傷を負っている様子もない。

それが、オーリア・カインノーラという人物なのだろう。


「そのために、私はこの世界で一番力のある人になる」


凛と発せられるその声に、彼女は本気で言っているのだと思った。

こんな子供みたいな理由で、本気で世界を征服しようだなんて思う人が、オーリア様以外にいるだろうか。

いや、絶対にいない。


ああ、この世に、こんなに面白い人がいたなんて。


全財産を賭けるギャンブラーを目の前で見ているかのように、僕の心臓は激しく高鳴った。


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