プロローグ 歴代最強魔王、解任される。
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「魔王――アドレッド・イア・ノウスを、満場一致で解任とする!」
「………………ほう」
――魔王城の一室。
俺ことアドレッドの前に並んだ配下の魔族たちは、少し緊張した面持ちで宣言した。魔王軍の議会にて決定された、魔王解任の一報を。
少しだけ間を置いてから、俺はこう口にした。
「理由を聞かせてもらおうか?」
すると、中でも発言力のある一人が叫ぶ。
「人間との共存を掲げるなど、魔族の誇りにかけて許せるものではない!」
そして、その言葉に連なるように。
他の魔族たちも口々に、俺へと向かって暴言を浴びせてきた。やれプライドはないのか、やれ人間とのハーフだからだ、と。
どれもこれも感情に任せたものばかり。
俺は大きくため息をついてから、立ち上がった。
「そうか、分かった。俺は今日限りで、魔王軍から姿を消そう」
次いでそう言うと、あからさまにどよめく魔族の一団。
しかし次第にそれは歓声となり、魔族への賛歌が鳴り響いていった。こいつらは本気で、現状を分かっていないようだ。
だが、あえて俺は何も言わない。
ゆっくりと部屋を出て、魔王城の外へと向かった。
「……バカな奴らだ」
そして、夜空の月を見上げてそう呟く。
最後に一度だけ、今まで守り続けてきた居場所を振り返り、想いを断ち切るように前を向いた。もはや俺には関係ない。
俺はただのアドレッド。
外見こそ人間だが人間に非ず、魔族でもない存在。
「さぁ、これからは自由に過ごすとするか」
だが、だからこその生活を思い描き、自然と笑みをこぼした。
これからは何にも縛られることはない。
こうして、魔王を解任された俺は――ただのアドレッドとなった。
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