1.冒険者になる魔王と、それを見た者。
――王都には、やはり活気があった。
魔王城近辺とは打って変わって、人間たちの笑顔に満ち溢れている。その様子を見ていると、半分は人間の血が流れている俺も心が躍った。
悪くないだろう。
ここで、悠々自適に生活をする、というのも。
「しかし、どうやって金を稼ぐか。それが問題だな……」
だが、当然生きていく以上は問題もあった。
当面の生活費――食事一つとっても、ある程度の金銭は必要となる。
そうなると、素性を隠して働かなければならなかった。そうなってくると、思い当たるのは人間であった母の話していた生業。
「冒険者、か……。それがいい」
身分は問わない。
素性を隠すにも持ってこい、というところだ。
俺は静かに歩みを冒険者ギルドへと向けた。そして、中に入る。
「ふむ、魔王城よりも散らかっているな。ここが、ギルドか」
第一印象は、雑然、という言葉がしっくりきた。
併設された酒場から漂う酒気が充満しており、昼間だというのに赤ら顔をした者もいる。俺はそんな景観にさえ笑みを浮かべつつ、受付へと向かった。
「済まない。冒険者登録をしたいのだが……」
「あぁ、はいはい! えっと、お名前は?」
「――アドだ。ファミリーネームは必要か?」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
そして、簡単な手続きをしてギルドカードが発行される。
その際に水晶に手を翳すよう言われた。
――これは、魔力測定の水晶か。
簡単に言えば、その者の能力を測るためのものだった。
しかし、目立つことは得策ではない。俺はそう考えて意識を集中させた。
「えっと、Fランクか……。気を落とさずに頑張ってね、アドさん!」
「あぁ、ありがとう」
魔力の量を最低ランクになるよう調整する。
すると、いとも容易く水晶は俺の魔力を誤計測した。Fランクというのは、もはや戦闘に出ることもおこがましい、という烙印に近い。
だが、それでいい。
あえて目立つようなことをして、素性がバレる方が問題だった。
「さて、これからどうするか……」
俺はギルドを出て、まだ日が高いのを確認して考える。
ひとまずは単独でダンジョンに赴くのも悪くはない、のかもしれなかった。いかんせん三日は何も食べていない。
食事をするためにも、金は必要だ。
「では、行くか」
そう独り言ちて、俺はダンジョンへと向かった。
◆
「ふん……。どこを見ても、薄い魔素に貧弱な魔物ばかり」
無詠唱魔法で、雑魚を蹴散らしながら。
俺はとにかくダンジョンの奥地を目指し続けた。
「ドラゴンに、ヒュドラ。アークデイモン……」
種族こそ同じだが、どいつも魔素の不足によって弱っている。
しかし戦闘意欲は旺盛らしく、こちらの魔力に反応したか、目に入ると即座に飛び掛かってきた。その姿勢は、魔王城に残してきた木偶共にも必要だろう。
そんなことを考えつつ、俺はすべて一撃で屠っていった。
魔素の欠片を売れば金になる。
そう話に聞いたので集めているのだが、このくらいでいいのか?
「ひとまず、街に戻るか」
俺は空間魔法で欠片を片付け、一息ついた。
そして、黙々とダンジョンを後にする。
だが、この時は気づかなかった。
「す、すごい……!」
俺の戦いを見ていた人物があったことに……。




