第七話 新魔法とロード
僕はすぐに『冒険の書』を出して2番目にセーブをすると、ステータスのページを見ることにした。レベルアップの時に新しい魔法を覚えた気がしたのだ。あの胸に飛び込んでくる感触はまだ慣れないけど同時に知識が入ってくる感覚が確かにあった。来い、回復魔法! もしくは水魔法でも構わない!
バサバサバサッ
ハルト(16)レベル3
☆新しい魔法を覚えました
職業:魔法使い
HP:40
MP:20
筋力:15
耐久:10
早さ:10
魔力:30
運:80
魔法:魂浄化、☆火球
装備:木の棒+10
次のレベルアップまで経験値あと100
おかしい。僕の運は最高にご機嫌なはずなのに回復魔法を覚えてくれない。火も悪くない。むしろ使える魔法といってもいい。でも今は違うのだ。全く何の運なのだろうか。しかもさっきのゴブリン戦では魔法を失敗している。めちゃくちゃ焦ったんだからね。ゴブリン狩りもやり方を少し修正しないとならないな。
まぁ、収穫としてはレベルアップするとMPが全回復するということだろう。魔法失敗も含めて4消費したはずなのに20になっている。HPとかも全回復するのかもしれない。このあたりは次回以降に確認してみよう。
とりあえずは引き続きゴブリン狩りかな。次にレベル上がったらワイルドボアにも挑戦してみてもいいかもしれない。
ふと周りを見渡すと首の曲がったゴブリンから頭が潰れたゴブリンまでとても酷い光景が広がっていることに気づいた。
ふぅ、これで血がドバドバ出てたら気持ち悪くなりそうだな……。とりあえず使えそうな武器は頂くとして、木の弓かぁ……。ゴブリンお手製と思われる小さな木製の弓が落ちている。飛び道具はとても欲しいのだけど簡単に扱えるとは思えない。
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
適当に拾って撃ってみたけど、結論から言うと却下。5メートルぐらいまでなら狙ったところに当てられるような気がしないでもない。しかしながら10メートル以上離れると絶対無理。そもそも矢が作れないから僕にとっては消耗品にすぎない。矢を撃つぐらいなら火球を撃とうと思う。一通り見渡した後、とりあえず予備の木の棒を1つ貰うことにしてまた少し離れた場所に移動することにした。
バサバサバサッ
火球 使用MP3
初級の爆発魔法。効果は敵単体を対象とすることができ、火球をぶつけることで小範囲に爆発を生み出すことができる。威力を調節することで簡単に火を起こすことができるため旅のお伴として重宝される魔法である。
後半はキャンプファイヤーとしての説明に特化しているような気がしないでもないが気にするだけ無駄だろう。便利な魔法であることに違いはないのだから。とりあえず一回試してみるか。
火球!
ズガーン!!!
首がいってしまっているゴブリンに左の掌を向けて魔法を撃つと結構なスピードで飛んでいき、首が半分もげるぐらいには爆発した。エグい威力だな……。意外と魔法って凄いのかもしれない。
これなら3体いや4体でも倒せるか。さっきは何だかんだいって6体を倒せているんだ。無茶はよくないがそろそろ喉の渇きも我慢出来なくなってきている。あと5回は火球が撃てるなら次は少しだけ攻めてみてもいいだろう。
さぁ団体のゴブリンよ、いつでも来るがいい。仲間の焼ける匂いに集まるのだ!
それからしばらくして木の下に集まってきたのは大量のワイルドボアだった。
「何でお前らが来るんだよ……」
ワイルドな食事をしやがってゴブリンが酷いことになっている。全部で20頭ぐらいかな。経験値30がいっぱい。全部倒したら経験値600。……あれっ、何とかして倒したいぞ。ワイルドボアめっちゃ倒したい。よ、よーく考えるんだ。4頭を火球で倒したらレベルアップでMPが全回復する。これを繰り返したらまたレベルアップ。よし、いける! 安易な考えではあったがこれはこれでなかなかいけるんじゃないだろうか。
問題は火球で確実にワイルドボアを倒せるかだろうけど、ゴブリンの首がもげるほどの威力だ。生き残ったとしても相応のダメージは受けるはず。生き残っていたら最後は相棒で暴れて仕留めてあげようじゃないか。
まぁ、本当にヤバい時は魂浄化を使いまくって逃げよう。あとは試したことないから出来るかわからないけど死ぬ前にロードしたらその場所に戻れるのかという疑問。
どうせ戻るなら死なずに戻りたい。あの経験は精神的にも何度もしちゃいけない気がする。いや、今試してみるか。
心の中で念じてみる。2番目をロードだ。
セーブデータ、マウオラ大森林2をロードします。……………ロード中……………ロード完了しました。
グラリと頭が揺れると急激に景色が切り替わっていく。時間が巻き戻っていく感覚があり気分が悪い。うえっ、目の奥がぐるぐると回っていて酔っているような気持ちの悪さが残る。
頭を上げて様子を伺うと、少しだけ前の光景。まだ焼けていない首の曲がったゴブリンが目の前にいた。
「成功したのか……」
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