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ありふれた日常

ドタバタ騒ぎからしばらく経ったある日のこと。


僕はいつもどおりあやめとして学校に通っていた。

今日は姫野さんは先に学校に行く用事があったみたいで僕一人だ。


なんだかすっかり、『白井あやめ』として板についてきてしまったなぁ。


最初はどうなることかと思っていたけど、毎日を過ごしているうちにだんだんと慣れてきていつの間にこれがありふれた日常になっている。

これってどうなんだろ……


「いいんじゃない?お姉さんの遺言なんでしょ?」


菫が耳打ちしてくる。

どうやら心の声が聞こえてたみたい。


菫には今までの経緯とか、お姉ちゃんのこととか、家庭のこととかこの二、三ヶ月でだいぶ話した。

大体のことは理解したみたいで、たぶん僕の事情を一番知る人になってしまったかもしれない。


「遺言って言っても一家のためになることをして欲しいってだけで、女子校に通えなんて言われてないんだけどね」


周りに聞こえないくらいの声で小さく独り言を喋る。

菫は本当にうっすらとしている以外は普通に喋れるし、普通の生身の人間と間違えるくらいだからつい話してしまう。


「まあそうだとしてもいいんじゃないかしら?お姉さんが本来は家業を継ぐことになっていてあやめがお姉さんの代わりをするためにここに通うなら」


あやめはお姉ちゃんで僕は達巴って名前がちゃんとあるんだけどね……。


あれ?

でも実際、死んじゃったのは達巴なのかもしれない。


だって、お姉ちゃんが生きていたら『白井あやめ』としてここに普通に通っていたはずだ。

でも今、僕はあやめとしてここに通っている。

じゃあ『白井達巴』はどこに行ったんだろう?


「あやめ、学校ついたわよー」

「あ、うん……」


僕は少しもやもやした気持ちを抱えつつ、教室へ向かった。





教室に着くとすでに姫野さんと楓は席についていた。

二人とも僕に気づいてくれたみたいでこっちに来てくれる。

とりあえず挨拶だよね!


「おはよう、楓、姫野さん」

「おはようございます~」

「あやめ、おはよー」


二人とも声を揃えて返してくれた。


「そういえば、姫野さんは学校早く来ないといけなかったみたいだったけど大丈夫だった?」

「はい!でも、今日は一緒に登校できなくてごめんなさい……」

「ううん、気にしないで大丈夫。それより用事ってなんだったの?」

「ちょっと自習をしようかなって思って、図書館に行ってたんです」


ん?学校でわざわざ自習しなくても寮に自習室あるよね……。

なんでだろ。


「え?寮に自習室あるのにどうして?」


と、僕が聞こうと思ったら楓が先にその理由を聞いてくれた。


「あ、参考書とかが図書館にいっぱいあるのでそのほうが調べやすくて捗るかなって思って……」

「ひぇーなずなちゃんめっちゃ真面目だねー、わたしなんか分からないところあったらそのままなのに」


いやいや、それじゃ全然勉強にならないでしょ楓。


「そういえばもうそろそろテストだけどあやめはテスト勉強どう?」

「うーん、私はまあまあかなぁー」

「まじか!あやめは勉強できるから今度教えて欲しいんだけど……」


あ、まずい。

お姉ちゃんは勉強めちゃくちゃできるんだった……。

どうしよう、このまま僕が勉強できなかったら楓にばれるよね!


やばいやばい!!

どうしようどうしよう!!


「あれ、あやめさんどうかしたんですか?具合悪そうな感じですけど」

「ええと、ええと、具合は全然悪くないんだけど!いやちょっと悪いかもだけど!」

「じゃああやめ、今度の週末教えてね!」

「え、ちょっ……」


きーんこーんかーんこーん


あ、チャイムだ。

とりあえず席に着こう。


って、どうしよう勉強何もできないわけじゃないけど教えられるほどできるわけじゃないし……

土日までに僕も猛勉強しないと。


そんな前途多難なありふれた日常を僕は送るのだった。


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