リィラ・グレーテ
皆様、おはようございます、島北です。
今回は前置き話です。最終話・第30話「リィラ・グレーテ」、どうぞ最後までお楽しみください!
「ふう~……今日も疲れました~」
―――静かな農村で仕事に精を出す一人の女性が、牛舎を後にして家の中に入っていった。
「……レニングさん……」
「ん?どうした、ソレン?」
「私……立派に宿屋の仕事、出来ているでしょうか……?」
「当たり前さ。たとえ、どこかで躓きそうになったとしても、僕は、大事な妻の為に、なんだってするさ」
「レニングさん……!」
―――若い男女の夫婦が、経営する宿屋の入口で座りながら語り合っていた。
「ああ、可愛いウェンディ……今日も、私の話を聞いてはくれないかい?」
「ニャーン!!」
―――静かな小さな村に建つ部屋の中で、老人が小さな猫を膝上に乗せて、柔らかい笑顔を猫に向けていた。
「……よしっ!あとはこの自律回路をコアに埋め込めば……!!」
―――堅牢な城の中の研究室で、少女がロボットの開発に精を出していた。
「ようやく完全なる復興を果たしたか……長い道のりだった……」
―――静かに街の入口で立ちながら、村の復興に静かに喜ぶ国王が涙ぐんでいた。
「お客さん……当店のバニーガールが怖がっておりますので……そこまでにしてもらえませんかね?」
「ひっ、ひいぃぃぃっ!失礼しましたぁぁぁぁ!!」
「全く……馬鹿な奴もいるもんだ。ほら、大丈夫だったか?」
―――大きなカジノの中で、しつこく男に付きまとわれていたバニーガールを助けた口調が男勝りなバニーガールが、退散していく男を鋭い目つきで睨んでいた。
「まったく……なんでいつもいつもこんなにたくさんの書類を見なければならんのじゃ……もう疲れたのじゃ!」
「何言ってるんですか!まだこんなに書類が残ってますよ!!早く片付けなければ、また徹夜になりますよ!」
「まあまあいいじゃないの~。少しは休憩が必要よ~」
「ライア姉さんは甘やかしすぎ!つい5分前に休憩取ったばっかじゃん!!」
「け、喧嘩はダメなのですー!」
―――のどかな集落の中に建てられた家の中で、多くの書類の束を見上げて失望している女性と、その女性の横で口げんかをしている3姉妹がいた。
「痛っ!……ここは…………ひぃっ!?」
執行人に激しく殴打され眼が覚めた少女は、大広間に設置された処刑台に縛られ、身動きが取れない状態でいた。
「な、なにこれ……どうして私、こんなところにいるの……!?」
「リィラ・グレーテ……今更ここで怖気づいたの?」
高みの見物といわんばかりに、豪華な椅子に座っている金髪の姫が、少女に冷たい視線を送っていた。
「どうして!?私はどうしてこんなところにいるの!?なんで!?」
「あなたが自分で言ったのでしょう?自分の兄を助けるため、世界を混乱に陥れ、他の国の国王を、そして……直接ではないにせよ、私の父、我が国の先代国王を謀殺したと……!」
「……いや……私は違う!私じゃない!!」
処刑台であばれている少女だが、当然ながら、縛られた身体は処刑台から離れることは無かった。
「痛いっ!痛いわよ!!」
そして、静かになるまで殴られ、ようやく、少女は処刑台にもたれかかった。
「嫌……もうこんなの嫌……そうよ、これは何かの夢……私には兄なんていない……いないの……そんな…………」
少女は絶望に苦しみながら、静かに涙を流していた。
「……あなたにこのような時間をあげるのも惜しいけれど……何か言い残したことは無いかしら?」
姫が、少女に静かに問う。
「私じゃないの!私は違うの!!やってない!!私は無実よ!!私に兄なんていないのだから!!ねえ、信じて!!信じてよ!!私には……」
姫は怒りに震えながら、少女の苦し紛れの言い分も聞かず、静かに右手をその場に挙げた。その瞬間、処刑台の横にいた執行人や、見届け人として来場していた国民が静まり返った。執行人は、斬首用の刃を抑えていた太い綱に、剣の刃を当てた。
「やって!」
姫の大きな一言が大広間に鳴り響くと、執行人は剣を横に薙ぎ、斬首用が刃を少女の頭上から落ちてきた!!
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!私に兄なんていない!!嫌あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
処刑台に身を縛られていた少女の首は、斬首用の刃によって斬り落とされ、首は、静かに処刑台の傍を転がった。少女の首の断面からは、見るに堪えない大量の鮮血がほとばしり、いつしか処刑台の周りに、血の海が出来ていた。
「これでこの国に!この世界は平和は訪れた!!死に怯えることない、元通りの世界の始まりです!!」
姫の高らかな宣言に、国民たちは大歓声を上げた。大広間に残響を残し、歓喜と涙が溢れた。死と隣り合わせの世界が終わり、ついに、幸せな毎日が享受できるようになった、この喜び。国民たちは、声に乗せて喜んだのだった。
「……神の御加護を……」
―――処刑台の脇から、静かに祈るシスター。極悪非道の罪人にすら極楽の祈りをささげ、涙する少女は、自らの両手を握り合わせて天を見上げた。
「あっ、あれ……一体どうしたことでしょうかー……」
「ちょっとネーニャ!何をやっているのよ!!」
「どうやら、206号室に予約を入れていた団体が2組いたみたいでー……後から来たお客さんがお怒りなのですよー」
「え、どういうこと!?ちょっと見せなさい!!……ってこれ、受付者ネーニャになってるじゃない!!」
「申し訳ないですー!」
「……仕方ないわ。他の空室の部屋を利用してもらいましょう。私がお客様に交渉してくるから、ネーニャは他の仕事をやってて。あ、部屋予約受付は禁止ね」
「分かりましたー」
―――街の宿屋で仕事につまずく少女と、それをサポートする女性が繁盛している宿屋を支えていた。
「……さてと……今日はここらで夜を越すかな……」
―――生い茂る森林の中で、ゆっくりと大木に横たわった旅人の少女が、明日の為の英気を養うべく、静かに、深い眠りに落ちていった―――
最終話・第30話「リィラ・グレーテ」、(この小説的な意味でも)最後まで読んでいただきありがとうございました!!
約1年にわたって連載してきました「伝説の神と勇者の冒険」シリーズも、ついに終わりました。たびたび記述していますが、この話に込めた僕の思いは伝わったでしょうか?
僕はこの物語を勧善懲悪に書きたかったわけではありません。僕は、この世界の無情さ、儚さを書きたかったのです。運命を変えることも不可能だという無情。リィラ・グレーテという愚か者を通じて、皆様に伝わっていればと思います。
「伝説の神と勇者の冒険」シリーズ、楽しんで読んでいただけましたでしょうか?僕は少し心配です(笑)。ですが、ここまで僕が書ききれたのは、この小説を読んで下さった読者様がいらっしゃったからです。本当にあるがとうございました!また、感想などもお待ちしております。お気軽に感想を送っていただければと思います!
では、ここでお別れです。もし、また会うときがあれば、その時にお会いしましょう!
今までご愛読いただき、ありがとうございました!!




