第二十四話 さーて、残敵掃討という名のボーナスステージゴブ! 雑魚ゴブ狩りはエリートゴブのゴブリオに任せておくゴブ!
「ボスオーガを倒した〈ストレンジャーズ〉が通るゴブ! 死にたいヤツからかかってくるゴブ!」
オクデラが雑魚オークの攻撃をタワーシールドで防ぐ。
【体力回復】やさっき追加でかけた〈領域治癒の効果もあって、オクデラは左腕も問題なく使えてる。
アニキが無防備になった雑魚オークの目に棍を突き入れる。
俺が石を拾って【投擲術】で投げまくってまわりのゴブリンを減らす。
楽勝すぎゴブ! オークもゴブリンも、上位種じゃなければ俺たちの相手にならないゴブなあ! ボスオーガも強オークもいないいま、俺たちを止められるヤツはいないゴブ! ただでさえ雑魚なのに俺たちにビビって背中見せて逃げようとするとかおバカすぎィ!
俺とオクデラ、アニキ、シニョンちゃん。
ボスオーガを倒した〈ストレンジャーズ〉は、川から離れて進んでる。
まだ4000以上いるはずなのに、絶対的強者だったボスを殺されて逃げはじめたゴブリンとオークを蹴散らして、ニンゲンたちと合流するために。
ゴブリンレンジャーの俺と覚醒オクデラと新型アニキの前に数を揃えたって意味ないゴブな! この世界じゃ量より質が大事、雑魚じゃ絶対的強者に適わないゴブ! 雑魚ゴブは大人しく俺のライフポイントになるゴブ! ゲギャギャッ!
雑魚ゴブと雑魚オークを蹂躙しつつそんなことを考えてるけど、油断はしてない。
シニョンちゃんはオクデラの背中から下りて周囲の警戒をしてるし。
驕れるゴブもひさしからずだから! ボスオーガはめっちゃ強いのに殺されちゃったし! さすが油断しない男ゴブリオ、大群と強敵相手に二回しか死んでないだけあるゴブなあ!
一回はオオカミのせいで死んだけど。
アイツはきっとただのオオカミじゃなくてグレイウルフだったゴブ。それかフェンリル的な?
左側にはタワーシールドとハルバードを持ったメイン盾のオクデラ、中央に近接担当のアニキ、右に斥候と遠距離攻撃とリーダー役の俺ことゴブリオ、うしろに回復役のシニョンちゃん。
シニョンちゃんはいなかったけど、思えば〈果ての森〉で三人で練習したフォーメーションだ。
あの頃と比べたら俺たちほんと強くなったゴブ!
あの頃は三人しかいなくて、里のゴブリンにも剣シカや火を吹くクマにもビクビクして、角ウサギを狩ったら肉が食べられるって三人で喜んで。
思えば遠くへきたもの……とか考えてる場合じゃなかったゴブな!
余裕すぎて逸れそうになる思考を戻して、ゴブリンとオークを蹂躙していく。
戦ってるのは俺たちだけじゃない。
投擲の合間に、俺たちが向かう先をチラッと【覗き見】する。
『勇敢なる港町の男たちよ! 我に続け!』
逃げ惑うゴブリンを戦車でひき殺していくド派手な領主。
『領主様を孤立させるな! オーガは死んだ、強敵はいない! 落ち着いて進め!』
騎馬兵がその後に続いて、逃げようと背中を見せるゴブリンやオークを蹂躙してる。
馬に乗ってない兵士と冒険者は固まって戦列を作り、手堅く殺していってる。
しょせんゴブリンもオークもおバカゴブなあ! これが烏合の衆ってヤツゴブか? 4000はいるんだし、まとまればまだ戦えるのに! これじゃただのボーナスステージゴブ!
強敵はもういない、雑魚の数は多いけど戦意は低い。
戦車と騎馬兵が戦場を駆けまわって、ゴブリンとオークをさらに混乱させる。
おまけに、指揮しようとするモンスターを俺が【覗き見】や【聞き耳】で見つけて、【隠密】で忍び寄って【短剣術】で殺すか【投擲術】で仕留める。
遠すぎるヤツは諦めてるけどね! 俺のスキル構成、乱戦にピッタリゴブ!
『よしオクデラ、次はあの群れに突進ゴブ!』
『ワカッタ!』
ボスオーガを倒して増えたライフポイントがさらに増えていく。
俺も強くなったゴブなあ! 〈果ての森〉でビクビクしてた頃が懐かしいゴブ! だからほら、そろそろ【森の臆病者】の称号消えない? それかオクデラやアニキみたいに変化するとか! もう俺チキンじゃないと思うんですけど! ゴブリンなのは変わらないけどね! ゲギャギャッ!
□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □
最初にゴブリンと戦い出してから、どれぐらい経ったか。
ボスオーガを倒してから、掃討戦をはじめてから、どれぐらい経ったのか。
【体力回復】スキルでも回復しきれない疲れを感じる。
『みんな、大丈夫ゴブ?』
『オデ、平気』
はあはあ荒い息の合間に応えるオクデラ。
ケガはないけど、俺と同じでオクデラも【体力回復】しきれてないみたいだ。
もともと力が強くて【腕力強化】があったとしても、重いハルバードとタワーシールドを振りまわしてたんだし。
よく考えたらすごいゴブなオクデラ! 純情なのは変わらないけどほんと強くなったゴブ!
『私も、大丈夫です。魔法は、使い切っちゃいました、けど』
シニョンちゃんの息も荒くてオクデラと違って色っぽいゴブな! じゃなくて!
ボスオーガ戦のあとは、シニョンちゃんはずっと俺たちについてきてた。
戦う力がないシニョンちゃんにはけっこうしんどかったと思う。
でもシニョンちゃんは、俺とオクデラとアニキを信じてついてきてくれた。
ほんといい子ゴブなあ! 優しくて信じやすくて魔法が使えてはあはあ呼吸するたびにおっぱいが、おっといまそれどころじゃなかったゴブ!
『問題ない。ゴブリオとオクデラがほとんど倒してくれたからな』
アニキは大丈夫そうだ。
新型アニキは強くて、でもそれより安定してたのがデカい。
大振りになったオクデラのスキをカバーしたり、シニョンちゃんを狙って回り込もうとしたゴブリンに気付いて殺したり。
さすがアニキ、頼りになるゴブ! アニキがいなかったらシニョンちゃんを連れてこれなかったゴブな! 頼れるうえに新型アニキになって強くなってしかも謙遜して、え、ちょっとアニキ完璧すぎませんかねえ!
『ゴブリオ、次はどうする?』
アニキに聞かれて、俺はまわりを見渡す。
港町の前、農地より離れた場所にある草原。
戦場になったそこには、無数の死体が転がっていた。
ボスオーガが死んでからモンスターたちはバラバラに動いてたし、逃げたゴブリンやオークもいるだろうけど。
いま見渡す限り、動くゴブリンやオークの姿はない。
おっと、俺がいたゴブ! 敵ゴブリンは死んだか逃げたけど、ここに動くゴブリンがいたゴブ! まあそこらの雑魚ゴブリンと違うエリートゴブだけど!
あ、オクデラもいましたわ! 動くゴブリンは俺だけ、動くオークはオクデラだけゴブ!
ほかに動くモンスターはもういない。
ニンゲンが俺たちに近づいてくる。
……あれ? これヤバくない? ゴブ即斬されないよね? 漁村の冒険者やコワモテのおっさんもいたし大丈夫だよね?
ゆっくりと進むド派手な戦車と騎馬、徒歩の兵士や冒険者も俺たちに向かって歩いてくる。
あ、あの、800人の武装したニンゲンたちが近づいてくるって圧迫感スゴイんですけど。
だ、大丈夫ゴブな? まさかここからニンゲンたちに追われる修羅場ははじまらないゴブな?
ちょっとビビる俺、さっきまで調子に乗って無双してたのに小心者な男ゴブリオ。
くっ、いざって時は俺とオクデラだけで逃げるゴブ! アニキとシニョンちゃん? ほら、アニキはリザードマン扱いされてるし、シニョンちゃんはニンゲンだし、二人は大丈夫ゴブ!
逃げ腰な俺の前に、領主が戦車から下りて近づいてくる。
後ろに続く兵士も、馬から下りた。
そして。
『ゴブリン、オーク、変わったリザードマンに巡礼者よ!』
でっぷり太って装飾過多な鎧のガマガエル、おっと、領主が俺たちに呼びかけてきた。
……ひざまずいた方がいいのかな? ゴブリオゴブリンだからよくわからないゴブ! 元人間だけどこっちの世界のニンゲンの礼儀とか知らないし! ハハッ!
シニョンちゃんが動かなかったし、とりあえず立ったまま領主に顔を向ける。
『漁村ペシェールの冒険者パーティ〈ストレンジャーズ〉よ!』
おお、言い直した! しかも俺たちのこと知ってる! というか領主の横に並んだのはコワモテのおっさんゴブ! よかった、じゃあ敵ゴブ扱いされて襲われることはないはず! ないよね? 俺おっさんに何もしてないもんね? ほ、ほら、借りてたミスリルの短剣はちゃんと返すつもりだったし! そんな借りパクしようなんて一瞬たりとも考えたことないし! ゴブリオ死体漁りはするけど窃盗はしないゴブ! しないゴブよ?
領主が手をかざす。
ニンゲンの、何かの合図だったんだろう。
コワモテのおっさんが、後ろにいた兵士と冒険者たちが、一斉にひざまずいた。
最後に領主もひざまずく。
俺たちに向かって。
ゴブリンとオークに向かって。あとアニキとシニョンちゃん。
『〈ストレンジャーズ〉がいなければ、この勝利はなかっただろう!』
領主の言葉に頷くニンゲンたち。
目から汗が出そうになる。
俺たちの戦いはムダじゃなかったって認められて。
『この地を治める領主として、〈ストレンジャーズ〉に感謝を!』
領主が、兵士が、冒険者が、俺たちに頭を下げる。
元人間のゴブリンと、オークを滅ぼしたいオークと、種族不明の新種と、ニンゲンが怖いニンゲンに。
はぐれ者たちに、〈ストレンジャーズ〉に。
『領主として、この地に住まう一人として、港町の英雄を讃えよう!』
パンパンと手を叩く領主。
拍手はコワモテのおっさんに、続けて冒険者と兵士に広がっていった。
俺たちを讃える大きな拍手。
ときどき聞こえるニンゲンの歓声は悪ノリした冒険者たちだろう。
ちょっ、『疑っててすまん』って言ったの誰ゴブか! いまそれシャレにならないゴブ! あとそこ! 『巡礼者さますげえ』って魔法のことゴブな? おっぱいのことじゃないゴブな? シニョンちゃんは誰にも渡さないゴブ!
ニンゲンたちは立ち上がって俺たちを囲む。
攻撃するためでも逃がさないためでもなく、喜ぶために。
『ここに宣言する! 〈ストレンジャーズ〉の活躍によって、港町と漁村の男たちの手によって……我らの勝利だ!』
おおおおお、と地鳴りがするほどの歓声があがる。
俺も、オクデラも、アニキも、シニョンちゃんも、ニンゲンたちも。
種族なんて関係なくて、ニンゲンを、街を守った同志として喜び合う。
くっ、ゴブリオ目から汗が出てきちゃうゴブ! 鬼の目にも涙ってね! ほら俺ゴブリンだから! 小鬼だから! ゲギャギャッ!
次話は9/29(金)18時更新予定です!
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