第二十三話 ゴブリオ、復活! 気乗りしないけどここはゴブリンとオークの流儀に則ってやるゴブ!
『ただいま、オクデラ!』
『ゴブリオ! オデ、待ッテタ! ゴブリオ、生キテルッテ!』
『ゴブリオさんゴブリオさんゴブリオさん!』
だからただいまって何だよ! そんでシニョンちゃんにひざ枕で抱きしめられてるのにオクデラに言うのね! まあしょうがないね、いつものことだから!
シニョンちゃんのやわらかい感触を考えないようにして、俺はまわりを【覗き見】する。
じゃないとゴブリオのゴブリオがゴブっちゃうからね! いやそういうことじゃなくて!
目の前には、なんとか相討ちで倒したボスオーガの死体。
よし、俺と違って復活しないゴブな! コイツが生き直しできたら俺もうどうしたらいいかわからないゴブ! さすがに奥の手はもうないです!
シニョンちゃんは俺をひざ枕してて、オクデラは泣きながら俺に抱きついてる。
急いで種族とスキル選択を終えたからか、時間はあんまり経ってないみたいだ。
俺は復活できるって説明してから三回目の死なのに、二人とも心配だったらしい。
強オークとボスオーガと戦った時の迫力はどうしたオクデラ! 涙と鼻水とヨダレでえらいことになってるんですけど! ひさしぶりの純情弱気オークっぷりにゴブリオむしろ安心したゴブ!
二人から目を離して周囲を見る。
ボスオーガの【統率】を離れたゴブリンとオークの大群はニンゲンと戦ってる。
ボスオーガの威圧感がなくなったからか、こっちに来ようとする雑魚ゴブもいる。
アニキが仕留めてるけど。
『復活したか。信じていたぞ、ゴブリオ』
くっ、生き直しを信じて、俺とオクデラとシニョンちゃんを守るために戦ってたとかアニキはあいかわらずかっこいいゴブ! さすが新型アニキ!
今回、いつもの空間で、俺はまたゴブリンレンジャーを選んだ。
とりあえずスキルは取らずに、溜まったライフポイントはそのままにした。
一番の強敵は倒したからね! 雑魚ゴブと雑魚オークとオオカミぐらいいまのスキルと種族で蹂躙してやるゴブ! 属性魔法のスキルを取れば魔法を使えるようになるから、それだけはちょっと迷ったけど!
でもほら、すぐ使いこなせるわけじゃないし。
シニョンちゃんの【光魔法】のレベルが低かった頃、あんまり強い魔法は使えてなかったし。いまはこれで充分ゴブ!
ちなみにライフポイントは372、ゴブリンレンジャーを選んだから352になったけどそれでも過去最高です! オーガは4000LPも必要で選べなかったけどね! でも4000LPってボスオーガの強さを考えたらお得な気もする、というかむしろニンゲンが100万LPっておかしいでしょ! あと99万9648LPって遠すぎィ!
グチグチ考えるのを止めて、俺はもぞもぞとシニョンちゃんのひざ枕から抜け出した。
『ゴブリオさん?』
『シニョン、戦いはまだ終わってないゴブ! 喜ぶのは勝ってからにするゴブよ!』
そう言って立ち上がる。
俺につられて、シニョンちゃんとオクデラも立ち上がった。
『〈聖戦〉と〈聖域〉はまだ効いてるゴブか? また使えるゴブか?』
『えっと、〈聖戦〉の効果は切れました。ほかの魔法ならあと二回使えそうですけど、〈聖戦〉は使えないみたいで……』
しゅん、と気落ちした様子で答えるシニョンちゃん。
〈聖戦〉は他とは違う特別な魔法らしい。
超広域に強力なバフがかかってたし、きっと何か条件があるんだろう。
それっぽい詠唱だったしそうじゃなきゃあの魔法は強すぎるゴブ!
『問題ないゴブ! じゃあアニキとオクデラにダメージがあるはずだし、〈領域治癒〉を使ってほしいゴブ』
『わかりました!』
アニキとオクデラは、体を張ってボスオーガの攻撃を止めた。
見た感じは大丈夫そうだけど、ダメージを受けてないはずがない。
このあとの相手は雑魚だけど、治しておいた方がいいだろう。
シニョンちゃんの魔法が発動してアニキとオクデラに光が届いたのを見て、俺はオクデラに声をかける。
『オクデラ、頼みがあるゴブ』
『ワカッタ!』
素直すぎるぞオクデラ! まだ何も言ってないから! いま『わかった』って言ったよね?って無理難題とかエロいこと頼まれたらどうすんだよ! いや頼まないけどさあ!
『戦いを終わらせよう。ボスオーガの死体を、持ち上げてほしいゴブ。遠くからも見えるように』
『ワカッタ! コウカ?』
自分にできることがあるとうれしいのはあいかわらずで、オクデラはすぐに動く。
スキル【腕力強化】があるからか、軽々とボスオーガの体を持ち上げた。
さらし者みたいであんまり気乗りしないけど、しょうがない。
使えるものはなんでも使うゴブ! じゃないといま戦ってるニンゲンたちが危ないし! あと申し訳ないけどアニキはもうちょっとだけ俺たちを護衛してね! ちょっとだけ、ちょっとだけだから! 先っちょ……そういうんじゃないゴブ!
小石が詰まった布袋を踏み台にして、オクデラが脇に手を入れて持ち上げたボスオーガに並ぶ。
まわりを【覗き見】して、すうっと息を吸い込んで。
俺は叫んだ。
「ボスオーガは俺たち〈ストレンジャーズ〉が討ち取ったゴブ!」
どっちも理解できるように、【人族語】と【ゴブリン語】で、同じ内容を二回。
一瞬、戦場が静まり返って。
『うおおおおおおお!』
『マジかよ、アイツらマジでやりやがった!』
『おいよそ見すんな! 好機だ、押しまくるぞ!』
一気に騒がしくなる。
「そんな、王が、あんなに強かった王が、ありえないゴブ……」
「お、王より強いヤツがいるってことゴブ!? 聞いてないゴブ!」
ニンゲンの歓声と、ゴブリンとオークたちの悲鳴と。
はあ、ここから先はもっと気乗りしないゴブ。
でも。
ゴブリンとオークにとって、それをしないのは侮辱らしいから。
ニンゲンには理解されないかもしれないけど、それでもいい。
最期まで武人だったボスオーガの尊厳を守るために。
踏み台がわりの布袋に乗った俺は手と足を伸ばして、ボスオーガの胸に刺さったままのミスリルの短剣を掴む。
抜く前に、ちょっと動かして。
短剣を引き抜いた。
ボスオーガの心臓の肉片ごと。
「強かったボスオーガは死んだ! 次はお前らの番ゴブ!」
そう言って、俺はボスオーガの心臓の肉を口に入れた。
血の味がする。
あとくっそ固いんですけどコレ噛み切れないゴブ! 吐き出しちゃダメゴブか? でも喰わないのが最大の侮辱なわけで、口に入れたのに吐き出したらどうなるゴブか? セーフ? アウト?
アニキに確かめたいところだけどアニキは戦ってるし口の中はいっぱいで言葉が出ないし。
がんばって無理やり飲み込んだ。
さっき【ゴブリン語】で叫んだ内容も、本当は「敬意を払って」とか、もっとかっこいいことを言おうかと思ったんだけど。
そもそもコレをやるのは、ゴブリンとオークの士気をくじくためで。
『オクデラ、もう下ろしていいゴブ』
『ワカッタ!』
オクデラは素直に、持ち上げてたボスオーガの体を下ろす。
敵ゴブと敵オークは、ボスオーガの死に、目に見えて動揺していた。
強さを知ってたんだろうし、倒した俺たちが追撃するって宣言したしね! 動揺してるってことはチャンスゴブ!
『オクデラ、シニョンちゃんを背負って突進の準備を! シニョンちゃんは自分の判断で〈治癒〉系統の魔法を使ってほしいゴブ!』
俺たちのまわりに敵ゴブと敵オークは少ない。
ちょっと向かってきてるけど、アニキ一人で倒しきれるほど。
ここで戦う分には余裕だし、小舟もあるから逃げ道もある。
でも、俺たち〈ストレンジャーズ〉は。
『ゴブリオ、準備デキタ!』
『私、がんばります!』
『アニキは大丈夫ゴブか?』
『ああ、問題ない』
隊列を組み直して。
『よし、じゃあ行くゴブ! ニンゲンを守るために!』
ニンゲンが、戦車と騎馬兵と兵士と冒険者が、モンスターと戦う場所に向かって走り出した。
ボスオーガは倒したし、強オークも重装歩兵オークも倒したけど、まだ雑魚どもの数はいるからね! ニンゲンを守るために蹴散らしてやるゴブ! まだ雑魚オークは残ってるわけで、オークを滅ぼしたいオクデラを手伝うって言ったしね!
それに……。
100万ライフポイントまでまだまだ足りないゴブ! ほらほら雑魚ども、ライフポイントを寄越すゴブよ! エリートゴブになったゴブリオの無双タイムゴブゥ!
でもニンゲンを守るためっていうのも、オークを殺したいオクデラのためっていうのも本当ゴブよ? 俺ゴブリオ、ウソはつかないゴブリンゴブ! ゲギャギャッ!
次話、9/22(金)18時更新予定です!
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