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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜  作者: 坂東太郎
『第四章 港町 デポール』

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第二十二話 長かったボスオーガとの因縁も戦いもこれで終わりにしてやるゴブゥ!


 ボスオーガと一対一の戦い。

 いいのを一発もらったら死ぬギリギリの戦いだけど、俺はこれで二度目だ。

 当たらなければどうということはないゴブ! それにあの時はゴブリンリーダーでいまはゴブリンレンジャー、しかもスキルも充実してるしね! なんとか【回避】できてるゴブ!


 俺はさっきまでと変わらずボスオーガと戦ってるけど、まわりはどんどん状況が変化してる。

 港町から打って出たニンゲンたちにも、シニョンちゃんの魔法〈聖戦〉のバフ効果がかかったみたいだ。

 戦車と騎馬兵はゴブリンとオークを突破して、大群のうしろに出た。

 今度は側面をぐるっとまわって数を削るつもりらしい。

 ド派手な戦車に乗ったガマガエル、実は有能っぽいゴブな! 悪徳貴族みたいな格好して意外にやるゴブ!


 徒歩組の兵士と冒険者は、包囲されないように隊列を組んでいる。

 強オークも重装歩兵オークももういなくて、ボスオーガは俺と戦ってて、ニンゲンたちが相手してるのは雑魚ゴブと雑魚オークだけだ。

 ボスオーガの「自由にしろ」発言でモンスターはバラバラに行動しだしたから、囲まれなければ問題ないゴブな! ゴブリンと冒険者、一対一なら新米冒険者でも余裕で勝てるし!


 紙一重だけど、いまのところニンゲンたちはゴブリンとオークの大群相手にうまく戦ってる。

 これシニョンちゃんの〈聖戦〉のバフがなかったら危なかったゴブな! もうちょっと作戦ないゴブか? 俺ゴブリンだけど俺だって作戦立てるよ?


 そう、作戦。

 ニンゲンたちが打って出て、ボスオーガが統率をやめてまわりの雑魚がここから逃げていったおかげで、舞台は整った。

 俺は意味もなくちょろちょろ逃げてたわけじゃないゴブ! シニョンちゃんいわく善良で勇敢なゴブリンだからね! 称号はいまだに【森の臆病者(チキン)】だけど! ハハッ!


 ボスオーガの蹴りを、股下を潜ってかわす。

 頭上は見ない。

 鬼のくせに鬼のパンツをはいてないことは前回でわかってるから見ない。

 すれ違いざまに斬りつけたのは太ももの内側だ。

 ……さすがにゴブリオも頭上は攻撃できなかったゴブ! 武士の情けってヤツゴブな! もしめっちゃ効いちゃったら、いろいろ液体浴びちゃいそうでね? 鬼畜生にはなれなかったゴブ! 俺ゴブリンなのに!


 【回避】して【短剣術】で斬りつけて【逃げ足】で距離を取る。

 俺の背後にいるシニョンちゃんは、いまも祈ってる。

 ひょっとしたら〈聖戦〉の魔法を維持するのに必要なのかもしれない。

 使ったら終わりじゃなくて、祈っている間はずっと効果を発揮する的な? 神様がもうちょっと前に啓示をくれれば検証できたのに! さすが運命神、気まぐれゴブなあ!


 ちょっと距離が開いたけど、ボスオーガは詰めてこない。

 ファイティングポーズを取って、じっとこっちを見つめたまま。

 そんなに見つめられたらゴブリオ照れちゃうゴブなあ! ウソですそっちの趣味はありません! 俺にはシニョンちゃんがいるからね!


「本気の我とやり合えるとは。強くなったな、ゴブリンよ」


 ニヤッと口の端を持ち上げてうれしそうに笑うボスオーガ。

 あいかわらずの戦闘狂だ。


「でもけっこういっぱいいっぱいゴブ!」


 はあはあと肩で息をして応える俺、雑魚ゴブ……じゃなかったゴブリンレンジャー。

 いっぱいいっぱいなのは確かだけど、息が上がってるのは演技だ。

 俺は【体力回復】スキル持ちだし、〈聖戦〉のバフは身体能力強化と体力回復っぽいし。

 ずっと戦い続けてるから疲れててもおかしくないのに、疲労感はない。

 ほらほら、ゴブリオ疲れてるゴブよ? 油断してくれないゴブか? 演技だけどね!


「我がおまえを見くびることは、もう二度とない」


 くっ、前回おちょくりすぎたゴブ! モンスターのクセに学習してるゴブなあ!


 諦めて間合いを詰める。

 右手で短剣を構えてチクチク突き刺す、と見せかけて【投擲術】で短剣を投げつける。

 続けて神経毒付き棒手裏剣、火炎ツボ、投げナイフ、目つぶし入り卵。

 フルコースでお見舞いしてやるゴブ! どーれが当たるかなーっと!


 左右の手で投げまくって、結果を見ないで後を追うように走る。

 接近するわずかな間に、腰につけてた短剣を抜く。

 短剣を持ってた方が【短剣術】が働いてラクになるからね! ゴブリオ学習してるゴブ!


 連続した投擲をボスオーガが防ぐ間に、あわよくば俺を見失ってくれないかと【隠密】を意識しながら近づく。

 ボスオーガがフウッと息を吐いた音が【聞き耳】で聞こえてくる。

 俺が【覗き見】たのは、攻撃をさばくボスオーガだった。


 短剣は側面から足で弾かれ、神経毒付き棒手裏剣は左手の指の間で止められた。

 前回も見せた火炎ツボは、形で気付いたんだろう。

 右手でそっと軌道を変えて、後方へ受け流した。ツボを割らずに。

 投げナイフはまた蹴りで、目つぶし入り卵は火炎ツボと同様に手でそらされる。


 コイツ成長してるゴブなあ! そんで目が合っちゃったゴブ!


 投擲をさばききったボスオーガが、俺に右の拳を振るう。

 ボスオーガの赤い拳が俺に向かってくる。


 ゆっくり。

 ああ、これが走馬灯ってヤツか。

 前回戦った時もあったゴブな?

 でも走馬灯って人生を思い出す感じで、これはただゆっくり見えてるだけゴブ。

 めっちゃ集中してる感じ、ゾーンに入るってヤツゴブな?

 でも【回避LV2】と【逃げ足LV2】でも避けられなさそうで。

 ボスオーガの拳はもう目の前だ。

 ゆっくり近づいてくる拳が。

 俺の頭を。


『いまゴブ!』


 砕く直前で、止まった。



『待たせたな、弟よ』



 アニキだ。

 ボスオーガの横、川から飛び出してきたアニキが、ボスオーガの拳を受け止めた。

 【鱗鎧化】で鱗を逆立てて、ダメージはあるはずなのに【打撃耐性】で無理やりふんばって。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


『アニキィ!!』


 さっすがアニキ、完璧なタイミングゴブ! 敵ゴブには効かないけど味方には効果がある俺の【()()】のおかげゴブな! ほら俺〈ストレンジャーズ〉のリーダーだし! アニキじゃなくて俺がリーダーだし!


 アニキは棍と自分の体を使って、ボスオーガの右腕を絡め取る。


「むっ、ならば!」


 右腕に絡み付いたアニキは振りほどけないと思ったのか、左手で攻撃しようとするボスオーガ。


 でも。

 俺は一人じゃない。

 バフをかけてるシニョンちゃん。

 それに右腕を止めたアニキだけじゃない。


『オオオオオッ!』


 雄叫びをあげて突進してくる。


 オクデラが。


 純情弱気オークだったオクデラが、両腕でタワーシールドを構えて。


「くっ!」


 突進の勢いのままボスオーガの左拳に突っ込んで、止めた。

 オクデラすごいゴブ! 初めて実戦で突進した時からニンゲンを吹っ飛ばしてたけど! ボスオーガの攻撃を止める立派な盾役になったゴブなあ! ところで左腕が使えてるのは【体力回復】スキルと〈聖戦〉のバフのおかげゴブか? それとも【鈍感】で痛みをガマンしてるだけ?


 そんなことを考えてる場合じゃない。

 俺はベルトにつけてた武器を取り出し……って危なッ! 足癖が悪いゴブなあ!


 右腕をアニキに、左腕をオクデラに押さえられたオーガは、俺に前蹴りを飛ばしてきた。

 バックステップで【回避】して、【投擲術】で特製の道具を投げつける。

 頭に飛ばした〈小石〉は、ボスオーガが振り上げた足で砕かれた。


「ぐおッ!」


 砕けた瞬間に、フラッシュみたいにまばゆい光が広がる。

 小石かと思った? 残念、〈()()〉でした! それもシニョンちゃんの〈聖光〉を込めた特製ゴブ!


 ほらほら、目が見えなくなったところで次の特製はコレゴブ!


 畳み掛けるように俺が【投擲術】で投げたのは、ボーラだ。

 でもただのボーラじゃない。

 前回は足の力だけでちぎられたからね! 今度は金属製ゴブ! めっちゃ高かったけど! あとアニキとオクデラの足も一緒に絡んじゃったけど! でも仕方ないゴブなあ!


『アニキ、オクデラ、そのまま押さえておくゴブ! 二人ならできるって信じてる!』


『ああ、任せろゴブリオ!』


『オデ、離サナイ! ゴブリオ、イマ!』


 俺は腰の武器を抜いた。


 コワモテのおっさんが貸してくれた、ミスリルの短剣。


 足音で居場所がバレないように【隠密】を意識して、静かに走る。


『神様、俺にはできるって、これが通じるって信じてるゴブ』


 シニョンちゃんを愛する運命神が見てるかもしれないから、小声で祈る。


 一歩。

 体が熱くなるのを感知する。


 二歩。

 熱を操作して右手に込めた。


 三歩。

 右手に込めた熱を、ミスリルの短剣へ。


 魔法金属を、俺のありったけの魔力で強化する。

 大群に立ち向かう前に俺が取った()()()、【()()()()】と【()()()()】で。


 ミスリルの短剣が青く輝く。



『これで、終わりゴブ!』



 アニキとオクデラとシニョンちゃん、冒険者ギルドのコワモテのおっさんや行商人。

 モンスターとニンゲン、みんなの協力は、この一撃のために。

 俺のスキルは、生き直しは、きっとこの一撃のために。


 青く輝く刀身を、俺はボスオーガの胸に突き立てた。

 むきだしの赤い肌を貫いて、その奥へ。


 オーガの【体力回復】はレベルが高くて、傷はすぐに治る。

 だから。


 ミスリルの短剣を、ボスオーガの心臓へ。

 突き立てて、心臓を斬り裂いた。



 体ごとぶつけた俺に生暖かい返り血がかかる。

 俺は突き立てた短剣を何度もひねる。

 残酷なようだけど、刺しっぱなしだと【体力回復】されるかもしれないから。


 顔をあげてボスオーガを見る。

 ボスオーガは目を閉じて、口からゴブッと、ゴボッと血を吐き出す。


「……見事だ、ゴブリンよ。だが!」


 ボスオーガが首をひねって、頭を叩き付けてきた。

 額の角を俺に向けて。


 ちょっ、それはズルいゴブ! せっかく手足は封じたのに! そうだね、目が見えなくても俺は短剣をひねってるわけで、どこにいるかわかるよね! いってええええ!


『ゴブリオ! ゴブリオ、血ガ! シニョン、ゴブリオガ、ケガシタ!』


『ゴブリオさん! 待っててください、いま治します!』


 角を使った頭突きの勢いのまま、ボスオーガは地面に倒れた。

 俺の左胸、肩のつけねあたりに角を刺したまま。


 うつぶせに倒れるボスオーガ、ボーラがからまって一緒に倒れるオクデラとアニキ。

 角が刺さってボスオーガの頭の方に一緒に倒れる俺。

 ボスオーガに密着する三人ってコレなにゴブ!? なんかしまらないんですけど! 武人っぽかったしもっとこう、立ち往生とかすれ違いざまにズバッとやって遅れて倒れるとかさあ!


 ……あ、俺のせいゴブな。

 俺が手足をふさぐ作戦を実行して、超接近戦で短剣突き刺したせいゴブな。


 その、すまん。

 俺がもっと強かったら一対一で相手したり、こう、ズバッてやったんだけど。


「どんな手を使っても敵を倒す。謝ることはない、誇るがいい」


 至近距離からボスオーガの声が聞こえてビクッ!っとする。

 角が刺さった俺の胸元に視線を動かしたら、すぐそこにボスオーガの顔があった。


 よかった、目に力がなくてもう死にそうゴブな! 短剣が手から離れちゃってるから不安だったゴブ! 普通に声出てたし! というかゴブリオ考えてるつもりで口に出ちゃってたゴブな! あれ、これ俺とボスオーガと二人とももうろうとしてる系?


 とりあえず俺も口を開いた。


『シニョン、俺はいいゴブ。それより〈聖戦〉をキープして、余裕があったらアニキとオクデラをほどいて』


『でも、でも、ゴブリオさん!』


『シニョン、説明したゴブな? 俺を信じるゴブ』


『え?……あっ! はい、ゴブリオさん!』


 シニョンちゃんは混乱から立ち直ったらしい。

 あいかわらずちょっと抜けてるゴブなあ。ゴブリオ心配ゴブ。


「ゴブリンよ、見事な一撃、いや、見事な戦いであった」


 ゴブゴブ、おっと、ゴボゴボと口から血をこぼしながら言うボスオーガ。

 口元をちょっと持ち上げて笑ってる。

 最期まで戦闘狂ゴブか、ほんと理解できないゴブ!


 でも俺もいま、血を流しながら笑ってるんだろう。


「もう二度とやりたくないゴブ」


「我は何度でもやりたいがな。強きゴブリンよ、名は何と言う?」


「ゴブリオ、ゴブ」


「ゴブリオ。その名、しかと覚えておこう。我はガンドグル! ゴブリオ、地獄でまた死合おうぞ!」


 最期にひと吠えして。


 ボスオーガはパタリと動かなくなった。


 死んだ、らしい。

 本当に死んだかどうか、あ、ライフポイント増えた。


 もっとしっかり見たいし考えたいけど、意識が朦朧としてきた。


『ゴブリオ! オデ、ゴブリオ、信ジテル! 待ッテル!』


『神よ、いま一度ゴブリオさんに奇跡を!』


『よし、抜けた。オクデラ、俺たちはゴブリオを信じて戦うのみだ!』


 オクデラとシニョンちゃんとアニキの声が遠くに聞こえる。


 とりあえず。

 ボスオーガ、地獄で戦うとかお断りです! 俺は戦闘狂じゃないからね! というか地獄って考え方があるのね! 異世界パネエ!


 ……あ。あと俺、死なないんで。


 相討ちっぽいけど俺は復活できるから地獄に行くことはないゴブ! だいたいもし復活できなくても行くのは天国だし! あれ? 餓鬼道? 小鬼だけに餓鬼道に行っちゃう? ほら俺ゴブリンだから! ゲギャギャッ!


 最後にくだらないことを考えてたら、ふわふわの柔らかいものに頭が包まれた。


『ゴブリオさん……私、信じてます』


 ボスオーガの角から俺を引っこ抜いて、シニョンちゃんが俺を抱きしめてくれてる。


 天国はここにあったゴブ! まるで最初に死んだ時みたいゴブな!

 思えば遠くへきたもの……ゴブ……。


 視界が暗くなって、でも幸せな感触に包まれて。



 俺は死んだ。


 あ、そういえば大群と強敵と戦ったのに思ったより死んでないゴブ! 今日二回目の死です! 死ぬのが二回目っておかしいけどもう慣れたゴブ! ハハッ!


次話、9/15(金)18時投稿予定です!


「ボスオーガ=大鬼=Grand Ogre」で、最初の「r」を抜いて繋げただけという……安直!



※以下の「NEW」「UP」は最後にスキルを乗せて以降の取得、上昇

※ボスオーガを倒したのにたいしてLP増えてないのは仕様です


■ ゴブリオ(ゴブリン → ゴブリンレンジャー)

 【ライフポイント】

  248 → 372

   ※前話までに倒した雑魚敵も含めた上昇

 【スキル】

  夜目

  覗き見(ピーピング)LV2

  聞き耳   ※NEW

  逃げ足LV2

  隠密

  追跡    ※NEW

  短剣術

  投擲術

  統率

  回避LV2

  体力回復

  打撃耐性  ※NEW

  魔力感知  ※NEW

  魔力操作  ※NEW

  ゴブリン語LV2

  人族語LV2

 【称号】

  森の臆病者(チキン)


■ オクデラ(オーク)

 【スキル】

  夜目

  斧術LV1

  槍術LV1

  腕力強化

  体力回復

  鈍感

  ゴブリン語LV1

  人族語LV1

  オーク語LV1

 【称号】

  オーク the END


■ シニョン(普人族)

 【スキル】

  夜目

  魔力感知LV2  ※UP

  魔力操作LV2  ※UP

  光魔法LV3   ※UP

  受難LV2

  人族語LV4

 【称号】

  運命神の寵児  ※UP?

  巡礼者  ※NEW


■ アニキ(新種族?)

 【スキル】

  夜目

  棍術LV2

  鱗鎧化

  打撃耐性

  斬撃耐性

  水中行動

  ゴブリン語LV3

  鱗人族語LV1

  人族語LV2

 【称号】

  突然変異の創始者(ミュータント)


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